『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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この物語ではプレイ人数が不明な状況だったため、ぼたんも同行していました。
往復時間が減ったので1時間くらい早く幽助たちが進軍しています。


第2話

「ふぅ~い……やっと出られたぁ~……」

 

「おかえり」

 

「うっひゃあ!!」

 

突入から数時間後、ゲームマスターを幻海や海藤たちと共に倒し、仙水を幽助たちに任せたぼたんは洞窟から出てくるが、直後気配を消したヒノカミに話しかけられ飛び上がる。

 

「もう!びっくりするじゃないのさ!!」

 

「かかか。お化けのくせに、お化けに出会ったような反応をしおる」

 

彼女が霊界探偵であった頃から、ヒノカミはぼたんとも交流があった。

友人、と言える程度には親しかったと思う。

突如袂を分かった身で多少心苦しくもあるが、以前と変わらぬ様子で接してくれることが嬉しかった。

 

「……雲が?」

 

海藤が空を見上げて呟く。ヒノカミを除いた全員が空を見上げた。

 

「凶来雲が晴れてる!?

 もしかして幽助たちがもう仙水を倒したの!?

 別れてからまだ1時間くらいしか経ってないよ!?」

 

「そうじゃない。安定期に入っちまったのさ」

 

「その通りじゃ。蟲や妖怪共が消え失せたのも、予兆を感じ取ったからであろう。

 魔界の扉が開くまで、あと2~3時間と言ったところか……」

 

「うぇぇぇぇ……。

 ちょいとヒノカミぃ、手ぇ貸しておくれよ!

 アンタなら仙水もチョチョイのチョイだろぉ?」

 

「あ奴は強い。お主らの定義でいうならS級じゃぞ?

 そう簡単に倒せはせぬ」

 

「……倒せるには倒せるんすね……」

 

柳沢が上げた声に反応して彼の方を向くと、何かを背負っていることに気付く。

 

「それは?」

 

「ゲームマスター……天沼ですよ」

 

「仙水の奴に言いくるめられて、自分の能力で自滅しちまったのさ」

 

「……そうか」

 

ヒノカミは地面に下ろされた少年に近付き、膨大な量の霊気を送り始める。

 

「霊波動!?生き返らせる気なのかい!?」

 

「力には責任が伴う。この餓鬼の死は自業自得じゃ。

 しかし餓鬼の尻ぬぐいをするのが大人の責務よ。

 うまくいく保証はないが、やるだけやらねばな」

 

「……アンタは霊気だけよこしな。アタシが制御してやる」

 

本家本元の霊光波動拳の使い手である幻海の方が、にわか仕込みのヒノカミよりもはるかに霊力の扱いに長けている。

ヒノカミは幻海の肩に触れ、湯水のように霊力を注ぎ始めた。

 

(まったく……相変わらずとんでもない量の霊気だ)

 

「……どうした?」

 

「いや、やるよ」

 

幻海が霊波動にて天沼の蘇生を試みる。

しかし10分以上が経っても目覚める気配がない。

それだけの間霊力を注ぎ続けたヒノカミも、繊細な霊力制御を続けた幻海も異常だ。

 

「……駄目、か」

 

「いや、そこまで霊気を満たしてくれれば十分だ」

 

「コエンマさま!?」

 

エンマ大王の息子である霊界の重鎮、コエンマが大人の姿で現れた。

口にくわえたおしゃぶりがアンバランスな美青年だ。

 

「後はワシがやろう」

 

「頼む」

 

「……」

 

迷うことなく自分を信じて下がったヒノカミに苦いものを感じるが、今は時間がない。

肉体に満ちた霊気が拡散してしまえば蘇生の成功率が下がってしまう。

 

『遊魂回帰の術』

 

本来はとんでもない量の霊力を必要とする技だが、幻海とヒノカミが霊気を注いでおいてくれたおかげで容易に発動することができた。

 

「ん……あ、オレ……!」

 

「起きたか、クソガキ。

 ゲームってのは遊びだから楽しいんだ。

 命のやり取りに使うようなつまらない真似するんじゃないよ!」

 

「ひっ、ごめんなさい!!」

 

蘇った天沼は同じくゲーマーである幻海に説教されていた。

彼らを余所に、コエンマとヒノカミが向かい合う。

 

「ヒノカミ……ワシはお前を部下ではなく、友と思っておった」

 

「儂もじゃ、コエンマ。そして今でも思っておる」

 

「ならばなぜ!ワシに何も話してくれぬ!?」

 

特異な魂を持つ彼女を見初め初代霊界探偵に抜擢したのはコエンマだ。

特異体質で幽体離脱ができない彼女は特殊な道を通らねば霊界に足を運べず、また霊界の業務で多忙である彼も気軽に現世には来られない。

なので知り合ってからの月日に対して直接会った回数は非常に少ない。

しかし、自然と馬が合った。

一緒に飲む茶は美味しかったし、愚痴や馬鹿話を言い合うのも楽しかった。

 

「……すまん。

 だが儂はもう、今の霊界には協力せぬと決めた。

 霊界での立場を持つお主には、理由も明かせぬ」

 

「……」

 

「……お主が悪いわけではない。

 嫌ったわけでもない。

 儂の信念の問題じゃ。

 それだけは、信じてほしい」

 

「そう、か……ぼたん!」

 

今はここまでと話を切り上げ、コエンマは部下を呼びつけた。

 

「ワシはこれから幽助達のもとへ向かう。

 もし地震が起きたら穴が広がりきってしまった合図だ。すぐにオヤジに知らせにいけ」

 

「大丈夫なんですか……?」

 

「オヤジに許可をもらってきた。

 ……万が一の場合、この『おしゃぶり』を取る」

 

「えぇ!?」

 

「……」

 

ヒノカミは彼らのやり取りと、洞窟へと入っていく彼の背中を無言で見送っていた。

 

「コエンマさまが、おしゃぶりを取る……と、どうなるの?」

 

「知らんのかい!」

 

しかし部下であるぼたんの抜けた発言に思わずツッコミを入れてしまった。

 

「ありゃあ強力な霊具じゃよ。

 あ奴は常にあれをくわえて霊力を注ぎ続けてきたんじゃ。

 今は数百年分の霊力が蓄えられておるはず」

 

「数百年!?スゴイ!!」

 

「いざとなれば、あ奴が結界ですべてを封じるつもりなのじゃろう。

 うまくいくかは賭けじゃろうがな。

 ……捨て鉢にならねばよいが……」

 

「コエンマさまぁ……」




・霊光波動拳

幻海が操る霊力を操る武闘法。
本来は霊能力を用いた治療行為に長けた技術。
その力を最大まで高めると細胞が活性化し、肉体が最も充実していた頃に若返る。

幻海は20年ほど前に押しかけ弟子となったヒノカミの才覚と人格を気に入り霊光波動拳の継承者とすることも考えていたが、当時はまだ幻海も若く力があり、彼女を継承者と認める前に彼女が突如姿を消したため話は流れた。
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