『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第6話

「不正……だと?内容は?」

 

「『マッチポンプ』」

 

「!?」

 

コエンマや幻海たちには伝わったようだが、勉強が苦手な幽助と柳沢は首を傾げる。

 

「蔵馬、マッチポンプってなんだ?」

 

「簡単に言えばやらせ行為ですよ。

 自分で火をつけて、火事だと叫び、それを自分で消して、自分の手柄だと言い張るような行為です」

 

「……おいおい、霊界の仕事ってのは妖怪退治だろ?

 それがやらせってこたぁ……」

 

「桑原くんの想像通りでしょう。

 彼女の言うことが事実なら……霊界は意図的に、妖怪たちに人間を襲わせていたことになる」

 

「「なにぃ!?」」

 

ここでようやく数名が反応する。ぼたんもわかっていなかったようだ。

 

「しかし、なんだってそんなことを……」

 

「妖魔を悪者にしておいた方が都合がいいからじゃよ。

 そうしておけば霊界は『人間を守るため』という大義名分で、人間界を己の領土としておくことができる。

 そして人間界を領土とすれば魔界へとつながる道を結界で封鎖するのも容易くなる」

 

結界を張る以前にも確かに強大な妖怪による大量殺人などはあった。

しかしその大半は人間から妖怪に依頼したもの。

人間たちが妖怪への報酬として用意した生贄や金銀財宝まで妖怪による被害として計上していたというのだから恐れ入る。

 

「確かに低級妖怪は凶暴で野蛮じゃが、A級以上となれば人間よりもよほど理知的じゃよ。

 そもそも魔界は広大。今のゴミゴミして霊力も薄い人間界に興味を持つ者は少ない。

 結界により被害が減ったのは妖怪が出てこられないからでなく、人間が妖怪を呼び寄せられなくなったからじゃ。

 それを結界によりA級以上の妖怪を封じ込めた成果と大言壮語し、何とか見栄と領土を維持しているのが、今の霊界の現状なんじゃよ」

 

「……馬鹿な!」

 

そこで特防隊員の一人が耐えかねて声を上げる。

 

「妖怪の悪行が霊界のでっち上げだと!?

 そんな証拠がどこにある!?人間のお前がどうやって調べたと言うんだ!?」

 

「……これは当人の名誉のために黙っておきたかったが……。

 儂がコエンマに会いに来た時、業務を手伝ってやることが多くての」

 

「「!?」」

 

霊界関係者が一斉にコエンマの方を向く。

 

「……スマン」

 

協力を申し出たのはヒノカミからだが、了承したのはコエンマだ。

幾ら彼女の事務処理能力が優れているからといって、重要書類を外部の人間に晒すのは普通に大問題である。

 

「きっかけは現世での過去の事件記録じゃ。

 事件を起こした妖怪とその手口……とうの昔に捕らえ処分されたことになっていたが、儂は比較的最近にその妖怪を見た覚えがあった。

 ……幼い頃に儂が不在の隙に儂の家族を殺し、その場で儂が殺した妖怪と瓜二つだったんじゃからな」

 

「「「!!?」」」

 

「まさかと思い、勝手にコエンマの名を借りて、書庫を調べた。

 すると出てきたんじゃよ。霊界に捕らえられたはずの妖怪が再び現世で人間を襲っていた事例がいくつも。

 ……主に知能も耐性も低い、C級やD級妖怪ばかりじゃったが……」

 

「つまり……捕らえた妖怪を洗脳して人間を襲わせていたということか!?」

 

ヒノカミは無言の肯定。そこで幽助が掴みかかる。

 

「そこまでわかってんなら何で何もしなかった!

 嘘をバラすとかぶっ飛ばすとか、オメェならできるこたぁあっただろ!?」

 

「……それが、今回の事件での儂の行動に繋がるんじゃ」

 

「あぁ!?」

 

彼女も霊界の不正を放置できないと考えてはいた。

だが打てる手が限られる。

まずそのまま告発するのは無理だ。自分には霊界ほどの信用がない。

知人友人に明かすのも不味い。彼らも霊界に追われることになりかねない。

地道に証拠となり得る情報を集めていたがどれも説得力が弱い。

やはり力尽くでの対処しかないと結論付けたが、霊界の戦力は未知数。

聞く限りではS級妖怪にも勝てないらしいが、コエンマも知らない何かを隠し持っているかもしれない。

 

「魔界への穴が開くほどの事態になれば、霊界最強と呼ばれる『霊界特別防衛隊』が出動するはず。

 彼らとぶつかれば霊界の強さを知る指標になると考えた。

 最低でも実力を知れれば良し。圧倒できたなら霊界に儂の実力を示す機会となる。

 だから儂は、仙水の所業を敢えて見逃したんじゃ」

 

「……そういうことだったのかい」

 

ようやくヒノカミが何も言わずに自分のもとを飛び出した理由がはっきりして、幻海がため息をついた。

余計なことを知ってしまった自分が傍にいれば周囲を巻き込むかもしれない。

相手の実力がわからない以上強硬手段も取りづらい。

だから彼女は何も言わずに周囲から距離を取るしかなかったのだ。

 

「して結果は、まぁ見ての通りじゃ。

 霊界特防隊の戦闘力は総合してA級。彼らがトップだと言うなら儂一人でも霊界を圧倒できる」

 

「「「!?」」」

 

すでに一度精神的にズタボロにされた特防隊員たちが息を呑む。

 

「っとすまん、本気で霊界を滅ぼしてやろうというつもりはない。

 基本的には交渉、力を笠に着て強気に出られるという意味じゃ。

 お主らもお主らなりに正義を成そうとしていたことは知っている。

 巻き込んで悪いとも思うておる。

 じゃからお主らの実力が判れば過剰に手出しするつもりはなかった。

 ……この件の首謀者と繋がった者が紛れているとは思いもせず、ちとやりすぎてしまったがな」

 

「大竹……!」

 

コエンマや特防隊員の視線が、隅で脂汗を流して顔を伏せている隊長の大竹に向かう。

 

「貴様、知っていたのだな!

 オヤジがこんな馬鹿げた真似をしていたことを!!」

 

「……すべては霊界の安定と発展のためです!!」

 

「ふざけるな!!俺たちは正義と誇りを胸に戦ってたんだ!それをよくも!!」

 

「貴様ら!上官に向かってなんたる口だ!」

 

「黙れ!テメェなんか隊長じゃねぇ!!」

 

特防隊員たちがもめ始めるがコエンマはまず先にヒノカミに頭を下げる。

 

「オヤジが……スマン!」

 

「謝るのは儂の方じゃよ。

 お主を疑った。結局、父の言いなりになるのではないかとな。

 じゃから互いに水に流そう。

 それでも悪いと思うてくれるのなら、霊界の改革に手を貸してくれ」

 

「……必ず!!」




原作だと最後にちらっと明かされた程度ですが、そんな簡単に流していいことじゃないと思うんですよね。
この作品では思いっきり大ごとにしておきました。
そして原作最後でも大竹は再出演して悪事を働いています。
なのでこの作品ではエンマの悪事にも加担していた悪党としています。
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