『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第11話 雷禅

次元刀で開けた裂け目を通って、ヒノカミたちは魔界へとやって来た。

妖怪や魔族しかいないこの世界で、霊気を放つ彼女らは酷く目立つ。

すぐにヘルメスドライブを作り出し幽助の傍に転移しようとした。

しかしモニターに表示された距離があまりに長く、一度の転移で移動するのは難しいと判断。

何度かに分けて移動することになった。本当に魔界は広大なのだと実感した。

 

「待たせたなぁ、浦飯ぃ!」

 

「よぉ桑原ぁ。マジでテメーも来やがったのか」

 

「あたぼうよぉ!魔界への道を切り開いたのもオレなんだぜ?」

 

ヒノカミが魔界に向かう日時も、桑原が同行することも、預けていた伝令機で幽助に連絡済みだ。

幽助は雷禅の居城から少し離れた台地の上にいたらしく、遠くに禍々しい妖気と音を放つ塔が見える。

 

「しっかし、おどろおどろしい場所だな……この音はなんでぇ?」

 

「クソオヤジの腹の虫」

 

「これがか……中途半端にエサを与えたのは逆効果であったかもしれんの」

 

「そのことでよ、北神たちがヒノカミを待ってたぜ。

 オヤジの前にそっちに顔見せに行こうや」

 

人間を食わないと決めた妖怪たちが治める雷禅の国ならば、ヒノカミたちが襲われる心配はない。

3人は別れてからの出来事を語らいながらのんびりと歩いていく。

 

「合格!?マジか!」

 

「おうよ!」

 

「っはー……家庭教師の達人ってのは伊達じゃねぇな」

 

「オレを褒めろやコラァ!」

 

「かかか、しかしあと一歩でお主に土下座で舟唄を歌わせることができたんじゃがなぁ」

 

「いぃ!?あと一歩!?」

 

「聞いて驚け……次席合格だオラァ!!」

 

「!?……いや驚いたぜ。さすがに茶化す気も起きねぇ……」

 

「静流らも同じような反応であったよ。みな一様に、ポカンとな」

 

「竹中にゃあ世話になったからな。いい恩返しになったぜ。

 ……お前に会いに行くつったら、よろしく伝えといてくれとよ」

 

「……人間界に戻ったら、いっぺん顔出しとくかぁ」

 

話すことは尽きないが、いつの間にか雷禅の城のすぐ麓にまで到着していたため切り上げとなった。

幽助たちの姿を見つけた途端に北神を始めとした雷禅の部下たちが一斉に駆け寄ってくる。

 

「ヒノカミ『様』!……お待ちしておりましたぁーーーー!!!」

 

そして一斉に片膝をつき首を垂れる。まるで主に対する配下の礼だ。

 

「……態度変わりすぎじゃろ、貴様ら」

 

「いえ、アナタへの恩を思えば!

 そして不躾ですが一刻も早く雷禅国王の元へ!

 国王も今日という日を首を長くして待っていたのです!!」

 

ヒノカミが呆れ、桑原は魔族たちのあまりに腰の低い態度に面食らう。

北神らの丁重な案内を受けて塔の最上階に向かう一行。

近付くほどに腹の虫の音と、妖気が一層大きくなっていく。

 

「雷禅国王!ヒノカミ様がいらっしゃいました!!」

 

玉座の間への扉を開くと、台座に座る長髪の男がいた。

北神の声を聞いて俯いていた顔を上げる。

 

「……!?」

 

「……メシィ……喰わせろォォオオオッ!!!」

 

雷禅は白目を剥き、よだれを垂らして襲い掛かってきた。

すでに彼からは理性を感じられない。

 

「この欠食児童めが……!」

 

「下がってろ北神!!」

 

「おい、ホントに大丈夫なんだろうな!?」

 

「案ずるな桑原。何を隠そう……」

 

北神が離れ、雷禅が近づいたところで掌を叩きテリトリーを発動する。

 

「儂は、『人肉風料理』の達人じゃああああああ!!」

 

「「嫌な達人だなオイ!!」」

 

テリトリーの内側に具現化されたうまそうな料理の数々。

錬金戦団亜細亜支部のホムンクルスたちと共に研究開発した、人肉風料理のフルコースである。

ヒノカミの霊力が込められているので栄養もたっぷりだ。

 

「がぉぉぉおおおおおお!!!」

 

「喰うのはえぇ!?」

 

「オイ、このペースだと1分と持たねぇぞ!?」

 

「マジかコヤツ……!えぇい、超大皿カレー!50人前サイズじゃあ!!」

 

「がぶぶぶぶぶぶ!!!」

 

「「「飲むなァ!!!」」」

 

料理の具現化が追いつかない。

理性を失った今の雷禅の前に食料が無くなれば自分たちが食料にされるかもしれない。

まさか食事を振舞うだけで命を懸けることになるとは思わなかった。

万が一の事態に備え幽助と桑原がヒノカミの前に立ち、テリトリーの外側では北神たち雷禅の部下が必死にヒノカミを応援している。

後で聞いた話なのだが、原因はヒノカミが幽助に手土産として持たせた大量の『肉まん』。

彼は久しぶりの食事でわずかに力が回復したが今度は食欲の抑えが効かなくなり、精神的に余裕が無くなっていたらしい。

 

食うか食われるか、いや食わせるか食われるか。

命がけの戦いを繰り広げることなんと6時間。

 

「……はぁー……喰った。

 腹ァ八分目ってとこだが……」

 

「こんだけ食い散らかしてふざけんなよコラァ!」

 

「ヒノカミィ!しっかりしろォ!!」

 

「霊力が……尽きた……。

 儂にもメシを……今なら人肉でも……イカンイカン!?」

 

桑原を連れてきていて本当によかった。

彼が必死に霊力を注いでくれなければ、ヒノカミはカニバリズムに目覚めていたかもしれない。

そして彼女の霊界獣である白星が自分を捧げようとしてきたので丁重にお断りした。

 

「……で、そっちの嬢ちゃんが噂の料理人か。

 礼を言うぜェ。

 まさか『絵に描いた餅』を食わせられる奴がいるたぁ思わなかった」

 

「誰が料理人じゃい……霊界の使者と呼べ……」

 

「久しぶりにメシ食ったもんだから、食後の運動がしてェな……。

 ちぃと付き合えや。鼻たれ小僧ども」

 

「「上等だコラァ!テメェぶっ飛ばしてやらァ!!!」」

 

北神たちが倒れて動けないヒノカミを運び出し、幽助と桑原が雷禅へと飛びかかる。

迎え撃つべく雷禅が放った妖気は魔界全域に轟いた。

 

雷禅完全復活。

 

その事実を把握した軀と黄泉は、驚愕を隠せずしばし硬直していたと言う。

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