『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第14話

「なんだよ、桑原は出ねぇのか。

 今のアイツならいい線行くと思ったんだけどなー」

 

「あ奴ももう高校生じゃからなぁ。

 高校生活を始めて早々、長休みを取るわけにもいくまいて。

 『時間があれば応援に行く』とは言っておった。

 今のあ奴なら自力で魔界に来られるしな」

 

「オメーは出るよな?」

 

「あぁ、魔界の連中に霊界の力を示しておきたい。

 それに儂も喧嘩は好きじゃしな」

 

幽助とヒノカミは大会に純粋な意気込みを見せている。一方。

 

「雷禅国王。国王に優勝していただくために、我々は微力を尽くします」

 

「何言ってんだテメェら。

 もう国は解散しただろうが。テメェらはテメェらのために戦いな」

 

「我々が我々の意志でそうすると決めたのです。

 であれば、貴方も文句は言えないはずです」

 

「チッ、めんどくせェ……」

 

雷禅は腹心たちに『協力させろ』と迫られ、窮屈な思いをしていた。

全盛期には程遠いが飢えが解消された今、魔界で最も強い妖怪は雷禅だと彼らは信じている。

雷禅が言うには軀は余計なことはしないだろうとのことだが、黄泉が姑息な手段を使ってくる可能性は高い。

 

「言っとくがテメェら。

 小細工無しなら俺が優勝する、なんて保証はねぇぞ?」

 

「何をおっしゃいますか!

 軀も黄泉も今の雷禅様であれば!」

 

「そいつらだけじゃねぇよ。……来やがったな」

 

「「たのもぉ~~!!」」

 

突然響く謎の声。

やって来たのは紅い肌の巨漢の鬼『煙鬼』と、酒臭い女『孤光』だった。

 

「し、侵入者!?」

 

「気にすんな。俺の昔馴染みだ。

 こんだけでけぇ祭りとなりゃあ、テメェらも出てくるとは思ってたぜ」

 

「おぉ~雷禅!元気そうだな!

 死にかけてると聞いてたが、この間感じたでけぇ妖気はやっぱりお前だったか!」

 

「けけ、生憎と死に損なってなぁ」

 

彼らに続いて次々と現れる妖怪たち。皆かつての雷禅の喧嘩友達だ。

 

「おぅい、嬢ちゃん。

 宴がしてェ。メシ出してくれや」

 

「儂ゃ貴様の『メシ』使いじゃないわい。……全員貴様と同じで良いか?」

 

雷禅に呼び出されたヒノカミは手を叩いてテリトリーを発動し、その場に大量の料理を並べた。

 

「こりゃおったまげた!面白ぇ人間がいたもんだ!

 なるほど、お嬢ちゃんが雷禅の恩人かぁ」

 

「酒は持って来とる者がおるようじゃから省いたぞ。ではな」

 

そう言ってヒノカミは雷禅の部下たちも連れてさっさと立ち去ってしまった。

旧友たちとの再会に気を遣ったのだろう。

雷禅たちは酒盛りをしながら昔話に花を咲かせ始めた。

 

「……こうして集まるのも、お前が喧嘩も人間喰うのも止めて隠居するって言いだしてからか」

 

「俺らも若かったよなぁ……」

 

「あの頃ぁ何考えてんだって思ったが、オレらも戦い辞めてのんびり暮らす内に、なんとなくわかった気がするぜ」

 

「……ま、突然こんなでかい喧嘩始めようとしていると聞いて面食らったけどね」

 

「けけけ。情けねぇことに、ガキに発破かけられちまってなァ。

 諸々にケリつけるつもりで、最後に一発ぶちかますことにしたのさ」

 

「さっきすれ違ったガキはやっぱテメェのか。よく似てやがるぜ」

 

「……集まって来たってこたぁ、テメェらも『そういうつもり』なんだろ?」

 

「「「おうよ!!」」」

 

雷禅の問いに応え、集まった妖怪たちが一斉に立ち上がる。

一足遅れて雷禅も立ち上がり、彼らの輪の中に入った。

何事かと視線が集まる。幽助とヒノカミも遠くから彼らの方を見ていた。

 

「よぉしオメェら!折角の祭りだァ!派手な大会にしてやろうぜ!!」

 

「「「おう!!」」」

 

「そんじゃ久しぶりに、さび付いた体に喝入れてみるか!!」

 

「「「せぇのぉ!!!」」」

 

そして全員が一斉に妖気を開放した。

 

「「「どわぁぁぁああ!!!」」」

 

その余波だけで周囲の妖怪たちが吹き飛ばされた。

凄まじい力だ。全員が今の雷禅と同等、下手をすればそれ以上の力を放っている。

大地が割れ、暴風が巻き起こり、一つとなった妖気が天を貫いた。

 

「こ……これほどの強者たちが……今まで隠れておったんか……!?」

 

「すげぇ……すげぇぜ!オヤジもコイツらも!!」

 

のけぞり冷や汗を流すヒノカミに対し、幽助は子供のように目を輝かせている。

実際彼は魔族基準でも人間基準でもまだ子供ではあるのだが。

 

「……スマン、コエンマ。

 息巻いては見たが、儂ゃ駄目かもしれん」

 

ヒノカミの呟きもまた、膨大な力の奔流に飲み込まれかき消された。

 

雷禅たちの妖気はまさに魔界全土に轟いた。

当然軀や黄泉もそれを察知した。特に黄泉の受けた衝撃は大きかった。

雷禅一人でも厄介なのに、それと同等以上の妖怪たちが大勢現れたのだからたまったものではないだろう。

国を解散する振りをして策を講じていたが、無駄になった。

すべて力づくで捻じ伏せられるだろう。

しかし黄泉は落胆と同時に、確かな高揚感を感じていた。

かつてまだ彼が弱小妖怪だった頃に持っていた、強者に挑むという感覚。

 

(試してみたい……自分の力を!!)

 

己の心と向き合った彼は、自嘲気味に呟き穏やかに笑った。

 

「やはり……オレも馬鹿の一人だったということか」

 

 

国家解散宣言から100日後。

遂に魔界統一トーナメントが始まろうとしていた。

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