こんな感じでいいのかな?
すでに未来が確定しているヒノカミを繰り返し予知し、未来の詳細な情報を集める。
本人が受け入れているとはいえ、幾度となく死という結末を突き付けるのは残酷なことだろう。
それでも妹の死を少しでも意味あるものにするためにと、エンデヴァーは提案した。
「そいつぁ俺らも考えたんだがな……やめた方がいいという結論になった」
「なぜだ?」
「リスクがあると判断したからじゃよ」
ヒノカミが割り込み、咳払いをする。
「例えば今回の予知。
儂はオール・フォー・ワンと戦い最期を迎えることになっておる。
じゃが、予知を変えるだけなら簡単なんじゃよ。
それよりも早く儂が自害すれば、戦いの場に儂が現れることはないからの」
「おい!」
「例えばの話じゃ。
儂とて無駄死にしたいわけではないし、
オール・フォー・ワンとの再戦を前に戦力を減らすような馬鹿はできぬ。
……もし儂が予知を覆すためだけに命を捨てるような馬鹿ならば『自殺』という結果が出ていたじゃろう。
しかし実際にはそうではないから『オール・フォー・ワンと戦って死ぬ』という予知になったわけじゃな」
「……何が言いたい?」
「これは我々が議論し至った仮説なのだが……私の予知は『予知を知った者がどう動くか』まで含めて予知している可能性がある」
予知を見たナイトアイが周囲の者に情報を明かすか否か。
話すとすれば誰に話すのか。
そして予知を聞いた者はどう動くのか。
ナイトアイの予知はこれらの過程を反映させた結果なのかもしれない。
即ち『一度見た予知は変えられない』のではなく、『本来は不確定だった未来が予知をしたことで確定してしまう』のではないか。
「だとすれば大筋は変えられんにしても、儂の予知に映っていない部分はまだ変わるかもしれんのじゃ」
ナイトアイの予知は遠い未来ほど穴抜けが多く、時間に誤差が生じる。
しかし今もう一度予知を行えば、不明だった部分もすべて埋まる。
そこに映る光景が想定より良いものであるという保証はない。
「現時点での予知では儂以外に身近な者の死は映っておらぬのじゃから、下手に未来を確定させるのは危険ではないかとな」
「なるほどな」
「それに、当時ナイトアイに約束したんじゃ。
『予知を頼むのはこの一度だけ』とな。
どんな結果が出たとしても、後になって掌を返すのもはばかられるでの」
「……なら俺から言うことは何もない」
その後も会議を続けて計画の問題点を洗い出し、学外と関わる行事では積極的に交流を行うということで話がまとまった。
会議を終え解散した後、エンデヴァーに呼び止められる。
「舞火」
ヒーロー名ではなく本名。
これは兄妹として、家族としての会話。
「教師になる前に、一度家に顔を出せ。
焦凍が会いたがっている。
雄英で再会するというなら構わんだろう」
「……兄上、儂は」
「今更距離を取っても無駄だ。
息子たちは、お前を慕っている。
どうあっても悲しませてしまうなら、せめてその前に一緒にいる時間を作ってやれ。
それが自分の最期を勝手に決めた、貴様の責務だ」
舞火は無言で頭を掻く。
入院中だった頃から兄の家に顔を出してはいたが、正月や甥姪たちの誕生日といった大事な日だけで、年に数回程度。
会う機会を減らせば存在は薄れていき、自分が死んでも悲しませずに済むだろうと考えていた。
しかしまだ慕ってくれているとは。
「……今更じゃが、入学祝くらいは送るべきよな」
今日の試験結果が通達されるのはおよそ一週間後。
同時に、オールマイトとヒノカミの雄英就任も公表される。
焦凍は疾うの昔に推薦での合格を決めているとはいえ、中途半端な状況にいる今の舞火が入学予定の生徒に接触するのは良くないだろう。
「10日後に、必ず向かう。
皆にそう伝えておいてくれ」
「わかった。反故にすることは許さんぞ」
エンデヴァー、轟炎司は背を向けて立ち去った。
「……とは言ったものの、どうしたものかの」
こういう祝い事の定番と言えばケーキだが、甥は和食派。
食べないことはないが、喜んでもらえなければ意味がない。
それに大切なイベントなのだから、形に残るものの方がいいだろう。
……今までそういった物を送ることを避けていたが、兄の言葉で踏ん切りがついた。
彼の兄には自分と同じサポートアイテムを送ったのだが、焦凍は武器に頼るタイプでもない。
「……ま、そのうち何か思いつくか」
楽観的に考え、気づけば一週間。
受験生たちに合否通知が届き始める。
緑谷と爆豪は当然合格。
爆豪が僅差で勝利し、首席での入学を決めた。
通知が届くまで連絡は絶っていた。
ヒノカミは早く後継者に会って祝福を伝えたいというオールマイトに急かされ、悩みを抱えたまま弟子たちの下へ向かった。
ナイトアイの予知の設定は『絶対可憐チルドレン』の『伊-八號』というキャラの台詞を参考にさせて頂きました。
『ナイトアイが何度も予知をしない理由』というだけなので、深読みする必要はない部分です。