『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第19話 宴会

雷禅、軀、黄泉。

 

魔界に覇を唱えんとした3国の元国王。

魔界統一トーナメントにおける優勝候補。

彼らは今……会場の外のチンケな屋台で管を巻いていた。

 

「人間の女……?雷禅、貴様そんなことで食事を絶っていたのか!?」

 

「んだよ、いいだろ?……ありゃあいい女だったぜ」

 

「しかし今更になって子孫を見つけて、何もしてないのに父親面か……普通にクズだな。

 修羅、ちょっとこいつに『自分の父親を見習え』と言ってやれ」

 

「うん!……おいオマエ!僕のパパを見習え!」

 

「……ぐう」

 

「ホントにぐうの音を出しおったぞコヤツ」

 

食事の在り方で500年も衝突していた彼らが、共に食事をしながら愚痴をぶつけ合うというあまりに奇妙な光景。

当然噂が広がり、それを聞きつけた者たちが集まってくる。

 

「おぅい、雷禅。メシ喰ってるって聞いたぞぉ。オレたちも呼べよぉ」

 

「ヒノカミぃ。屋台やってんだって?オレらの分も頼むわ!」

 

煙鬼を筆頭とした雷禅の旧友たち。

幽助と飛影と蔵馬、そして彼らと顔なじみの妖怪たちだった。

 

「しゃーないのー……この人数ではカウンターでは足りんな。

 ゴザとデカいちゃぶ台出してやるから、別れて座れ」

 

同じ妖怪でも好みがある。

人間と同じ食事の席と、人食い妖怪用の食事の席。

二つのちゃぶ台に次々と料理を実体化させていく。

カウンターにいた雷禅たちもそっちへ移動させた。

 

「なー、酒はねぇのかー?」

 

「本戦前に酒盛りするつもりか貴様ら!?」

 

「ちょっとぐらいいーじゃない、ねー?」

 

「おいおい孤光、流石に控えたほうが……」

 

「任せろぃ!オレ様とっておきの酒があるぜ!!」

 

「おい酎!それ『鬼殺し』だろ!?」

 

そして宴会が始まる。

絡まれてはたまらないと、ヒノカミは多めに食事を出しておき屋台へと戻る。

すると肉まんを配り終えた雷禅配下の東王が戻ってきていた。

 

「すまんな、配る分はコレで最後じゃからもう一回頼む。

 終わったらアレに混ざっても構わんぞ?」

 

「流石にアレに混ざるのは……」

 

「……そりゃそうか」

 

全員S級妖怪で、魔界における上澄みの中の上澄みみたいな連中がどんちゃん騒ぎしている。

主君である雷禅もいる。尻込みするのは当然だろう。

ちなみに幽助に連れてこられて雷禅と黄泉に挟まれている北神がすがるような眼でヒノカミと東王を見つめてきたが、目を逸らした。

 

「……で、反応はどうじゃ?」

 

「まぁまぁですね。

 雷禅様には物足りないでしょうが、私たちA級以下なら十分に腹が膨れますから。

 複数くれと言ってきた大食いの妖怪もいましたよ」

 

「嬉しい悲鳴じゃが一人当たりの数の上限を決めなかったのは失敗だったか。

 ……『霊界製肉まん』を儂のテリトリーで再現するかの?」

 

「それは何か間違っていませんか?」

 

今晩に明日の分の材料を霊界に受け取りに行く予定だったが、今のうちに連絡を入れて多めに用意してもらおうか。

そんなことを考えていると、ヒノカミの傍に空間の裂け目が現れた。

 

「……よぉ、ヒノカミ!」

 

「桑原!お主今日は学校ではなかったか?」

 

「人間界の方でちぃとデカい地震が来て臨時休校になってな。

 んで……時間があるなら連れてってくれと頼まれたんだよ」

 

「ヒノカミ」「や、やっほ~ヒノちゃん」

 

「コエっ……!?」

 

桑原の後ろから出てきたのはコエンマとぼたんだった。

ヒノカミは思わず叫ぼうとして踏みとどまる。

 

(貴様何を考えておる!?ここは魔界じゃぞ!?)

 

(すまんな。だがこの大会の結果で魔界と霊界の今後が決まるのだ。

 どうしても直接目にしておきたかった)

 

(コ、コエンマさまが行くって言うし、アタシもついていかなきゃってね~……)

 

「……おぉっ!?桑原!!

 それに……コエンマじゃねーか!!」

 

「っ!?馬鹿者!!」

 

幽助は慌てて自分の口を塞ぐがもう遅い。

幸いこの場にいる妖怪は幽助や雷禅の関係者ばかりだが、霊界に友好的なのは雷禅本人とその部下たちだけだ。

騒いでいた妖怪たちが静まり返りコエンマを見つめる。黄泉はわずかだが妖気が漏れ出ていた。

 

「……失礼する」

 

コエンマは覚悟を決めた表情で歩き出す。

そして妖怪たちの間に座り、ちゃぶ台の上の料理に手を伸ばした。

 

「おいコエンマ、そっちは人食い用の……」

 

「わかっているさ」

 

そしてコエンマは人肉風料理のシュウマイを掴んで口に入れた。

 

「「「……」」」

 

全員が無言で見つめる中で、コエンマは咀嚼し、飲み込んだ。

 

「……『同じ釜の飯を食う』。これがワシの第一歩だ。

 魔界を拒絶し魔族を利用してきた我ら霊界が、勝手な都合で掌を返そうというのだ。

 姿勢で覚悟を示さねばならぬ。

 ……この程度のことしかできぬがな」

 

「……えぇい!!」

 

ぼたんもまた意を決して、コエンマに続き妖怪用の料理を頬張る。

目を強く閉じ、脅えるように噛み、飲み込む。

 

「……アレ?意外といけますねコレ」

 

「……あまりおススメはせんが、人間が食っても問題ないようにしてあるわい。

 というか……儂自身が食って味も覚えんと再現できんからの」

 

しばし沈黙が続くが、誰がきっかけだったのか。

やがて妖怪たちが爆笑しはじめた。

 

「……だっはっはっは!こいつぁしてやられた!

 霊界の大将は肝が据わってやがらぁ!」

 

「なるほど、一緒にメシ喰えば仲間だな!

 おぅい、そっちの人間用のメシもよこせ!」

 

「これでオレたちゃダチってわけだ!」

 

「……おい、まさかオレもか?」

 

「野暮なこと言うなよ黄泉。

 気風で負けたとあっちゃあ、オレら魔族の沽券に関わらぁ」

 

「……うっし!オレもそっちのメシ喰ってみるか!」

 

「やれやれ、オレも久しぶりに手を出してみましょうか」

 

「よぅし、お前等も飲め!」

 

「流石に酒はやめぃ!貴様らの酒は強すぎる!!」

 

「聞いてくれ棗ぇ!アンタに捧げる『愛の歌』ぁ!!」

 

「いいぞ~あんちゃん!!」

 

「そこの酔っ払いを止めて頂戴!!」

 

「「「ぎゃ~~~っはっはっは!!!」」」

 

――――……

 

 

『え~、間もなく本戦の開始予定時刻です。

 それに先立ちまして大会主催者である浦飯選手からの挨拶が……え?いない?

 ……他の選手たちと外で宴会やってる!?

 雷禅選手と軀選手と黄泉選手もですか!?

 ちょっとスタッフの皆さん!

 あのバカたちを連れて来てくださぁ~~~い!!』

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