頑張れ!俺!としか言えん   作:女赤服村人の格好超かわいい

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第2話 こりゃ体のいいついほ……

 

 

 何もできないまま、ムーンペタの街は襲われて生まれ変わってからの俺の家族であった両親や弟に妹たちは、運命と言える原作の通りに死去してしまった。

 このことについて思う所は大量にある、自分の正体を明かして彼らに言っていればとか、もっと強く訴えていればとかある。

 

 彼らの死に様は本当に凄惨というべくして他になく、原作のリックがなぜああなってしまったのかを嫌でも理解させられるものだったのだから。

 だが、それ以上に堪えているのは、あの一件以降ミトやアネッサたちと大きな壁が出来てしまったことだと思う。

 

 

「どうしたのだ? リックよ」

 

「いいえ、何でもありません、それで陛下、私に話とは?」

 

「フム……」

 

 

 原作の通りにムーンペタの街はほぼ壊滅したが、今は何とか魔物を追い払えて漸く復興の兆しが見えた時期である。

 建物自体の再建は遅々として進んでいないが、その代わりに地下壕の建設と整備を進めていて、次の魔物の襲来に備えての要塞化が行われていた。

 

 そんな中で俺はムーンブルク王に呼び出されて、彼の私室兼執務室と呼べる国王が生活していると言うには些か以上に質素というべくして他にない部屋にいる。

 

 

「そちが余に仕えるようになって10年以上が経つな」

 

「はい、故郷が魔物たちに襲われてジローム卿やホッホ様に助けられて以来です」

 

「ウム…… 時が経つのは速いものだのぉ……」

 

 

 あの日、ムーンペタの街が壊滅して何とかアネッサたちと一緒に逃げた俺は色々とあり、ムーンブルクの重鎮と言えるジロームという男性とミトの祖父であるホッホ氏に救出された。

 だが、その時に起こった出来事で彼女達とは大きく距離が空いてしまい未だに仲は修復出来ていない、いないのだが、人は進めるもので新たにゼセルという女兵士などと親しくはなっていた状況だ。

 

 その辺りの事を懐かしむようにして言っている国王陛下に応じて、俺も応えるのだが彼は遠い目をしながら自身の立派な顎髭を撫でて決意を秘めた目を俺に向けてくる。

 

 

「リックよ……」

 

「ハッ」

 

「そなたに…… 命じたいことがある」

 

「何なりと」

 

 

 国王の目は決意を秘めているが、告げることを迷っているのか言い淀み表情には逡巡するような、躊躇する色が強く浮かんでおり彼が望んで今から出す命令を言おうとしている様子ではないのが分かる。

 それを飲み込むことが出来たのか、いちど咳ばらいをした国王は俺を見据えるように威厳を滲ませて正面から睥睨すると口を開いた。

 

 

「過去にムーンブルクと交易のあったモンゾーラとオッカムル、この二つの島は知っているか?」

 

「はい、私が生まれた直後まではオッカムルと、それより10年ほど前まではモンゾーラとの交易があったことは存じております」

 

「この二つの島との連絡が途絶え、尚且つ我が島からも送った交易隊が消息を絶ったこと、これらの調査を頼みたい」

 

「それは、船に乗り他島へと渡れ、そう言うことでしょうか?」

 

「ウム」

 

 

 正気か? そう言いたくなる気持ちを抑えて国王陛下を見れば、彼は苦渋に満ちた表情を浮かべており少なくとも表面上は苦悩していることがうかがえる。

 だが、ハーゴン教団によって船での島間の往来が禁止され、更には捕まれば監獄島と呼ばれる場所へと送られることが島の人々にも知られている現状で、こんなことを言うのは追放と変わらないのではないか? そう思うも確かな話で他の島の状況やらムーンブルクが送った交易や調査の部隊がどうなったのか、これらを知るのも重要ではあった。

 

 まあ今となっては俺の記憶では薄れつつあるが原作知識が記されたノートには、ハッキリと書かれていて2つの島はハーゴン教団に乗っ取られてモノづくりが全面的に禁止されていることや、住民は無気力となっていたり少しでもモノづくりに該当することを行えば投獄される。

 そんな状況があるために皆が抑圧された日々を送っていることがノートには書かれているのだが、これをここで言う訳にはいかないだろう。

 

 

「了解いたしました、このリックモンゾーラ、オッカムル両島への調査任務をお受けいたします」

 

「…… スマヌ…… もはやお主を…… いや、お主に頼るほかに無いのだ」

 

 

 任務受領を言った後に俺は国王陛下の部屋を後にするが、喉から絞り出したような声を背中に聞きながら扉を閉めると廊下を歩きだす。

 恐らくだが原作知識が書かれたノートの通りに場内にあるスパイの事だろう、今の状況でもスパイの気配と思われるものが散見されているために城内には疑心暗鬼が広まっていて、とてもではないが俺の真実を誰かに言える状態ではないのだ。

 

 スパイは男女共に紛れ込んでいるのは確実で、ついこの前にも男女の兵士たちの武具である鋼の剣がなくなり、銅の剣で戦わざるを得なくなったのが示しているし、何よりもこちらの作戦の全てが筒抜けと言っても過言ではない状況での敗戦が続いている。

 

 

「リック!」

 

「アネッサか」

 

「今度、お前も島内の調査任務のために城を離れると聞いたが、本当なのか?」

 

「ああ、ついさっき陛下より任務を賜ったよ」

 

 

 慌てた様子で俺に声をかけてきたのは、あの日からずっと距離が開いていたアネッサであり、成長した今となっては凛々しい顔立ちとなっていて体を鎧に包んだ女性になっている。

 そんな彼女が言っていることは、俺の他にも調査という名目で城の外に出された兵士たちがいるのだから良く分かるが、その人物たちに共通しているのは師団長などの立場のある者ばかりなのがスパイに踊らされているのを如実に表していて、国王陛下の表情も頷けるものだ。

 

 

「何でお前まで!!それにお前は城の最重要戦力なんだぞ!?」

 

「だからこそだろう、俺なら無事に帰還を望めるから陛下も命を下されたんだろうな」

 

「しかし!」

 

 

 重要な立場や戦力に該当する兵士たちが調査や避難と言った名目で城を離れている、先日には陛下の護衛として重要な位置にいる近衛兵のゼセルと複数の兵士が多くの住民を連れて離脱している。

 陛下は民を守るためと言っているのだが、これは時期に城が堕ちると言っているようなものだから場内には厭戦機運が高まっていて、そこで更に陛下の命で離脱する兵士が出れば余計に不穏な空気が増すと彼女は言っているのだろう。

 

 

「まあ、無事に帰って来るさ、それまでは城の事やミトの事も頼むぜ?」

 

「…… あぁ……」

 

「おう「それと」ん?」

 

「あの日の、ムーンペタの事、すまなかった……」

 

「気にしてないさ、人間、誰だってあんな光景見りゃああなるからな」

 

「………… すまない……!ごめんなさい……!」

 

 

 彼女にひらひらと手を振りながら俺は敢えて軽い調子で言っていた。

 まあ、ムーンペタでの出来事は家族の死にざまと合わせたことでかなり心に来ていたのだが、時間が傷を癒すという言葉の通りに、今となっては彼女達からの態度とかは気にならなくなっていた。

 

 

 そうして俺は1週間後の夜中にムーンブルクを離れることとなった。

 

 

 なったのだが。

 

 

「な~んでこうなるかねぇ……」

 

『ふぉ ふぉっ、これも何かの縁ぢゃ!仲良くしようぞい』

 

 

 まさか出港2日目で嵐に遭遇して遭難し、からっぽ島に流れ着いた上におおきづちの変な爺さんに絡まれるとは思わんかった。

 

 




 今回の話で色々とすっ飛ばしてますが、本当に書きたい話が次回から始まるので、ムーンブルクの人々とは暫くお別れです。

 再登場した際に仲良くなったゼセルたんとか距離の開いてるミトさんとかとの話が出てきますのでご容赦を。

 まあ改めてプレイして気になるのはミトさんがリックと旧知の仲という割には、一切彼に言及しないという点が無茶苦茶気にはなりますね。
 ジロームやホッホですらクリア後には多少の言及はあったのに、彼女だけは一切ないですし。
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