『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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新章開始しますが、もう少し1日2回投稿を続けてみます。
ひとまず、年内中は。


霊界と魔界の世界
第1話 再誕


「なぁバーサン、洞窟に入るのはオレたち4人だけなんだよな?」

 

「あぁ、アタシは入り口までのつもりさ」

 

「だったらなんでバーサンまでついてくるんだ?

 オレらが突入してる間に連中が手ぇ出してこねぇとは限らねぇ。

 言いたかねーが、人質が二人になっちまったら勝ち目ねーぞ?」

 

敵に付け込まれる危険が高まるから人数を絞った方がいいと言い出したのは、他ならぬ幻海のはず。

確かに彼女は強いが、仙水たち相手では厳しいと言わざるを得ない。

 

「……確かめておかなきゃならないことがある」

 

彼女が意見を翻したのは、幽助と飛影が再会した時に現れた雑魚妖怪の話。

二人に襲い掛かろうとした2体の妖怪は、この洞窟がある方から飛んできた霊力の光に貫かれて消滅したという。

その光の正体に、彼女は覚えがあった。

 

幽助、飛影、蔵馬、幻海、そして案内役の御手洗は街はずれの洞窟の入り口の前に立つ。

 

「ここから樹のいる所まではどの位かかる?」

 

「注意を払いながら歩けば二時間はかかると思う」

 

幻海は蔵馬たちの話に耳も傾けず、頻りに周囲を警戒している。

 

「どーした、バーサン?」

 

「……いるんだろ。出ておいで」

 

「……かかか、流石にバレてしもうたか」

 

突如上から声が聞こえ、全員が一斉に洞窟の上を見上げる。

気付けば洞窟の入り口の上に、小柄な女が座っていた。

男物の和服を着て、左腕に白い蛇を巻きつけた女だ。

 

「!?コイツ、いつからそこに……!」

 

「ずっといたさ。お主らが気づいておらなんだだけで。

 ……そこの少年が浦飯幽助かな?」

 

「何モンだ……!」

 

「儂は『ヒノカミ』。本名は秘密じゃ。

 なぜなら……『その方がカッコイイから』!」

 

「ふざけてんのかテメー!!」

 

「おやめ」

 

この場にいるということは、敵である仙水一派で間違いないはず。

しかし飛び掛かろうとする幽助たちを幻海が止める。

 

「コイツは敵じゃない。無駄な力を使うんじゃないよ」

 

「ハァ?なんでそう言い切れんだよ?」

 

「もしそうだったら仙水が桑原を攫う理由がない。

 コイツが結界をぶった切るはずさ」

 

「「「!?」」」

 

仙水たちが桑原をさらったのは、彼が持つ『次元を斬る能力』を手に入れるため。

魔界へとつながる穴に張られた強固な結界を破壊するためだ。

簡単に破壊できないからこそ結界なのだ。

しかし幻海が言うには、目の前の人物はその能力を有しているという。

 

「幻海師範、彼女は何者だ?」

 

「ソイツは仙水と同じく、霊界から離反した元霊界探偵さ。

 アタシが面倒を見てやったこともある。

 幽助からすれば、二つの意味で先輩に当たるね」

 

「その説はお世話になり申した。

 受けた恩を思えば助力すべきであろうが……申し訳ない。

 儂は仙水の奴が事を終えるまで、手を出さぬと決めた。

 ……じゃが」

 

ヒノカミが掌を叩くとその間に妙な形の十字架が現れ、左手で天に掲げる。

するとそれは巨大な霊力の弓に変化した。

そして左腕に巻き付いていた白い蛇……霊界獣『白星(しらぼし)』が弓の弦を咥えて引き空に向けて矢を放った。

放たれた矢は上空を飛んでいた低級妖怪を打ち抜き消滅させた。

 

「無関係な人間を巻き込むのは本意ではない。

 故にこうして間引いておる。

 無数の蟲にまでは対処できぬがな」

 

「……コイツは誤魔化しはするが、くだらない嘘はつかない。

 そしてこうと決めたら梃子でも動かない奴さ。

 敵でも味方でもないなら構うだけ時間の無駄だよ」

 

「っと、そうか時間か。

 儂のせいで仙水らを利する形となってしもうたな……よし」

 

続いてヒノカミは右手から小さな炎を生み出し、周囲の草木に引火させ炎を広げた。

炎は彼女の右手の動きに従って浮かび上がるとまるで蛇のようにうねり、洞窟の中へと飛び込んでいく。

そして暗闇の中に炎の道が現れた。

 

「その炎を辿っていけ。

 ただ途中で妙な物が道を塞いでおる。

 仙水は『足止め』とか『プレイ人数』とか呟いておったが……」

 

「……天沼!ゲームマスターか!

 アイツの領域(テリトリー)はゲームそのものを実物大で再現できるんだ。

 プレイ人数を指定されたら、頭数を揃えないと中に入ることさえできない!」

 

「ふむ、ならば仲間をここに連れてくるがよい。

 儂の眼が届く限り、その者らには傷一つ負わせぬと約束しよう」

 

「フン……随分と大口を叩くな、女」

 

文字通り上から目線なヒノカミが気に障ったのだろう。飛影が挑発する。

直後、彼女から恐ろしい量の霊気が放出された。

 

「「「!!?」」」

 

「大口を叩くだけの力があるということじゃ。

 ……ちなみに本気を出した仙水もこのくらいの力は持っておる。

 心して向かうことじゃな」

 

(この女性……霊気だから人間で間違いないだろうが、実力はA級妖怪クラス……いやまさかS級!?)

 

「……海藤たちを呼ぶよ。一時撤退だ」

 

幻海の言葉で我に返った幽助たちは無言で引き返す。

道中で蔵馬が尋ねる。

 

「幻海師範、彼女の情報をできる限り教えてほしい」

 

「ふざけちゃいるが義侠心に溢れる、仲間思いのいい奴さ。

 ちょっとばかし過激で短気なところもあるが、霊界ともうまくやれていた。

 ……しかしある日突然、一方的に霊界との断絶を宣言し姿を消した。

 仙水に手を貸すとは思えなかったが……杞憂だったようだね」

 

「本当に信じていいのか?」

 

「……アイツは変わっちゃいなかった。

 仲間を大事にする奴は絶対に殺さないんだ。安心おし」

 

海藤たちに連絡を取って合流し、再び洞窟の入り口へと戻って来た幽助たち。

やはり姿は見えず気配もないが、おそらくヒノカミは変わらずこの場にいるのだろう。

道しるべの炎はまだ残されていたが、念のため御手洗にも確認してもらいながら進む。

炎は間違いなく正解の道を示しており、そして彼女の言う通り妙な形の扉が道を塞いでいた。

 

『デビルシティへようこそ!!

 君達7人は選ばれた戦士だ!!

 これから君達は街の平和を取り戻すため、悪の市長ゲー魔王を倒さねばならない!!』




・霊界獣『白星(しらぼし)

真っ白な鱗を持つ大蛇。大人しくて甘えん坊。
ヒノカミを霊界探偵に任命するにあたり、その性根を調べるためにコエンマから与えられた霊界獣の卵から生まれた。
基本的にヒノカミの左腕に巻き付いており、主に変わり霊子兵装の弓を引くなど戦闘でも活躍する。


第四章、『霊界と魔界の世界』編、開始します。
参入時期は魔界の扉編終盤……原作巻数で言うとなんと15巻です。
幽遊白書は全19巻。つまり残り4巻分……短くなりそうです。
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