『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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明けましておめでとうございます。
今年も本作をよろしくお願いいたします。


第8話 魔界からの使者

数日後、魔界と交流を持ちたいというコエンマの願いは予想もしない形で叶うことになった。

 

『おいヒノカミ!オメー今日霊界行くっつってたよな!?』

 

「その通りじゃが……どうした幽助?」

 

「む、幽助からか?」

 

霊界でコエンマと雑談をしていたヒノカミの元に、現世の幽助から突然の連絡が入った。

現世とも通じる特別な電話だ。すぐにスピーカーモードに切り替える。

 

「今はコエンマと共にいるが、何事か?」

 

『すぐ来れるか!?

 魔界からオレの先祖の部下とかいう連中が来やがった!』

 

「「!?」」

 

それが事実なら魔族が容易に現世に侵入しているということになる。

一大事だがチャンスだ。

交流を持ちたいと考えていた相手がわざわざこちらに来てくれたのだから。

すぐに向かわねばならないが、ここは霊界。

ヘルメスドライブでは次元の壁は超えられない。

正規の方法で現世に移動するのは時間がかかりすぎる。

 

「場所は!?」

 

『ばーさんちの敷地の林ん中!』

 

「……だそうだ。いけるか?」

 

「一応2回目じゃからな……コエンマこそ覚悟はいいか?」

 

「ぶっつけ本番よりマシだ、頼むぞ!」

 

今日彼女が霊界に来たのは、ついに再現に成功したこの力をコエンマに見せるためだった。

ヒノカミは掌を合わせ、目を閉じて集中しながら膨大な霊力を注ぎこむ。

そして目の前に現れた虹色の剣を掴み、振りかぶる。

 

「……次元刀!!」

 

模倣した桑原の霊剣が、次元を切り裂いた。

あれだけ注いだ霊力を一振りで使い果たし、剣は消滅した。

裂け目から見えるのは夜空と、下には現世の森。おそらく幻海の敷地の上空に繋がった。

 

「急ぐぞ!」

 

「ああ!!」

 

まだ完全に再現しきれていないので、裂け目もすぐに消えてしまうだろう。

ヒノカミとコエンマは急いで飛び込んだ。

空中に投げ出されるが即座に聖光気を発して空を飛び、コエンマを掴んで幽助の隣に着地する。

 

「どうでぇ!コレでこっちも3人だぞコラァ!」

 

「なんじゃ、戦う流れなんか?」

 

「ワシを戦力に数えるな!」

 

「いえ、我々は話をしに来たのですが……」

 

幽助の前にいたのは全員同じ服を着て髪の毛を剃った人間男性型の妖怪3人。

リーダーの男の名は北神というそうだ。

本来はS級妖怪なのだが、特殊な装置を取り付けてD級並にまで力を落とすことで結界を抜けてきたという。

彼らは掟で禁じているが、結界を抜ける方法は他にもいくつかあるとのこと。

 

「コエンマ……もう結界解いた方がよくないか……?」

 

「……こうも易々と掻い潜られているようでは、苦労して維持するのも馬鹿らしくなるなぁ……」

 

「コエンマ……?ではアナタが新たな霊界の王ですか?

 我々魔族に対して融和的だとは聞きましたが、幽助さんの呼びかけにすぐに応えるとはどうやら事実のようですね」

 

「諜報能力も負けておるのか……」

 

コエンマは侵入したことは目をつぶるから、自分たちも立ち会わせてほしいと願い出た。

人間界を乱すことを禁じている彼らは自国の掟で滞在時間は最小限と決めているのだが、霊界のトップが認めるのなら慌てる必要がなくなると要望に応じた。

 

現在、魔界では強大な力を持つ3人の妖怪がいる。

全員が魔界を統べるほどの力を持ち、それぞれで国を率いている。

3人はいずれも人間を食料とするタイプの妖怪であり、意見が折り合わず対立している。

一番わかりやすいのは食事に対する考え方だ。

『人間を食べるのは止めよう』という者。

『人間以外は食べられない、これでも抑えている』という者。

『人間など幾らでも増えるのだから好きなだけ食べればよい』という者。

それぞれ『雷禅』『軀』『黄泉』という名の妖怪で、雷禅が幽助の祖先にあたるらしい。

3人の力は拮抗したまま500年が経過しているが、すでに千年近く断食している雷禅は栄養失調により死にかけている。

彼はすでに死を受け入れているが、部下である自分たちは彼の死後も遺志を受け継ぎ戦い続けるために戦力を求めている。

先日、雷禅は仙水を追って魔界に来た幽助を察知した。

今は脆弱でも鍛えれば強くなるだろうと聞き、勧誘に来たというわけだ。

 

「気に入らねーな。オメーら『猫の手でも借りたい』っつってるみたいだぜ?」

 

「……その通りです。

 私の力は国王の足元にも及ばず、そして今のあなたはその私にも及ばない」

 

「そりゃ幽助が魔界に行ったときの話じゃろう?」

 

「……それがなにか?」

 

突如割り込んできたヒノカミに、北神は乱暴に答える。

魔族の幽助、霊界の王コエンマと比べて、彼らはただの人間にしか見えないヒノカミを低く見ていた。

 

「はぁ……破ッ!」

 

「!?」

 

ヒノカミが掌を叩きつけ、テリトリーを発動する。

 

「幽助、見せてやれ」

 

「おうよ!……オラァッ!!」

 

遮断された結界の内側で、幽助から彼らの予想をはるかに超える量の妖気が解放された。

 

「なっ……この妖気は!?」

 

「あれからそれなりの日数が経過しておる。

 長い年月を生きるお主らにとっては一瞬であろうが、若者が化けるには十分じゃよ。

 『男子三日会わざれば』とな」

 

「だぁっはっは!まだまだ上げられるぞオラァ!」

 

「はしゃぎすぎじゃ馬鹿者……む?」

 

背後から音が聞こえて振り返る。

咄嗟にヒノカミの後ろに避難していたコエンマが、幽助の妖気に当てられ泡を吹いて気絶していた。

 

「幽助、ストップ!今すぐ止めろ!コエンマがぁ!!」

 

「はぁ?……なんで外に出しとかねーんだよ!?」

 

「儂のテリトリーは範囲指定型なんじゃ!細かい調整とかできるか!!

 いいから止めろ!解除できんじゃろうがぁ!!」

 

幽助が妖気を止め、ヒノカミが結界を解除した後、二人はぎゃいぎゃいと騒ぎ続けながらコエンマを介抱している。

その様子は酷く滑稽に映ったが、北神はしっかりと本質を見抜いていた。

強固な結界を瞬時に作り出す能力。

自分たちすらたじろぐ妖気を正面から浴びて平然としている胆力。

そして霊界の王コエンマが咄嗟に後ろに隠れるほど全幅の信頼を寄せる相手。

 

(この人間が……今の霊界の最高戦力ということか……!)

 

間違いなくS級妖怪並の実力、国王程ではないだろうが自国のナンバー2である自分よりもおそらく上。

正直に言って霊界は取るに足らない連中だと思っていたが、協力関係を結ぶのも悪くないかもしれない。

北神にそう思わせるだけの価値が彼女にはあった。




アニメにて肉体のまま霊界に行ったことがあるらしく、本作でも可能という設定にしています。
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