『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第16話

各ブロックの試合は魔界に生えている巨大なテーブル状の台地を持つ超巨大植物『億年樹』の上で行われる。

台地の上にはさらに他の植物があり、山があり、湖がある。街一つ入るサイズだ。

そんな樹が何本も生えているエリアがあるというのだから、魔界というのはいちいちスケールがでかい。

 

準備ができたブロックから、次々に試合が始まっている。

他のブロックでは最大50人のバトルロイヤルだが……74ブロックだけは初めから二人しかいない。

 

「感謝しているよ。

 お前が残ってくれなければ、いきなり肩透かしを喰らうところだった」

 

「優勝したいなら余計な戦いは避けるべきではないのか?」

 

「今はそんなことより、戦いそのものを楽しみたい気分でな」

 

「……魔族、戦闘狂多すぎじゃろ……種族的なものか?」

 

「どうだろうな。魔界にもいろいろな種族がいるし、オレも自分の種族のことをよくわかっていないからな」

 

円形の台地の中央で、軀とヒノカミが向かい合う。

 

『それでは、間もなく74ブロックの予選を開始します!』

 

実況のアナウンスが届く。

優勝候補の一人と唯一の人間の参加者の、一対一の戦い。

128ブロックある予選の中でも特に際立っており、会場のモニターでも大きく表示され、多くの妖怪たちがその試合に注目していた。

 

「鬼相纏鎧」

 

ヒノカミは掌を合わせ、テリトリーを発動。武装錬金を具現化する。

小柄な人間の女が金属の鎧をまとい鬼の姿に変わる。

 

「赫烏封月」

 

続いて斬魄刀を実体化し、卍解を開放する。

 

「白星」

 

『シャー!!』

 

先に実体化していた滅却師十字を媒介に霊力の弓を構成。

武装錬金の隙間から霊界獣である白蛇がするりと姿を現し、弓の弦に噛みつく。

 

「血装、聖光気、OFA100%……!」

 

出し惜しみをして勝てる相手ではない。

ありとあらゆる能力を発動し、己の最強の状態で挑む。

 

「これはまた……見事なものだな」

 

「儂は人間なのでな……強大な妖魔に挑むならば、なりふり構ってはおれんのじゃよ!」

 

「ハハハ、そのナリで人間か。

 ……いや、その節操のなさは確かに人間だよ」

 

ヒノカミが変貌する姿はモニターで中継されており、会場ではどよめきが起きている。

 

『それでは……74ブロック、予選開始ィ!!』

 

「かぁぁぁぁああ!!!」

 

合図と同時に武装錬金の特性を発動。

周囲一帯から熱を奪って氷漬けにし、パワーに変えて軀に迫る。

彼女もヒノカミの右手の斬魄刀が特殊であると気付いているらしい。

熱吸収能力も相まって、接近戦では分が悪いと判断した。斬撃を躱しつつ距離を取る。

 

『シャァァァァアアアア!!!』

 

離れた軀にヒノカミが弓を持った左手を突き出すと、すかさず白星が弦を引いて矢を連射する。

直線と曲射を織り交ぜて囲うように射る。

 

「はぁぁぁああ!!」

 

軀が拳を振ると、その動きに合わせて妖気の弾丸が発射され矢を迎撃した。

生じた爆炎に紛れて接近するが、矢を撃ち落としてからも連続で弾丸が発射され続けている。

ヒノカミは霊子兵装を消し、斬魄刀を一時手放して、掌を叩いて結界を張り防いだ。

結界の上から何度も攻撃され、土煙が舞う。

弾幕が薄くなる様子はない。

このままではじり貧になると結界を解除して煙の中を移動し、気配を消して死角から迫るが察知され、更に距離を取られる。

 

(ちぃ、軀の戦闘スタイルは遠距離型か!?)

 

その推測は正解で、軀は膨大な妖力を使い、遠距離から妖力弾や特殊能力で圧倒するタイプ。

反面筋力は低く、接近戦は得意ではない。

それでも全力のヒノカミにも迫る腕力を持ってはいるのだが。

 

対してヒノカミは接近戦を得意としている。

周囲への被害は考えなくてよいので熱エネルギードレインを全開にしており、強化された身体能力で斬魄刀を振るう。

霊子兵装は決して弱いわけではないが卍解には遠く及ばず、何よりここ魔界では妖気が濃いせいで霊気が薄い。

霊子兵装の出番はなさそうだ。一度白星を鎧の中に引っ込ませる。

近付かせまいと無数に放たれる妖力弾を刀で斬り払い、拳で叩き落としながら強引に距離を詰める。

 

「ジェットバーン!!」

 

更に脚部から圧縮した炎を放って軀の目前まで一気に加速し、斬魄刀を振りぬく。

流石にこれには驚いたようで、斬撃を躱したが軀の姿勢が崩れた。

 

「New Hampshire SMASH!!」

 

斬魄刀を振り抜きそれを軀が躱した状況だったので、ヒノカミの右肩が軀の方を向いていた。

浮いた左手で軀と逆の方向にパンチを繰り出し、その反動で強引に軌道を変える。

 

「ぐぅっ!」

 

強烈なタックル。初めて軀に攻撃が当たった。

そのまま熱を吸収して相手を凍結させると同時に脚部から再び炎を吐き出し、軀を遥か後方にあった山に叩きつけた。

粉々に砕かれた岩に生き埋めにされる前に、ヒノカミは距離を取る。

軀は瓦礫に飲み込まれたが、この程度で彼女を倒せるとは思っていない。

案の定、すぐに瓦礫を消し飛ばして軀が姿を現したのだが。

 

「……土をつけられたのは久しぶりだ」

 

「マジかー……」

 

まるで堪えた様子がない。

無傷ではないが、彼女にとっては多少の打ち身程度でしかなかった。

熱を奪っての凍結攻撃もほとんど効果がなかった様子。

軀は膨大な妖力を纏っているため防御力が非常に高い。

 

(やはりまともにダメージを与えるなら、卍解で斬るしかない)

 

接近するだけでも一苦労だ。今と同じ手はもう通用しないだろう。

切り札はあるが、ここで切るのはまだ早い。

何とかもう一度近づこうと一歩踏み出したところで、軀の腕が空を斬った。

 

「っ!!」

 

戦場で無駄な行動をするはずがない。直感に従い彼女の腕の延長線上から逃れる。

 

「……空間が……!」

 

斬られていた。

軀の振るった腕の軌跡に沿って、遥か遠方に至るまで空間が切り裂かれ、世界がずれていた。

 

「そしてこの力を使うのも久しぶりだ。

 誇れよヒノカミ。貴様はオレの全力で叩き潰すに相応しい相手だ!」

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