「うてェェイ!!」
隊長である大竹の号令に合わせ、特防隊員たちが一斉に鬼に向けて霊気砲を撃つ。
しかし土煙が晴れた先にいる相手は健在。それどころか傷一つない。
「今……何かしたか?」
そして鬼は更に霊圧を強め威圧する。
「ば、馬鹿な!?」
「うろたえるな!もう一度だ!」
「構わんぞ。気の済むまで続けるがいい」
ヒノカミは敢えて何もせずに仁王立ちを続けている。
特防隊員は何度も何度も攻撃したが、ヒノカミは微動だにしない。
連中の攻撃は武装錬金と聖光気の防御を貫けなかった。
念のため発動していたが、静血装は無駄だったようだ。
「まるで効いてない……隊長!?」
「ぐぅぅ……結界だ!奴を封印しろ!」
「「「ハッ!!」」」
「……はぁ?」
ヒノカミは思わず呆れてしまった。
悪手どころではない、完全に霊力の無駄だ。
隊員たちは動かないヒノカミの周りに陣取り、結界を作り上げたが。
「なっ!なぜだぁっ!!」
あっさりとすり抜け歩いてくるヒノカミを見て間抜けなツラを晒す。
「お主らの結界は魔を封じるものじゃろうが。
人間には効果が薄い……まして聖なる力である聖光気を操る儂に効くはずがないじゃろう?
その程度のことも知らんのか?貴様らは」
「人間……!?ふざけるな!貴様のような人間がいるか!」
「……いかんな、そこは否定できん……」
ヒノカミは少し傷ついた。彼らが初めて彼女に与えた明確なダメージだと言えるだろう。
「くそ!俺たちは霊界特別防衛隊だぞ……!?
力を合わせれば魔界最強の『A級』にだって負けないはずだ!
それをこんな小娘一人に……!」
「「……はぁ?」」
ヒノカミだけではない。彼女から離れた場所で見守っていた御手洗も思わず声を上げた。
「何言ってるんだアンタら……?
魔界最強は『S級』なんだろ……?」
「……『S級』……!?」
「まさか貴様ら、本当に知らんのか!?」
驚いていないのは隊長である大竹だけだ。
他は全員目を開いて硬直している。
「ハァ……妖怪のランクは上から『S・A・B・C・D』じゃ。
霊界では測定できぬ強さを持つ妖怪はすべてS級に位置付けられる。
幽助と仙水、そして儂も強さで分類するならS級じゃ。
……貴様ら霊界には、人間にも妖怪にも敵う者がおらんのじゃよ」
「そ、そんな……!」
「とり乱すな!!」
唯一真実を知っていた大竹が、部下たちを叱咤する。
「力の質の違いだ!魔の者が『攻』に長けているなら、我らは『守』に長けている!
だからこそS級妖怪さえ通れない結界を張ることができるのだ!!」
しかし冷徹な一言がそれを阻む。
「儂には効かんぞ」
「……あ……」
一瞬立ち直りかけた隊員たちは再びどん底へと突き落とされる。
「霊界の力や技は妖魔に対して特化しておる。
どれも人間には効果が薄い。
つまり霊界はどうあがいても儂には勝てぬということじゃな。
……よほど自信に満ち溢れておるからどんな奥の手を隠し持っているのかと思っていたら、ただ無知なだけだったとは。
散々人間を見下しておいてこれか……滑稽すぎて嗤う気も起きぬ」
完全に戦意が折れたようだ。その場で膝をつく者もいる。
……これ以上戦う必要はないだろう。八つ当たりどころか弱い者いじめにしかならない。
「……そう、霊界は弱い。
だというのに分不相応に見栄を張って野心など出すから……下らぬ悪行に手を染める」
「何の、ことだ……?」
だからこれはただの愚痴だ。彼らには伝わらないとわかっていた。
……しかし異なる反応を示した者がいた。ヒノカミから、目を逸らした。
「そこのヒゲヅラぁ!!」
「ひいぃぃっ!!」
「た、隊長!?」
ヒノカミは即座に斬魄刀を始解して自分に突き刺し、膨大な炎を吐き出し始めた。
全身から放射された炎が特防隊員たちの周囲で無数の炎の球体となり、彼らを取り囲んでいる。
「その反応……知っていたな?
貴様は、知っていたのだなぁあああっ!!」
「ひっ、ひいっ!」
尻もちをついて後退る大竹の頬を、周囲の炎の球体が放った熱線が掠める。
炎に囲まれたこの状況、すでに逃げ場などないのだと気付いた。
足音を立てて大竹の前ににじり寄ったヒノカミが彼の胸倉を掴み引き寄せる。
「すべて吐いてもらうぞ……コエンマと、貴様の部下の前で!!
黙秘も偽りも許さん……儂は外道に手心を加えるつもりはないのでな!」
「う、うぁう、あぁ……!」
仲間であり上司である大竹の危機に、彼らは誰も動かなかった。
実力差で心が折れていたこともある。
全身から炎を噴き出し激怒するヒノカミがあまりに恐ろしかったのもあるだろう。
だが自分たちに重要な情報を秘匿し続け、今も無様に醜態をさらす大竹に対して、不信感が募っていたこともまた事実だった。
主人公の実力は霊力値50万くらいです。
魔界統一トーナメントの幽助が妖力値20万くらいなので遥かに強いんですが、100万を軽く超えてる雷禅や黄泉には敵わないでしょう。
……ジャンプ作品後半って、どこも魔境ですよね。
だからこそ主人公が過剰なチートにならず、物語が成立するんですが……。