『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

101 / 787
第13話

雲を突き抜けた超高高度を舞台に、赤銅色の怪人と鋼の鬼人がぶつかり合う。

 

(再生が……吸収が……追いつかん!!)

 

目の前の相手の武装錬金の特性は、流石に理解した。

この高さでは気温も低く、彼女の熱エネルギードレインはほとんど機能していないはず。

相手が全身を覆う武装錬金であるためか効率は悪いが、わずかながら生命エネルギードレインを行えているヴィクターの方が有利なはずなのだ。

 

(なぜ衰えない!これだけ動き回り、俺から力を吸われているというのに!

 コイツは『生命エネルギーの塊』か!?)

 

その推測は正しく、『OFA』を取り込んだ『OMT』を持つ彼女が内包する生命エネルギーは並の人間とは桁外れだ。

 

(このままでは……『このままでは』?

 敗れるというのか!?俺が!?)

 

かつて最強の戦士と呼ばれた自負。

自分でも制御できない黒い核鉄という力。

あまたの錬金の戦士とホムンクルスを葬って来た実績。

 

「UNITED STATES OF……!」

 

その全てが目の前のふざけた女に壊されようとしている。

振りかぶった拳には、自分を粉々に打ち砕いて余りある力が込められている。

黒い核鉄が無事である限り死ぬことはないだろう。

しかし肉体がバラバラにされれば再生を終えるまでは無防備。

 

「……SMAAAAAASH!!」

 

「ふざけるなぁああああっ!!」

 

突き付けられた敗北を前に、ヴィクターの怒りが彼の覚醒を促した。

 

「……馬鹿な!」

 

遥か天空から氷の大地を目指して流星の如く飛来し、凍り付いた海を砕いて露出した海底にたたきつけられたヴィクターは、全身にひび割れが生じながらもその形を保っている。

 

(肌が、黒く!?)

 

「ウォォォオオオオオオ!!!」

 

「っ!いかん!!」

 

今まで以上の凶悪なエネルギードレイン。

この出力では無事では済まないとヒノカミは即座に空中に離脱する。

眼下にできた巨大なクレーターの中心に向けて、砕けた氷がなだれ込んでいく。

 

「……溶けておる……!」

 

氷から立ち上る白い煙は冷気ではなく水蒸気。

やがてヒノカミが作り上げた氷はすべて溶け、水に戻った海中から何かが浮かび上がってくる。

 

「……か?」

 

それは全長数十メートルにまで巨大化した、漆黒の肌のヴィクター。

海洋生物の死骸や海中の岩を武装錬金による重力操作で固めて作り上げた巨躯。

彼の怪人化には、更に上があったのだ。

人間と怪人の中間である今の武藤カズキを第一段階、完全に怪人と化した以前のヴィクターを第二段階とするなら、今の彼は第三段階。

 

「っ!乾坤一擲!ブレイジングバーン!!」

 

巨体となったヴィクターの口からエネルギーの砲撃が放たれる。

エネルギー攻撃は熱を含むので一部は自分の力にもできるが、これだけ威力が高いと吸収量よりもダメージの方が大きすぎる。

故にヒノカミも全力の攻撃で相殺し凌いだが、無理をし過ぎたせいで武装錬金がオーバーヒートし始めていた。

 

「これは……儂では敵わんな……!」

 

思わず口から零れた敗北宣言。

空中に浮かぶヒノカミに掴みかかろうとする巨大ヴィクター。

 

「じゃがな……錬金の戦士は儂一人ではないぞ!!」

 

その直前、彼の頭上に影が現れ急速に大きくなっていく。

そして巨大ヴィクターと変わらぬ大きさの鋼の巨人が、彼を頭上から踏みつけた。

 

全身甲冑(フルプレートアーマー)の武装錬金『バスターバロン』。

 

錬金戦団亜細亜支部大戦士長・坂口照星の武装錬金だ。

 

「言ったはずです……これはアナタと『我々』の喧嘩だと」

 

距離を取って海上に着地した巨人の頭頂部に立つ照星。

ヒノカミは一旦武装を解除し、空を蹴ってバスターバロンの肩の上に移動する。

 

「ハッ!俺らの出番をくれてありがとよ!

 憂さ晴らししてぇのはコイツだけじゃないんでな!!」

 

ヒノカミの隣に、遠くのヘリから火球に乗って飛翔してきた火渡赤馬が降り立つ。

 

「フッ……燃える展開だな!!」

 

「アナタたちは相変わらず、こういうのが好きよね。

 ……なんだかんだ付き合ってる私も、人のことを言えないのだろうけど」

 

そしてバスターバロンのもう一方の肩にキャプテンブラボー……防人護と、楯山千歳が転移してくる。

鋼の巨人の上に並び立つ5人の戦士が、腕を組んで正面の怪人を見据える。

 

「さて皆さん……覚悟はよろしいですか?」

 

「聞くまでもねぇよ。祭りはやっぱ派手じゃねぇとなぁ!」

 

「『火事と喧嘩は江戸の華』!これぞ日ノ本の国の心意気よ!」

 

「俺たちが力を合わせれば……倒せない者などない!!」

 

「早く終わらせて……逢わせてあげましょう?」

 

頭頂部の照星が、両肩の4人が、バスターバロンの装甲の中に沈んでいく。

バスターバロンの特性は『同乗した戦士の武装錬金の増幅再現』。

 

「『ブレイズ・オブ・グローリー』!!」

 

火炎同化能力でバスターバロンの外部装甲が炎と化す。

 

「『鬼相纏鎧』!!」

 

その炎を覆い隠すように現れた新たな装甲がバスターバロンを包んでいく。

 

「『シルバースキン』!!」

 

無数の防護プレートが連なり白銀のマントを作り上げる。

 

「『ヘルメスドライブ』!!」

 

中央にモニターが備え付けられた六角形の盾がバスターバロンの胸部に組み込まれる。

 

「見るがいいヴィクター、偉大なる伝説の戦士よ!

 これが我ら錬金戦団亜細亜支部の……いや、今の時代を生きる錬金の戦士が作り上げた、最強無敵の武装錬金!!その名も!!」

 

 

『『『『バスタァアアアア!!!!エンペラァァアアアアア!!!!』』』』

 

 

5人の戦士が一つとなり、今ここに最強の機神が姿を現した。

 

 

――――……

 

 

中継映像を見て大口を開けていた者たちが、我を取り戻して一斉に叫ぶ。

 

「「「「特撮ヒーローかよぉぉぉぉおおおおお!!!!??」」」」




・バスターエンペラー

5人の戦士が力を合わせて呼び出す究極の機神。
膨大な炎のエネルギー、圧倒的なパワー、強固な防御壁、そして瞬間移動能力を兼ね備えた無敵のスーパーロボット。


それにしてもこの大人共、ノリノリである。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。