『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

126 / 790
第21話 異次元砲

邪眼を持つ飛影に確認してもらったところ、人質は全員会議室の中央に集められているらしい。

少ない人員で大勢を監視しようとすればそうするしかないだろう。

だがそれでは人質の意味がないのだ。ヒノカミにとっては。

 

「ほいっと」

 

「!?侵入者だ!」

 

ヘルメスドライブで人質たちの中央に転移した瞬間、ヒノカミは掌を叩く。

テリトリーにより敵と人質が区切られた。

敵はヒノカミに向けて銃火器を放つが結界に完全に防がれている。

そして更に、会議室の隅に桑原が開いた次元の裂け目が生じる。

テロリストたちもそれに気づいたが、中から出てきた者の放つ妖気を感じて引きつった声を上げた。

 

「なんだぁ?マジでろくでもねぇ奴しかいねぇじゃねぇか」

 

「最初からそう言っているだろう。

 ヒノカミや桑原と比較してやるな」

 

「退屈な仕事だ……だがコイツらが我ら魔族を利用してきた連中なのだろう?

 ……憂さ晴らしにはなるか」

 

「雷禅さま!?軀さまに、黄泉さままで!?」

 

ぼたんが思わず声を上げ、霊界の人間もテロリストたちも、その3体の妖怪が何者かを把握した。

 

「ま、魔界の三王だと!?」

 

咄嗟に銃を向けた者は即座に殺気を込めた妖気を返され、恐慌状態に陥る。

そして目の前の現実を否定するかのように引き金を引いた。

 

「あ、やべ」

 

雷禅が羽虫を払うように腕を振ると銃撃だけでなく、放たれた衝撃波で引き金を引いたテロリストまで爆散してしまった。

 

「気にせんでもよいぞ。どうせ全員死罪じゃからの」

 

「あぁ、そうだったな。ならいいか」

 

「だが折角なら弄ばせてもらいたいものだな。

 一人でも多く、一秒でも長く、魂にまで恐怖を刻み込んでから殺さねば気が済まん」

 

「構わんぞ。僅かでもお主らからの好意が得られるならそいつらの命なぞ安い出費じゃあ。

 霊界の諸君ー。気が弱い者は目を閉じておけー」

 

虐殺が始まった。

中に入れてくれと結界を叩き泣き叫ぶ者もいたが、無視した。

そしてこの部屋にいた十数人のテロリストはすぐに肉塊と化した。

3人は部屋の内側からのバリケードを壊し、他の場所にいたテロリストたちも殺しに行く。

10分ほどで戻って来た。宣言通り、黄泉は随分と時間をかけたらしい。

 

「この程度で錯乱するとは、やはり殺される覚悟なぞできておらんかったようじゃな」

 

「くだらねぇ仕事だったぜ。

 おいヒノカミ、打ち上げのメシには色付けろよ?」

 

安全が確保されたコエンマは、真っ先に頭を下げに行く。

 

「軀殿、黄泉殿。……ヒノカミがすまん」

 

それだけで彼の労苦が偲ばれるというものだ。

 

「コエンマ。アレの手綱を握れていたのなら、お前は間違いなく賢王だ」

 

「……まさか本気でお前にシンパシーを感じるとは思わなかった」

 

「どういう意味じゃ貴様ら」

 

「「「そういう意味だ」」」

 

居合わせた霊界関係者たちは魔界最強クラスの妖怪を間近で見て戦慄し、彼らと親し気に話すコエンマを尊敬した。

これでコエンマが彼らと友人になったという噂は真実だと、霊界全体に広まることだろう。

黄泉は友人かちょっと怪しいが、彼と同等の実力者で本当の友達になった者が大勢いるので同じことだろう。

 

「これで残るは、異次元砲じゃな」

 

「っ!そうだ、そちらは!?」

 

「蔵馬たちに任せている。我らも向かおう」

 

ヒノカミが人質を守り、雷禅たちが暴れて注目を集めている隙に、異次元砲の解除を試みるのが幽助たちの役目だった。

 

「間もなく特防隊の者たちが突入してくるはずじゃ。

 皆は彼らの指示に従い、一時避難してくれ」

 

「あ!コエンマさまが行くならアタシもそっちに!」

 

コエンマとぼたんを加えた6人で幽助たちのもとへ向かうが、彼らは頭を捻っていた。

 

「……おぉコエンマ。無事だったか」

 

「スマン幽助。手間をかけさせた」

 

「その様子では解除はまだか?」

 

「あぁ。多分このボタンのどれかだとは思うんだが……」

 

桑原が見つめる先には、円柱状の小さな台座と赤・青・黄の3つのボタン。

 

「間違って押せば、多分ドカンだ」

 

「ふむ、エネルギーの充填は止めたんじゃろ?

 そのくらいならいっそ発射させても良いかもしれんな。

 儂のテリトリーで受け止めればよい」

 

彼女のテリトリーは空間ごと遮断する能力。

それを貫けるとしたら同種の能力である桑原の次元刀か軀の空間切断くらいだ。

流石にフルパワーの砲撃を受け止めようとすればサイズか持続時間が足りなくなるが、まだ充填開始から6時間程度の今なら大した威力ではないだろう。

 

「……ヒノカミ。

 お前は一瞬なら、巨大なテリトリーを作ることができると言っていたな?」

 

「む?そうじゃが。

 維持するのが苦労するだけで、十数秒程度ならそれこそ1km以上でも……まさか?」

 

「あぁ……皆に頼みがある。

 ……異次元砲を破壊してくれ」

 

つまりコエンマからの願いは、異次元砲を破壊した時に生じる爆発をヒノカミに抑えてほしいということ。

ヒノカミ自身はテリトリーの内側にいなければならないが、彼女の防御能力の高さは周知の事実。

爆発による熱も鎧で無効化するので、おそらく怪我すらしないだろう。

 

「いいのか?霊界の貴重な兵器なのだろう?」

 

「いつか霊界を敵視する者が魔界のトップに立つ可能性を思えば、確かに手放したくはない。

 だが……今は邪魔だ。

 今回のような手合いが余計な行動を起こす方が、霊界を憎む者を増やし、魔界の王になる可能性を高めてしまう。

 それに……皆が敗れるほどの敵であれば、この程度の兵器ではどうにもならんだろう?」

 

「……ククク、確かにそうだ。

 オレたちがこんなおもちゃで殺されるはずもない」

 

「……よっしゃ!いっちょ派手にやってやろうぜ!みんな!」

 

「頼むから儂に当ててくれるなよ?

 ……お主らの本気だと、流石に死ねる」

 

幽助の霊丸を合図に、一斉に放たれた攻撃。

それが異次元砲に直撃する瞬間、鎧をまとったヒノカミがテリトリーを発動した。

その爆発は審判の門の一角を削り取るが、解除されたテリトリーから現れたのは炎を纏う無傷の鬼。

 

霊界を襲ったテロリスト集団は全滅。

その協力者も一斉に摘発され、コエンマの体制はより盤石となった。




次回、第四章完結です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。