『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

1 / 786
ヒーローの世界
第1話 決着


「無茶だ、オールマイト。病室に戻ってくれ」

 

「……みんなが私を、探している。

 待っているなら、行かなきゃあな」

 

「深手ではないとはいえ、臓器をやられたんだぞ!?

 少し休めば、元通りになるんだ!

 今無茶をしたら、治るものも治らない!」

 

「その少しの間にどれだけの人々が脅えなければならない?

 私は……『平和の象徴』なのだ……!」

 

「……なぜだ、オールマイト。

 あなたはもう十分に、頑張ったじゃないか……」

 

ナイトアイがどれだけ必死に説得しても、オールマイトは病院を抜け出し、怪我を押してヒーロー活動を再開しようとする。

彼を止めるのは不可能だと察したナイトアイは立ち尽くし、離れていくオールマイトの背中を見送ることしかできなかった。

しかし病院の廊下の曲がり角から飛び出した腕が、オールマイトの顔面を殴り飛ばした。

 

「ぐはっ!」

 

「オールマイト!?」

 

背中から倒れこむオールマイトにナイトアイが駆け寄り、攻撃を加えてきた謎の人物を見上げる。

 

「無様だな、オールマイト。この程度の拳も躱せんとは」

 

「君は、エンデヴァー!?なぜここに!?」

 

「儂が呼び寄せた。

 この馬鹿を止めたいなら力づくしかなかろう?」

 

オールマイトの目の前にいたのは、今回の一件とは無関係なはずのナンバー2ヒーロー、エンデヴァー。

そして彼の後ろから姿を現したのは、オールマイトのもう一人のサイドキックであるヒノカミ。

彼女もまたオールマイトに負けず劣らずの重傷のはずだが、どうやら彼の行動を予測して病室を抜け出し、先手を打っていたらしい。

 

「だが貴様にここまでの深手を負わせるとは。

 ……オール・フォー・ワンか。

 そのような化け物が闇に潜んでいたとはな」

 

「なぜそれを!?まさか、ヒノカミ!?」

 

「あぁ、話した。

 ワン・フォー・オールのことも、オール・フォー・ワンのことも。

 ……『OMT』のことも、洗いざらい全てな」

 

「なんということを……!」

 

長年守り続けてきたOFAにまつわる秘密を、血縁とは言えあっさりと明かしたという彼女を、ナイトアイは責めるように睨みつける。

しかし当の本人は意にも介さずへらへらと笑いながら答える。

 

「オール・フォー・ワンは討った。今までほど神経質になる必要はなかろう。

 それに手負いとは言えオールマイトをどうにかできる存在がいるとしたら、エンデヴァーをおいて他にあるまい?

 協力を仰ぐなら怪我の事情を明かさぬわけにもいかんじゃろう」

 

「それは……そうだが……」

 

「……と言うわけでオールマイトよ、抵抗は無意味じゃ。

 神妙にお縄につけぃ」

 

「お縄って……いやいやいや!待ってくれヒノカミ!

 みんなが私を呼んでいるんだ!ぐはぁ!」

 

「オールマイト!?」

 

立ち上がろうとしたオールマイトにエンデヴァーが追撃。

そのままオールマイトの胸倉を掴んで持ち上げる。

 

「皆が求めているのは完全無欠のオールマイトだ。貴様のような半病人ではない。

 これ以上下らぬ問答を続けるつもりなら、その手足をへし折りベッドに縛りつけるぞ!」

 

眼前に迫るエンデヴァーの威圧に押し負け、さしものオールマイトも押し黙ってしまった。

彼は「やる」と言ったらやる男だ。逆らえば本気で手足を折りにくるだろう。

 

「ちなみにオールマイトの休養はすでに儂の方から関係各所に通達済みじゃ。

 理由はでっち上げた。怪我は明かしておらぬから安心せい。

 期間は一カ月。ナイトアイはこやつが病院を抜け出さぬよう監視を頼む」

 

「あ、あぁ!任せてくれ!」

 

頭脳明晰なナイトアイも予想できなかった状況になっているが、オールマイトに休養を取らせたい彼としては好都合だ。

完全に外堀を埋められ、ようやく諦めたらしいオールマイトを病室へと引きずっていく。

 

「ふん!手間取らせおって!」

 

「本当にな。……エンデヴァー」

 

ヒノカミは松葉杖を廊下に立てかけ、エンデヴァーに向き直り姿勢を正した。

 

「ご迷惑をおかけし申し訳ない。

 我ら不在の尻ぬぐい、どうかよろしくお願いします」

 

ヒノカミは深く頭を下げた。

彼女の秘密を知った今、なぜこのような態度を取るかの理由は理解しているが、軽薄な妹のらしからぬ姿にエンデヴァーは舌打ちする。

 

「……今まで通りで構わん。

 例え貴様が何者であろうが……轟舞火であることに変わりはないのだからな」

 

エンデヴァーはそう言って、頭を下げたままのヒノカミを無視して立ち去った。

 

「……ありがとう、兄上」

 

突然発表されたナンバー1ヒーローの休養に市民は騒然としたが、

ナンバー2であるエンデヴァーを筆頭とした多くのヒーローの活躍により、社会の混乱は最小限に抑えられた。

そして1カ月後、オールマイトはかつてと変わらぬ姿で皆の前に舞い戻ってきた。

しかし彼の隣にヒノカミの姿はなかった。

後日、ヒノカミはオールマイトのサイドキックの解消と活動の縮小を発表。

公の場に現れることはなくなり、やがて人々の記憶から忘れ去られていった。




この世界では戦力増強により、オールマイトの怪我は治療可能な程度まで抑えられています。
また、エンデヴァーの能力が遥かに高く、精神的にも安定しています。
理由はこれから明かしていきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。