『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第3話

コエンマが洞窟の奥へと向かって2時間と少し。

遂に彼の宣言通り、地震が発生する。

ぼたんはコエンマからの指示通り、肉体を捨て即座に霊界へと飛んだ。

 

「この気は……聖光気かい?」

 

「大したもんじゃよ。たかだか二十数年の若造が。

 ……儂がどれほど……自信を無くすよなぁ」

 

幻海の呟きに答えると、石に腰かけていたヒノカミが立ち上がった。

 

「どうした?」

 

「……儂が手を出さぬと決めたのは魔界の扉が開くまで。

 それももう間もなく……ならばそろそろ備えておこうかとな」

 

「そうかい……頼んだよ」

 

「……行って参ります。師範」

 

ヒノカミが軽く手を叩くと、彼女の手元に六角形のプレートが現れた。

中央に取り付けられたモニターに触れると彼女の姿が洞窟入り口から消える。

 

「ヒノカミ!?」

 

そして直後、彼女は洞窟の最深部にいるコエンマの背後に現れる。直後手に持っていたプレートは消滅した。

地底湖の上には魔界へと続く穴が浮かんでおり、その場に残っていたのは御手洗とコエンマ、そして心臓を貫かれ倒れている幽助だけだった。

 

「やはり仙水を止めることはできんかったようじゃな……。

 浦飯幽助の霊体はまだそこにあるな?」

 

魔界への穴は開いた。ヒノカミが自らに課した誓約はすでにない。

 

「仮にも後輩、見捨てるのは忍びない。

 遺体の修復と霊力の供給は儂が行う。

 先ほどの術をもう一度、行けるか?」

 

「!?助かる!」

 

ヒノカミは幽助の遺体の傍で膝立ちになり、回道と霊波動を併用し修復を始めた。

それが終わるまでの間に、ここで何があったかを尋ねる。

 

「ワシの魔封環は通じなかった。

 幽助を殺された怒りで、桑原は次元刀を使えるようになってしまった。

 彼らは仙水を追って魔界へ……結界は桑原が斬るだろう。

 やがて強力な妖怪たちが人間界に押し寄せてくる……!」

 

「……杞憂だとは思うがな」

 

「何?」

 

「それより、面白い事実が発覚したぞ。

 こ奴まだ死んでおらん」

 

「馬鹿な!?心臓を破壊されたんだぞ!?」

 

「核じゃ。こ奴の中に核がある」

 

核とは魔族における心臓の役割を果たす臓器。

人間が持っているはずもない。

彼の両親は人間のはずだ。

 

「……魔族大隔世か!?」

 

「その通りです」

 

コエンマが声に反応して振り向くと、統一された戦闘装束を纏う9人の戦士が立っていた。

 

「霊界特防隊……!」

 

「あの人たちは?」

 

「霊界の軍隊で最強を誇るらしい、エリート部隊じゃ」

 

御手洗の疑問にヒノカミが答える。

隊長の大竹が一歩前に出た。

 

「コエンマ様。お下がりください。

 我らは魔界の穴と結界の修復、浦飯幽助の抹消を命じられております」

 

「!?浦飯さんが誰のために戦ってきたと思ってるんだ!

 魔族だったからといってそれが何だってんだ!」

 

「それが一番重大なことなのだ。

 魔族として目覚めれば、仙水以上に厄介な存在となる」

 

これが霊界の組織の本性。

現世と人間を守るためと言っておきながら、彼らを見下し都合よく管理しようとしている。

それを知っているヒノカミは冷めた目で彼らを見据えながら、対処するため立ち上がろうとしたが。

 

「……コエンマ?」

 

「コエンマ様!?」

 

特防隊の前に、コエンマが立ちはだかった。

 

「仙水と戦う桑原たちを置き去りにし、我らのために尽力してくれた幽助をもう一度殺そうなどと……たとえオヤジであろうと絶対に許さん!!」

 

「霊界の意志に背くというのですか!?」

 

「人の道に背くくらいならば!

 ……お前の口癖だったな、ヒノカミ」

 

「……くっくっく」

 

ヒノカミは嬉しそうに笑った後、幽助に声をかける。

 

「……聞こえておったじゃろ?いい加減起きろ」

 

そう呟いた瞬間、幽助の体から膨大な妖気が溢れ出した。

そして洞窟の入り口側から巨大な怪鳥……本人が魔族に覚醒したことで大きく姿を変えた幽助の霊界獣(プー)が飛び込んできて彼らの傍に降り立った。

 

「状況は把握しておるな?」

 

「……あぁ、全部聞こえてた。

 ワリィな、アンタにもいろいろ手間かけさせたみたいでよ」

 

幽助は先ほどまで仮死状態だったとは思えぬ軽快な動きで飛び起きた。

傷はすべてヒノカミが塞いだが、この調子なら必要なかったかもしれない。

 

「仙水を追うんじゃろ?この場は儂に任せて早く行け」

 

「なんだよ、アンタ意外と話が分かるじゃねーか。

 ちょっくら行ってくるぜ。プー、頼む」

 

「……幽助!ワシも行こう!」

 

「コエンマ様!?くっ……行かせん!!」

 

しかし一瞬で特防隊の前に移動したヒノカミが行く手を阻み、抑え込んでいた霊力を開放した。

 

「な……なんて霊気だ!?」

 

「隊長!コイツは我々の手には負えません!!」

 

「ほぇー……アンタとやるのも面白そーだ」

 

「かか、後でなら相手をしてやる。……コエンマ!!」

 

幽助と一緒にプーの背中に乗ったコエンマに向けてヒノカミが叫ぶ。

 

「これが終わればすべて話す!行け、友よ!」

 

「!?……あぁ!!」

 

ヒノカミに見送られて、二人と一匹は魔界へと飛び立っていった。

 

「さぁて……」

 

「「ひぃっ!!」」

 

おそらく彼らはヒノカミが霊界に対して怒りを抱いている理由を知らない。

そしてヒノカミも霊界に対して苛立っているが、彼ら個人に対しては思うことはなかった。

……幽助に対する振る舞いを見るまでは。

徹底的にやろう。『予定通り』に。

 

パン!

 

ヒノカミが掌を叩くと同時に、球状の結界が彼女を包んだ。

結界はすぐに消滅したが、中から現れたのは先ほどまでの小娘の姿ではなく。

 

「来るがいい、雑兵共。格の違いを見せてやろう」

 

霊力で作られた機械的な装甲を纏い巨漢の鬼となった憤怒の化身が、聖光気を放ち大地を揺るがしながら特防隊へと一歩踏み出した。




・『聖光気』

人間が持ちうる究極の闘気。
強大すぎて発するだけで周囲に影響を及ぼしてしまう。
圧倒的なパワーと防御力、自然の力と融合し自在に空を飛ぶなど様々な力を発揮する。
極めれば気を物質化させ武器や防具として扱うこともできる。


・個性『領域』 → 領域(テリトリー)刻思夢想(イマジン)

柏手を打ち発動した結界の内側に、自分の記憶の中にある物品を具現化する。
一度具現化したものは結界が解除されるまでは消滅しない。
また霊力を注ぎ続けるかあらかじめ大量の霊力を注いでおけば、結界の外でも霊力が尽きるまで具現化状態を維持できる。
思い入れのあるもの、正確に記憶しているもの、特殊な力を持たないもの、希少価値が低いものほど具現化と維持に必要な霊力が少ない。
自分の能力を超える物品は具現化できず、オリジナル以上の性能は発揮できない。


個性を『領域』と名付けたのはこの世界にて覚醒させるためです。
主人公はあくまで人間なので、魔界の影響と聖光気により個性が進化しました。
対象に制限はないけど記憶するのが大変で消耗も桁違いな『無限の剣製』がイメージに近いかと。
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