別に年末年始特別編とかは予定してないです。
年明けもいつも通り投稿します。
そして後で息切れしそうで少し怖いですが……1日2回投稿、もうしばらく続けてみます。
可能なら第四章終了まで。
「幻海」
「久しぶりだね、コエンマ」
魔界への穴を巡る騒動から数カ月。
幻海の寺を大人の姿のコエンマが尋ねてきた。
「アイツらはいるか?」
「あぁ、相変わらずだよ。ついといで。
いつも通りならそろそろだ」
幻海の先導で奥へと向かうと丁度部屋の扉が開き、コエンマの目当ての二人が出てきた。
「っかー!
まぁた届かなかったぜー!」
「まだまだ若いモンには負けん……と言いたいところじゃが、どーなっとるんじゃ貴様は。
この調子では儂はともかく、全盛期の仙水を超えるのもあっという間じゃの」
「まだ昔の仙水の方が強かったのか……負けてらんねぇ!」
負けたのに元気いっぱいの幽助と、勝ったのに疲れ切っているヒノカミ。
種族によるスタミナの差が如実に現れていた。
強くなりすぎた自分とまともに戦える相手がいなくなってしまった幽助は、頻繁にヒノカミを喧嘩に誘った。
彼を魔界に送り出す際に『後で相手をしてやる』と言った手前断りづらく、彼女は律儀に応じている。
S級妖怪クラスの二人がぶつかれば人間界は無事ではすまないので、強力な結界が必要になる。
最初はヒノカミがテリトリーで……つまり両手を塞ぎ力を割いた状態でもそれなりにいい勝負になっていたのだが、すぐにハンデ有りでは苦しくなった。
そこで幻海に泣きついて特殊な結界を組んだ修行場を用意してもらったのだが、これもそろそろ限界に近づいてきている。
「まったく、部屋を修復するのも楽じゃないんだよ。
これ以上やりたいってんなら呪霊錠でも使いな」
「げー……できりゃあ全力でやりてぇんだけど」
「ハハハ、退屈していないようで何よりだ」
「……で、何の用じゃコエンマ。
気軽に現世に来れるほどお主は暇ではないはずであろう?」
「……オヤジを罷免した」
コエンマの一言に、全員が真剣な表情に変わる。
「オマエたちには真っ先に伝えねばと思ってな……。
飛影……は興味もないだろうから、桑原と蔵馬もここに呼んでほしい」
「あい分かった」
ヒノカミはテリトリーでヘルメスドライブを具現化し、彼らを一人ずつ幻海の寺へと連れてきた。
「特防隊の奴らも協力してくれてな、ヒノカミの情報が事実であることはすぐに判明した。
十分と言える証拠が揃ったので、先日オヤジを告発した」
「先日?エンマの奴は随分と早く退いたもんだね。
それほどの悪事の証拠でも見つかったのかい?」
「オヤジが自分から退くと宣言したんだ。拍子抜けするほどあっさりとな。
良心の呵責を感じていたのか、すぐに返り咲くつもりなのか……どっちだろうな」
「なんでぇ、逃げられたようなもんじゃねぇか。
ヤローをしょっぴくわけにはいかなかったのかよ?」
「人間たちに対し悪行を重ねてきたのは事実だが、霊界にとっては良き指導者であったからな。慕う者も多い。
強行すれば組織が割れ、霊界は立ち行かなくなると判断した。
お前たちにはすまないと思っている」
「なぁに、これからに期待するさ。
しかしこれでお主が霊界のトップか……多忙になるじゃろうな。
どれ、また儂が手伝ってやろうか?」
「勘弁してくれ、その件は周りからも散々責められたんだ。
これ以上醜態を晒せば、今度はワシが引きずり降ろされてしまうわい」
ヒノカミの皮肉に肩をすくめたコエンマに対し、蔵馬が話題を変える。
「今後の霊界の方針は?」
「人間と妖怪の在り方を見直す時が来たと考えておる。
魔界にも歩み寄っていきたいのだが、流石にすぐに結界を解くのはな。
霊界が把握している魔界の情報はごくわずか。
どのような妖怪がいて、どのような勢力があり、どのような社会が築かれているのか。
それを正確に把握できぬ内には……」
人を送り込んで調査するというわけにもいかない。
霊界の人間では力不足なので危険だ。桑原や蔵馬でも危ういだろう。
魔族になった幽助やヒノカミならそう簡単に負けはしないが、中途半端に実力を持った彼らでは魔界の強者たちを刺激してしまう可能性が高い。
少なくとも仙水との戦いで幽助にちょっかいをかけてきたという彼の先祖の魔族には、二人がかりでも敵わないだろうと推測している。
「……まぁ、何か進展があったら知らせるさ。
その時には協力してくれると助かる」
「おうよ、面倒ごとは大歓迎だぜ!」
「フフ、いつも面倒ごとを引き起こすお前の説得力は違うな」
やはり多忙らしく、コエンマは必要な話を終えるとすぐに霊界へと戻っていった。
高校受験を目前に控えている桑原と蔵馬も余裕があるわけではない。
まずは蔵馬から急いで家へと帰し、桑原を迎えにもう一度転移してくる。
「幽助、儂はそのまま桑原のところに行く。
部屋の結界の修復にも時間がかかるじゃろうし、喧嘩は暫くお預けじゃ」
「しゃーねーなぁ……つーか桑原が骸工大付属高校ねぇ……時間の無駄じゃねーの?」
「んだとコラァ!」
「いやいや、桑原はよく伸びておるぞ。
やる気もあって教えがいがあるわい」
ヒノカミは浦飯との喧嘩以外は、もっぱら桑原のところにいた。
彼の持つ次元刀に興味を持ち、それを学ばせてほしいと願い出たからだ。
その礼にと彼女は桑原に勉強を教えている。
本人曰く『何を隠そう、儂は家庭教師の達人じゃあ!』とのこと。
実際に非常に頭が良く、全国でもトップクラスの成績を持つ蔵馬や海藤も舌を巻いたほどだった。
「どうじゃ?幽助も勉強してみんか?
今からでも高校に受かるくらいに仕込んでやれるぞ?」
「いぃ!?じょーだんじゃねーよ!頭が吹っ飛んじまう!!」
「ダァッハッハッハ!S級妖怪サマってのは、随分と簡単に死んじまうモンなんだな!」
「んだとコラァ!!」
幽助と桑原がじゃれ合いを始めたので、今のうちにとヒノカミは広間の隅でうずくまっていたプーの傍にいく。
「おいで、白星」
『シャー』
プーの羽毛の中にいたヒノカミの霊界獣である白蛇が、呼びかけに応じて顔を出した。
そのまま床を這って彼女に近付き、脚を伝って定位置である左腕へと登ってくる。
「ほれ、いくぞ」
殴り合いに発展し桑原がボロボロにされ始めていたので割り込み、彼の腫れた顔を軽く治療した後でその場から消えた。