『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第13話

「一体どういうことだ!!」

 

「申し訳ございません!ですが観測していた我々でも本当に何が何だか……!」

 

雷禅の膨大な妖気を察知した黄泉の城では、幹部たちが集められ緊急会議が開かれた。

間もなくくたばると信じて疑わなかった政敵の完全復活。

しかもその力は自国の王である黄泉よりも上。

参謀の妖怪に向けて怒号が飛び交うのも当然だろう。

常に冷静だった黄泉ですら苛立ちを隠せずにいる。

 

「蔵馬……お前は何か知っているのか?」

 

「あぁ」

 

「「「!!?」」」

 

目が見えない黄泉は音や気配を察知する能力が非常に優れており、自軍のナンバー2となった彼の心音に一切の乱れがないことに気付いていた。

 

「思えばお前は雷禅の死の予測を否定していたな……説明してもらおうか……!」

 

「オレがここに来た時にしようとしたはずだが?

 『雷禅は霊界と同盟を結んだらしい』と」

 

だが当時まだ新参者で立場が低かった蔵馬の言葉に誰も耳を貸さなかった。黄泉ですらもだ。

それほどまでに彼らは霊界と人間を甘く見ていた。

『人間など幾らでも増える食料』としか捉えていなかったからこその失態だ。

もっとも、当時の蔵馬は彼らがそういう反応をすると予測していたのだが。

 

「少し前までの霊界なら確かにお前たちの言う通り、気に掛ける必要もない弱小勢力だっただろう。

 だが今の霊界にはコエンマの懐刀がいる。

 魔族や妖怪に友好的で、戦闘力や知識はオレをも上回り、雷禅の寿命問題を解消しうる能力を持った人間が。

 ……これほどわずかな間でここまで回復させるとは思ってもみなかったがな。

 そういう意味ではお前たちの言う通り、オレの見立てもまだまだ甘かったらしい」

 

「……その能力とはなんだ!」

 

 

――――……

 

 

「『霊力による物質の具現化』だと?」

 

「あぁ。オレも詳しくは知らんが」

 

軀もまた彼女が腹心として隣に置いた飛影から情報を得ていた。

ただし飛影はヒノカミと積極的な交流を持っていなかったので、専ら蔵馬から又聞きした情報だが。

 

「つまりソイツが人間の肉を大量に作って喰わせたんだろうぜ。

 馬鹿みたいな量の霊力を持っていたが、一人で雷禅の腹を満たすほどとはな」

 

「そのような人間がいたとは……侮ったか」

 

「そこらの妖怪よりよほど冷徹で合理的、そして激昂しやすいらしい。

 ……ククク、案外貴様とは気が合うかもしれんな」

 

そのヒノカミという人間が雷禅に付いた以上、彼の飢餓状態は完全に解消されたとみていいだろう。

ソイツは百年足らずでくたばるだろうが、一度腹を満たした雷禅が再び飢え死にするまでに千年はかかる。

もう一度持久戦をはじめからやり直すのは流石に現実的ではない。

彼らはあずかり知らぬことだが、霊界が基礎技術を確立した以上雷禅とその配下たちの食糧事情は完全に解決している。

むしろ時間は雷禅たちの味方だと言っていい。

 

『軀様!』

 

配下の者から通信が入る。

 

「なんだ?」

 

『それが……雷禅の使者を名乗る者が!』

 

「……ほぅ」

 

早速動き出したかと、軀は飛影を伴い使者を出迎える。

雷禅の配下の一人が持ってきたのは、招待状。

数日後、どこの国にも属さぬ緩衝地帯にて話がしたいとのこと。

雷禅側の参加者は本人と、その息子だという男の二人だけ。

軀と黄泉は何人でも好きに連れて来てよいとある。

やはり黄泉にも同様の書状を送っているのだろう。

 

「どうする?」

 

「行くさ。アイツは下らん謀はしない。

 それに……今のアイツがどれほど力を取り戻したかにも興味があるからな」

 

軀は巨大昆虫型の移動要塞を会談場所に向けて進ませる。

黄泉も軀の動きを察知した。

ここで雷禅が軀と組むような事態になれば勝ち目がなくなる。

黄泉も参加しないわけには行かなかった。

 

そして当日。

周辺に何もない荒野の真ん中に雷禅と幽助が座っていた。

軀は飛影だけを。黄泉はナンバー2の蔵馬と、彼が鍛え上げた新たな戦力であるS級妖怪たちを引き連れていた。

 

「陣!酎もか!おめぇら~!」

 

「ぃよぉ~!久しぶりだなぁ~幽助ぇ~!」

 

その妖怪たちが雷禅の息子と親し気であることは誤算だったが。

 

「……顔合わせるのは久しぶりだなぁ、軀、黄泉」

 

「随分と血色がよくなったな。

 面倒な事態になったが嬉しく思うよ。

 お前ほどの強者がただ朽ちていくのを見るのは忍びない」

 

「……くだらない前置きはいい。

 さっさと要件を話してもらおう」

 

穏やかに応える軀と、明らかに苛立ちを見せる黄泉。

特に黄泉は殺気すら漂わせて雷禅に詰め寄るが、彼は石の上に腰かけたまま笑う。

 

「ワリィが用があるのはオレじゃあねぇ」

 

「アンタらを呼んだのはオレだ」

 

雷禅の呼びかけに応え、幽助が軀と黄泉の前に歩み出る。

 

「ほぅ、雷禅の息子がか」

 

「あぁ。だが今回は霊界の親善大使って立場で参加させてもらってる」

 

「その親善大使とやらが何の用だ?」

 

「霊界は結界を解く準備がある」

 

「「!?」」

 

「知ってるとは思うが、今の霊界のトップはコエンマだ。

 アイツはアイツのオヤジと違って魔界とも仲良くやりてーと思ってる。

 だから500年もにらみ合ってるところ悪いが、魔界のイザコザにはさっさとケリつけてほしーんだよ」

 

「フフ、生意気な口を利くじゃないか。……それで?」

 

「アンタらのやり方じゃいつまでも決着がつかねぇ。

 だから、手っ取り早い方法を提案させてもらう。

 ちなみにオヤジは了承済みだ」

 

「なんだと……?」

 

幽助は不敵に笑い、宣言する。

 

「ただの『ケンカ』をしようぜ。国なんぞ抜きでさ」

 

「「「「!!?」」」」

 

「一度みんな、ただの一人に戻ってよ。

 誰が一番強いか、トーナメントで決めようじゃねぇか。

 最後に勝ち残った奴が……魔界の総大将だ」

 

「そんな馬鹿な案に応じると……」

 

「「「「のったぁ!!」」」」

 

黄泉が拒絶しようとする前に、蔵馬の連れてきた妖怪たちが賛同してしまった。

 

「……すまんな、黄泉。

 今この瞬間からオレも、『ただの蔵馬』だ」

 

「ハハハ!実に馬鹿だ!」

 

「良いだろう……オレも貴様に乗った!」

 

「蔵馬……軀……!!」

 

もはやこの場で幽助の提案を拒絶しようとしているのは黄泉しかいない。

このまま彼だけが強情に抵抗を続けても、この流れはもう変えられない。

 

「……仕方あるまい!!」

 

これよりわずか半日で雷禅・軀・黄泉の国家解散と、魔界統一トーナメントの開催が魔界全土に知れ渡った。

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