『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第14話

追い詰められた怪人が巨大化し、それに立ち向かうために5人の戦士が巨大ロボットを呼び出した。

 

……まさしく戦団支部にいる皆の絶叫通りだろう。

文面に現わせば、いよいよ日曜朝の戦隊ヒーロー番組の一幕だ。

しかしこれは彼らにとってまごうことなき現実。

必ずヒーロー側が勝つという保証などない。

 

『ウォォォオオオオオオ!!』

 

襲い掛かってくる怪人を前に、バスターエンペラーは腕組みを解き拳を構える。

 

「ハァッ!」

 

照星の操作により放たれた正拳突きがヴィクターの上半身を一撃で消し飛ばすが。

 

「やはり再生しますか」

 

砕かれた体が残骸や周囲の物質をかき集めて再構成される。

 

『おそらく微生物や植物に至るまで、ありとあらゆる生命体からエネルギーを吸収しておるのだろう。

 やはり地上ではまともに戦っても勝ち目はない』

 

『では、作戦通りに行きましょう。防人くん!火渡くん!』

 

『任せろ!』

 

『燃え上がれぇっ!!』

 

装甲の隙間から溢れ出る炎の量が増大し、それを見たヴィクターがヒノカミを圧倒したエネルギー攻撃を再び放つ。

 

『フン!』

 

しかしその攻撃の大半は熱エネルギーとしてバスターエンペラーに吸収された。

そして機神の巨体が突如その姿を消した。

 

『防人くん!!』

 

『捕らえたぞ!!』

 

ヘルメスドライブの力でヴィクターの背後に転移し彼を羽交い絞めにした。

さらにシルバースキンのマントがほどけて帯となり、ヴィクターと機神を縛り上げた。

ヴィクターは振りほどこうとするが、パワーに差がありすぎてびくともしない。

 

「火渡戦士長!ヒノカミ!」

 

『ブレイズ・オブ・グローリー、圧縮開放!!』

 

『全スラスター展開!フルパワー!!

 プルスウルトラじゃああああーーーー!!!』

 

バスターエンペラーの装甲の至る箇所が展開し、火渡が練り上げた炎を一気に放出。

組み合った二つの巨体が天高く打ち上げられていく。

雲を突き抜け、大気圏を超え、星の海を渡り、そして。

 

 

――――……

 

 

戦いの映像を中継していたドローンがバスターエンペラーとヴィクターの姿を追えなくなり、しばらく映像が途切れた後に支部のモニターの画面が切り替わる。

バスターエンペラーのアイカメラ映像だ。

何もない灰色の大地。黒い夜空と無数の星々。正面には巨体のヴィクター。その背後には……。

 

「……地球……!?」

 

青く美しい惑星の姿があった。

 

「じゃあ今、大戦士長たちがいるのは……!」

 

『ここならばアナタのエネルギードレインも意味をなさない……。

 生命のいないこの月の大地の上ならば!!』

 

「嘘だろぉ……」

 

その呟きはまさに戦団支部全員の心境の代弁。

確かにヴィクターの能力を封じるならそれが一番確実だ。

だが思いついても実行しようなどと……よほどの馬鹿でなければ考えるか?

 

『だが儂の熱吸収もここでは役に立たぬ……』

 

『炎もほとんど使っちまった。そう長くは持たねぇ』

 

『つまりここからは……』

 

『どちらが先に倒れるか……根競べだ!』

 

蓄積した炎が少なくなったため鬼相纏鎧によるパワー強化を最低限に抑えたバスターエンペラーが駆け出す。

ヴィクターもエネルギー吸収手段を失ったため、消耗の多いエネルギー攻撃ではなく肉弾戦を選んだ。

 

二つの巨体が殴り合う。

重力のほとんどない大地での戦闘経験など互いにあるはずもなく、鍛え上げた技術は活かされることもなく、ただ無骨で不格好な殴り合いが始まる。

ヴィクターの肉体は砕ける度に再生するがその速度が落ちていく。

攻撃をオートで防ぐシルバースキンもエネルギードレインの無効化に処理能力を割かれているせいか動きが鈍い。

エネルギー節約のため、ヘルメスドライブの使用も控えている。

何度も、何度も殴り合う。

 

「頑張れ!頑張れぇー!!」

 

「負けんじゃねぇぞー!!」

 

「アナタ……」「パパ……」

 

怒涛の展開に困惑していた観衆たちも、やがて届かぬ声援を送り始める。

状況は……機神がわずかに優勢。

結末が見えたのだろう。ヴィクターは距離を取って右腕を正面に掲げ、周囲の岩石を集めて凝縮する。

そして現れたのは彼の武装錬金を模した超特大の大戦斧。

流石に形だけで特性までは再現できていないだろうが、これで勝負をつけるつもりと見た。

 

『ガンザック、オープン!

 ナックルガード、セット!!』

 

シルバースキンのマントが左右に分かれ、鬼相纏鎧の背部装甲が展開し、バスターバロンのスラスターが露出する。

両の拳を突き出して並べ、手首の装甲が正面を向く。

スラスターが火を噴いた。

しかし機神は両足を踏ん張り、体が前に出るのを防いでいる。

ヴィクターはその間に戦斧を構え、迎撃の姿勢を取った。

 

『……リリース!!』

 

一歩踏み出した瞬間に機神が超スピードで突撃、空気抵抗がないため更に加速する。

激突の瞬間に合わせてヴィクターは戦斧を振り下ろす。

結果は……。

 

『……俺の、負けか』

 

『えぇ……この喧嘩、我々の勝利です』

 

機神の拳は戦斧を砕き、ヴィクターの義骸を粉砕した。

持ちうるエネルギーのすべてを使い果たしたヴィクターは投げ出され、機神の掌で受け止められた。

空気がなくとも接触により彼の声が伝わる。

 

『……殺せ』

 

完膚なきまでに打ちのめされた復讐者はすべてを諦め呟く。

 

『断る』

 

『……なんだと?』

 

『俺らが仕掛けたのは喧嘩だっつっただろうが。

 殺し合いじゃねぇ。憂さ晴らしだ』

 

『それに殺すだけならいくらでも手段はあったもの。

 アナタの核鉄の破壊に注力するとか、最初からバスターエンペラーで挑むとか、シルバースキン・リバースを二重三重に使って拘束するとか……』

 

『おいおい千歳、台無しになるようこと言わないでくれ。

 そんなやり方カッコ良くないだろう?』

 

『ハハハ……まぁこういうことです。

 我々は初めからアナタを殺すつもりなどないのですよ』

 

『どういうことだ……?』

 

状況が全く理解できず、ヴィクターは困惑を隠せない。

生きているだけであらゆる生命を死に至らしめる自分を生かす理由が思い浮かばない。

 

『すべて説明します。

 だから我々と共に戻りましょう。

 ……アナタが帰るべき場所へ』




最後の一撃はガンダムOOの2期最終話、Oガンダム対エクシアが頭に浮かんでいました。
だいたいあんな感じです。
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