『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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シャーマンの世界
第1話 再誕


「……もはや私に出来る事は何もありまセン。

 彼の肉体は、すでに死亡しているのですカラ」

 

ハオの手下、ペヨーテのオーバーソウルにより胴体を貫かれた蓮は即死だった。

駆けつけた葉のチームメイト、医師のファウストはそう診断した。

 

「てめェ蓮はまだ死んでねェっつったじゃねェかよ!!!」

 

「あわてんなホロホロ!!」

 

蓮のチームメイトであるホロホロが葉に掴みかかるが、それでも葉は動じない。

 

「蓮の魂がここにいる以上、蓮はまだ死んじゃいねぇ。

 なんとか出来る奴がいる……そうなんだろ?ミッキー」

 

「あぁ、先ほど連絡した。

 ケリが付き次第、すぐにこちらに向かうということだ」

 

葉の父親である幹久……通称ミッキーが答えた。

かつて生まれて間もないハオを逃がした罪悪感から修行に没頭するあまり、息子から家族と認識されなくなってしまった悲しき修験者である。

 

「おい……まさかそりゃあ、X-LAWSのメイデンじゃねぇだろうな!?

 あいつらに借りを作る気か!?

 お前がハオの双子だって知られたらどんな要求されるかわかったもんじゃねぇぞ!?」

 

「違うよ。今呼んだのは僕の……麻倉家の関係者だ。

 彼もシャーマンファイトに参加していてね。

 連絡をしたときには、丁度試合開始前だったらしい」

 

「もう終わったがな」

 

「「「どわぁっ!!?」」」

 

いつの間にか彼らのいた河原に立っていた男……機械でできた鬼のような鎧を身に着けた巨漢に驚き、葉たちは椅子代わりにしていた石の上から一斉に転げ落ちた。

 

「やぁ、来てくれてありがとう。

 突然呼びつけてすまないね。

 ……紹介するよ。チーム『アルケミスト』のリーダー、ヒノカミだ」

 

「よろしくの。

 『ふんばり温泉チーム』、『THE・蓮』の諸君」

 

「は、はぁ……よろしく」

 

いかつい外見に反し、どうやら気さくな人物であるらしい。

 

「シャーマンファイトでは敵同士。

 試合中で命を落とすならば自己責任じゃが、無法者からの奇襲の結果とあれば話は別。

 個人的に麻倉には恩があっての。

 ミッキーの頼みじゃ。その者の蘇生を引き受けよう」

 

大きな岩の台の上に寝かせられている蓮の遺体に近付き、胸に手を押し当てる。

 

「ファウストと言ったか。お主も医者ならばよく見ておけ。

 これがオーバーソウルによる治療・再生・蘇生術の極みじゃ」

 

ヒノカミの鎧の隙間から膨大な巫力が噴き出し、彼の腕、掌を伝って蓮の死体へと流れ込む。

 

呪禁存思(じゅごんぞんし)不可死犠(ふかしぎ)

 

「っ!傷が!」

 

蓮の傷を塞いでいたホロホロの氷が砕け、まるで逆再生するかのように修復されていく。

僅か数秒で完全に塞がり、蓮は生前の姿を取り戻していた。

 

「……フン!」

 

「ブホァッ!?」

 

「「蓮ー!?」」

 

蓮の傷が治った直後、なぜかヒノカミは拳を握り彼の腹を殴った。

 

「ゲホッ、何をするか貴様ァ!!」

 

「「蓮ー!!」」

 

「かかか。気付けじゃ気付け。

 お主のせいでないとはいえ、仲間たちに心配をかけたのは事実。

 そのくらいは受け入れておけ」

 

微妙に締まらないが、彼は宣言通り蓮の蘇生を成し遂げて見せた。

復活した彼はチームメイトのホロホロとチョコラブにもみくちゃにされている。

 

「ウェッヘッヘッヘ。ありがとな。ヒノカミっての」

 

「ちっ……誰だか知らんが、この借りは必ず返す!」

 

「その借りが『恩』の方を指すなら、ミッキーに返してやれ。

 彼が頼まねば儂は動かんかったよ。

 ただ借りが『恨み』の方なら、二次トーナメントまで勝ち残ることじゃな。

 一次トーナメントでは主らとは当たらんでの」

 

ヒノカミが立ち上がり、汚れを払うかのように何度か掌を叩くと、彼の手元に金属のプレートが出現していた。

 

「では儂はこれで失礼する」

 

「えぇ?折角だし、ミッキー特製バーベキュー、一緒に食べていかないかい?」

 

「チームメイトを置いてきてしまったからの。心遣いは嬉しいが、またの機会にな」

 

「そっかぁ。じゃあまたな。ウェッヘッヘッヘ」

 

「……あぁ」

 

「っ!消えた!?」

 

ヒノカミはプレート……ヘルメスドライブを発動し、来た時と同じように転移能力で仲間の元へと戻った。

 

「ただいま」

 

「うぉっ……とぉ。やっぱ何度見てもびっくりするぜ」

 

「おかえり、お姉ちゃん」

 

「これこれ、儂の性別は秘密じゃろ?」

 

ヒノカミはチームメイトの幼い弟妹……ルドセブとセイラームに迎え入れられる。

二人はまだ8歳と6歳。これに加えて自分まで女と知られれば侮られるからと、ヒノカミはシャーマンファイト開催から人前ではずっと武装錬金を具現化していた。

 

「でもご飯の時くらいは脱いでほしいけどね」

 

「かかか……その様子では試合の後は何も起きなかったようじゃな」

 

「あぁ。あのねぇちゃんたち、あんだけこっぴどくやられたんだ。

 ハオの手下だかなんだかしらねぇが、これに懲りたらオレたちに手ぇ出そうなんて思わねぇさ!」

 

「やったのはゴーレムとお姉ちゃんだよ、お兄ちゃん」

 

「虎の威を借る狐になるのは感心せぬなぁ」

 

「うぐっ」

 

やんちゃ坊主なルドセブは、おっかない姉とクールな妹に突っ込まれ声を詰まらせる。

 

「かかか。何はともあれ、メシにしよう」

 

そういってヒノカミは手を叩き、テリトリーでテーブルと料理を具現化する。

 

「待ってましたぁ!」

 

「もう、そんなにポンポン使って……本当に巫力は大丈夫?」

 

「なぁに、まだまだ余裕じゃ」

 

ハオの手下である花組の3人を一掃し、シャーマンファイトの試合にて対戦相手のチーム『マリアッチ』を瞬殺し、直後に蓮の蘇生を行い、それでも彼女の巫力は底を見せることはない。

死から蘇る度に増大するという巫力の特性上、幾度となく転生を続ける彼女の巫力の所有量は、シャーマンファイトに参加している誰よりも多いのだから。




呪禁存思(じゅごんぞんし)不可死犠(ふかしぎ)

死神の世界の『回道』、霊界と魔界の世界の『霊波動』、当人の医術の知識。
そして超・占事略決を学んだことで完成した、ヒノカミの回復術の集大成。
怪我の治療、四肢や臓器の再生、肉体の活性化、死者の蘇生を行う。
肉体の活性化による若返りは一時的ではないので、使い続ければ老化しなくなる。
また、魂が健在ならば損傷の激しい遺体からでも蘇生できる。
ただし霊子が薄い世界では魂の消滅が早いので蘇生可能な時間が短く、霊子が濃い世界では魂を傷付ける手段が多数存在するため、蘇生可能条件は意外に厳しい。


第五章『シャーマンの世界』編、開始します。
シャーマンファイト本戦途中からの開始となります。
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