どもども、明石です。ええと、いろいろとお忙しいところでしょうが、とっとと報告を終わらせたいところですね。
「六条大佐、雪ノ下少尉がハルナのカタログスペックを引き渡したいそうです。」
さっきから雪ノ下少尉が私の膝をぺしぺししてます。見かけによらず、結構気が短いんです。
「はやくせつめいしたいのですが?」
「すまない、少尉。」
数人の工廠妖精が掲げていたクリップボードを六条大佐が受け取り、ついでに雪ノ下少尉を肩に乗せました。私もその横に立ち、その内容を覗き込みます。
「はるなのぎそうはちょうこうせいのう。」
雪ノ下少尉が短い手で示した仕様書に記載されているのは、改金剛型イージス戦艦ハルナのデータ。
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名称 改金剛型イージス戦艦ハルナ
全長 231m
全幅 32m
排水量 41900t
装甲(全て最大厚)
舷側 325mm
甲板 135+105mm
主砲塔 385mm
主機 2087年式IFEP
艦本式ガスタービン 2機
三峰重工製ディーゼル 4機
浅間重工電動機 2機
出力 240,000hp
速力 34.2kt
航続距離9,000海里
兵装 55口径35.6cm連装砲 4基
62口径127mm速射砲 4基
50口径15.2cm単装砲 8基
20mmCIWS 4基
37mm三連装機銃 12基
同連装機銃 22基
同単装機銃 多数
Mk.93 SAM/SUM単装発射機 4基
Mk.64 SSM連装発射機 4基
Mk.98 SAM/SUM 8連装発射機 4基
水中防御爆雷システム 48基
電探 2073年式統合波形探査システム
電算機 第5世代統合有機電算機
弾薬 72式対空衝撃弾
70式対地榴弾
74式対艦徹甲弾
SSM-61 長距離対艦ミサイル
BGM-83 高速巡航ミサイル
RUR-121 ASROC4 対対潜ミサイル
RIM-256 SM-5MR 対空ミサイル
DC-Mk.37 水中防御爆雷
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外観は全長、全幅が共に延長されているようです。大きな変化は艦後部の水上機運用システムが撤去され、Mk.64 SSM連装発射機が4基配置されています。また、艦体中央部のケースメイト副砲に変わり、Mk.93 SAM/SUM単装発射機が4基配置、高角砲にかわり、Mk.98 SAM/SUM 8連装発射機が4基それぞれ配置されています。艦橋には2073年式統合波形探査システムと装甲一体型フェースドアレイレーダーが追加されています。
喫水線下には、水中防御爆雷発射管が48基隠蔽されていて、対水中弾防御のためのバルジが増設されています。
内装の変更点はガスタービンエンジンに乾燥され、煙突が一本にまとめられました。開いた区間に150mmのバイタルパートを儲け、内部に第五世代統合有機電算機を核としたCICが設置されています。
規格外ですねぇ。
「かんたいなみのしょうもうをおかくごあれ。」
別枠に記載されている補給量に関する記載は、普通の提督にとっては脅威の数字です。満載弾薬1720、燃料580って。それに完全大破状態からの修理に必要な鋼材がレベル1の時点で430ですか。
「そうこうはあつめ。」
そうですね、少なくとも扶桑型以上の装甲を、完全防御形式で備えているんですから。長門、大和級以外で一番アツいでしょうね。
「くちくなみのはやさ。」
速力も記載値で34nt。高速戦艦と言っていいでしょう。何しろ正規空母よりも早いわけですから。それに、データに違和感を感じます。
「どや?」
「あかん。」
艦娘の装備としては、はじめて見る兵装が山盛りです。一世代前の護衛艦並みです。というか、主機の2087年式って未来の話ですよ。理論出力からすると相当抑えた数字ですし、速力も偽装入ってますよね、これ。
「優秀といっていいだろう。ご苦労だったな雪ノ下少尉。……ちなみに、万全に扱えそうか?」
「ていこうできねぇ。」
雪ノ下少尉を撫で回しながら、六条大佐がハルナさんに問いかけます。雪ノ下少尉はお喜びのようです。
「はい、ハルナに問題はありません。一寸試射をしておきたいですが。」
ハルナさんが背中の艤装の各所を稼動させながら答えます。ミサイルハッチを開閉させたり、砲塔を旋回させたり。同型の艦娘のそれよりもかなり早く、砲身の動揺もかなり小さい事が見て取れます。
彼女の目の周りに空間投影されている表示枠には、生体側艤装や艦載兵装のデータが走っているようです。凄まじい勢いで流れるデータと徐々に早くなる艤装の動きが、あるときぴたっと止まりました。
「うん、いいですね。」
満面の笑みを浮かべて、胸元で両手をグッとしました。腕に押されて胸が強調されています。結構大きいんですね、ハルナさん。
「兵装の確認日程は決まっているか?」
そんなハルナさんから、提督は自然に目を逸らしました。いえ、頬に少し赤みが差していて、視線をかたくなにそちらに向けようとしないので、意識はしているのでしょう。
搭載されている兵装、通常の砲煩兵装も艦娘の兵装になった場合、射程が変更される事があります。射程は艦側の10分の1になるのが定説です。ですがそうでなうものもありますし、新型兵装ともなれば確認が行われるのも当然です。
それに、生体艤装による戦闘は非常にバランスが取りにくいものです。なにしろ人の形での戦闘経験など誰も持ち合わせていないのですから。練習も必要でしょう。
「ずび、ハルナさんの兵装試験は、二日後に予定されています。大湊第671護衛隊と合同で夜間海上公試です。」
六条大佐の問いかけに、鼻を鳴らしながら答える大淀ちゃん。目元と鼻の頭が真っ赤になってます。かわいい。
「よろしい、ではそれまでに弾薬と燃料の補充を頼む。正式の書類については後で手配する。よろしく頼むよ明石。」
「はいぃ!お任せください!」
六条大佐が私の肩を叩きつつ、お願いしてくれました。顔が近すぎて思わず声が上ずっちゃいましたが、大丈夫ですよね?
「行くぞハルナ。」
「はい、提督!」
六条大佐とハルナさんは連れ立って、この地下工廠エリアから去っていきます。艦娘用のエレベーターを使うみたいですね、。まぁ、人間用だと艤装が邪魔で入れないでしょうから当然ですが。
「あかしちゃんよ。」
いつの間にか私の足元に来ていた雪ノ下少尉が、ひざをぺしぺしして呼びかけてきます。
「なんですか雪ノ下少尉?」
談笑しながら歩み去っていく二人を指差しながら、真面目な顔で私に一言。
「あれにほれんなよ?」
「惚れませんよ!」
思わぬ不正規発言にあわてた声が出てしまいました。心臓がバクバク言っています。
「本当に大丈夫ですか?」
「大淀ちゃんまで!?」
大淀ちゃんに恐ろしく真面目な顔で心配されてしまいました。顔が真っ赤になっているのが自分でもわかりますが、これでは勘違いされてしまいそうです。
「そ、そんな事ないですってば!」
「あわてて否定しなくてもいいんですよ?」
「あかしちゃんよ、むりはすんな。」
私が否定すればするほど、二人はニヨニヨと生暖かい目を向けてきます。なんだかこのままだと、ドつぼにはまりそうです。
「何でこうなるんですか!?」
緊急避難的に工廠の奥に走り去るしかありません。せめて二人の視線から逃れないと落ち着く事もできないでしょうし。
「にげたな。ずぼしか。」
「あ、待ってくださいよ!」
追いかけてきますか、大淀ちゃん!?いつも弄繰り回してる復讐のつもりですね!振り向いてその顔を見れば、畜生、満面の笑みを浮かべてやがる!
「追いかけてこないで仕事しなさい!」
「大佐についてお話しましょう!」
ほんとに、どうしてこうなった!