これでは居候というよりも家政婦さんだな、などと。
そんなことを思いながら、ひたすら設備を整備している。
今はガレージの昇降システムを調整しているわけだから、整備工の方が正しいかもしれない……
金具を点検して、指差し確認。
「よし」
私は立ち上がって伸びをした。
身体がやはりこわばっている。
工具箱の中に埋もれたデジタル時計をみると、どうやらもう昼らしい。
傍らのペットボトルをひっつかみ、キャップをひねった。
逆さにして残りを飲む。
水がうまい。些細だが大事なことだ。
ヴァルキューレ警備局のウォーターサーバーは安物だったと改めて思った。
貰った端末を起動して、モモトークを打っておく。
飯はいりますか、と。
いらないなら返信不要です、とも。
道具を片付けていると、返信がきたのか音が鳴る。
……どうやらいるらしい。
私は居住区の食堂へ向かった。
先生の状況を思い返すに、今日はがっつりいこうとも思った。
肉がほしい。小麦粉もほしい。
ボロネーゼがいいだろう。
居住区、食堂についたので、材料をざっと選別する。
とりあえず、鍋ににんにくをひとかけらと、オリーブオイルをたっぷり入れ、鍋を傾けた状態で強火で熱する。オリーブオイルの中ににんにくがおぼれているくらいがいい。
角度を確認して、近場のもので固定。
その隙に、あとの材料を取り出す。
玉ねぎと、ひき肉と、パスタと、トマト缶。それと用途不明の赤ワインも。
香草はない、バターと粉チーズを用意。
こんな具合でよし。
玉ねぎをみじん切りにしておく。細かいほどいいが、まあ荒くてもいい。
そしたら、さきほどのにんにくを菜箸でつつく。いい具合に崩れるのを確認して、取り出す。
火を止めて、みじん切りにした玉ねぎを入れる。
余熱でしゅうしゅう音が立つ。香りが宙に漂う。
音が消えるまでは放置でいい。
ひき肉をボウルに入れ、かるく広げる。
そこに塩と胡椒を、表面にまぶすようにしてかける。
フライパンにオリーブオイルをまぶし、鍋のほうとともに火をかける。
ただ鍋は弱火で。
それと、ここでパスタをゆでるための大鍋に水を張って、火もかけておく。
ひき肉を軽く叩くようにして捏ねる。
粘りがでて、持ち上げてもくっついたまま崩れない程度まで練る。
そしたらフライパンにもう一度、さっとオリーブオイルを引いて、強火に変える。
ひき肉は小さい団子上にして、なるべくフライパンに接する面が小さいように、そっと置く。
最初は焼き色をつけるように、そっと。
次第に色がついてきたら、崩していく。
崩すときはすばやくやる。水分は一気に飛ばす。
肉のいい香りが漂う。
さらに肉を崩しながら炒め続けて、崩しても汁が出ないのを確認したら、赤ワインを入れる。
フライパンを洗うイメージで、底をさらう。
ここでパスタをゆでる。
パスタは移動時間も踏まえて1分半ほどはやめに茹で終えることとする。
1.5mmを使うので、今日は7分より少し早い程度がいいだろう。
大鍋に入れたら、かるく混ぜるようにしてかたまっているのを崩す。
玉ねぎが入ったほうの鍋を見る。
焦げのない、きつね色の玉ねぎだ。
これもすこし崩して、鍋の底に色が写り込むくらい炒める。
いい具合になってきたら、さきほどのフライパンを持つ。
赤ワインとひき肉を、鍋に移す。
水分、それとアルコールを飛ばすため、中身をかき混ぜながら火にかけ続ける。
水音が消えて、油が跳ねる音ばかりが聞こえるようになったら、トマト缶の出番。
トマト缶の中身をまるごと鍋に突っ込んで、全体的に煮つめていく。
水分のなかに旨味が凝縮するように……
まあ、そこまで丁寧じゃなくてもいいかもしれない。
余計な水分が抜ければそれでいいわけだから。
時間を見計らって、パスタを熱湯から解放してやる。
水気をざるで取ってやる。ゆで汁は使うかもしれないのでとっておく。
煮詰めた鍋にパスタを投入。ソースと絡めていく。
水分が飛び過ぎたと思ったら、ゆで汁を少し足せばいい。
しっかりとパスタとソースの水分が絡んだのを確認したら、火を止める。
鍋にバターと粉チーズを入れて、オリーブオイルを少々、香りづけにかける。
パスタの余熱でそれらを溶かしていく。
いい具合に溶けて、全体に絡んだら、終わり。
先生に、できたので来るよう、モモトークを送っておいた。
食器を取り出していく。
もう、軽くて足早な音が聞こえる……
思わず苦笑した。