『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第10話

オールマイトにも認められ、OFA継承者となることが決まった緑谷だったが、すぐには継承を行わないことにした。

OFAは何代にも渡って培われてきた力の結晶。

強靭な肉体がなければ力に耐えきれず自分の肉体も壊してしまう。

緑谷は2年前から鍛えているとはいえまだ不十分で体格も良い方ではなく、何より幼い。

急いで継承するよりも、目標である雄英高校受験直前まで更に体を鍛えながら成長を待った方が良いと、ヒノカミが進言したためである。

この日を境に、憧れの存在に認められた緑谷はその期待と信頼に応えるためにより一層厳しいトレーニングを自分に課した。

 

そして爆豪。夢を掴むと覚悟を決めた彼もまた、一心不乱に高みを目指して駆け上がり始めた。

クラスメイトたちは豹変した二人の鬼気迫る姿を見て、皆一様に距離を取った。

もはや無個性だからと緑谷を茶化す者も、軽い気持ちで爆豪を応援する者もいない。

 

そして月日は過ぎ、早くも10カ月。

雄英高校への受験の一週間前の夜に、緑谷と爆豪、オールマイトとヒノカミが再び海浜公園に集まった。

 

「……見違えたぜ、緑谷少年。

 まさかここまで仕上げてくるとは……!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「そして爆豪少年。

 感じるよ、君の中に今にも爆発しそうな、とんでもない力がみなぎっていることを!」

 

「当ったり前だ!」

 

「……オールマイト」

 

「うむ。すまないが、私にもあまり時間がなくてね。

 ……これよりワン・フォー・オールの継承を行う!」

 

ヒノカミと爆豪が離れていく。

近づいてくるオールマイトを正面から見据え、緑谷は息を吞む。

オールマイトは彼の頭に触れ、髪の毛を一つ摘まんで引き抜き、そして。

 

「食え」

 

「へぁ!?」

 

「アホかぁぁぁああっ!!!」

 

「へぶらぁっ!」

 

ヒノカミのドロップキックが再びオールマイトに炸裂した。今度は顔面だ。

 

「え!?ダメ!?だってDNAさえ取り込めればなんでもいいんだし……」

 

「出久が!どれほど今日という日を、この瞬間を待ち望んでいたと思うておる!

 空気読めやぁ!」

 

ヒノカミは背中から倒れたオールマイトを見下ろしながら仁王立ちし、オールマイトの顔面を思い切り踏みつけた。

 

「げふぅ!ちょっ、ヒノカミ?」

 

「勝己ぃ!手ぇ貸せ!

 この馬鹿に血ぃ吐かせるから!2リットルくらい!」

 

「それ普通の人なら致死量!」

 

「そんなに出しても飲み干せねぇだろ。

 コップ一杯分にしとけや」

 

「アレ?爆豪少年?

 なんでそんな蔑むような眼を向けてくるの?」

 

「……なんか思ってたのと違いすぎる……」

 

「緑谷少年!ゴメン!謝るから助けて!!」

 

ヒノカミが顔面を踏みつける内に鼻血が出てきたが、さすがにこれを飲ませるのは憚られた。

ヒノカミが持っていた小刀で腕の一部を斬りつけ、流れ出た血を緑谷が掌で受け止め飲み干す形をとった。

ヒノカミが「死なない程度に腹を斬らせよう」と言い出したが、さすがに緑谷と爆豪に止められた。

 

「……何の変化も感じられませんけど……」

 

「さすがにすぐにはね。

 まぁ2~3時間もすれば実感沸くさ」

 

「そんで、今のデクはどんくらいの力を使えるんだ?」

 

「目算じゃが、おそらく三分の一。

 瞬間的になら二分の一が限度じゃろうな」

 

「これだけ鍛えても、三分の一……!?」

 

「私としては10カ月でそこまで持ってきたことに驚愕してるんだけど」

 

あの頃の緑谷に継承したとしたら1割が限界だっただろう。目覚ましい成長だ。

 

「これの三分の一も出せれば、出力だけならプロヒーローレベルじゃ。

 よほど下手を打たない限り受験に落ちることは無かろう。

 ……しかし、まずは馴らしが必要じゃな。

 明日から試験直前までの時間は出力調整の訓練に充てる。

 暴発の危険があるから付きっ切りで見るぞ。

 勝手に使おうとはしないようにな」

 

「……ちなみに、暴発するとどうなるんですか?」

 

「使用部位の複雑骨折かの。

 受験そのものができなくなる」

 

「絶対に勝手に使いません!!」

 

憧れの個性を手に入れ浮ついてしまうのはわかるが、ここで体を壊されては元も子もない。

危険性を理解してくれて何よりだ。

緑谷は爆豪に話しかけられたことで二人への意識が逸れたため、ヒノカミはこの隙にオールマイトに耳打ちする。

 

(聞いての通り、儂は直前まで合流できぬ)

 

(わかった。皆には私から伝えておくよ)

 

(すまぬ。あと、書類に不備があれば早めに連絡を頼むと根津に……)

 

「おいヒノカミ」

 

爆豪に呼ばれ会話を中断し振り返る。

 

「お世辞はいい。

 俺とデク、現時点でどっちが強ぇか正直に答えろ」

 

「……出力調整ができるようになった後と仮定しても、まだお主の方が上じゃな。

 自分の個性への理解の差は大きい。

 そこまで済ませたなら……時の運じゃろう」

 

「そうかよ……だったらそれまでの間に更に突き放すだけだ……!」

 

ヒノカミの返答に満足したらしく、凶悪な笑みで離れていった。

 

(……書類に限らず、何か問題があれば連絡を頼む)

 

(あぁ。彼らのことは任せたよ)




だいたい、蛇腔での戦いと同等か少し上くらいです。
ただしOFAに馴染むまでの時間がかかるので、神野での戦いまでに歴代継承者と対面する予定はありません。
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