『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第13話

「オールマ……うぷっ」

 

「夜中に叫ぶな、出久。

 ……最近はここにも人目が増えてきたからの」

 

緑谷と爆豪に通知が届いたことを確認した後、二人を海浜公園へと呼び出した。

ヒノカミ達が訓練の一環で清掃を行い、すっかり公園からはゴミが消え去っていた。

これが話題となり、地元民が頻繁に足を運ぶようになってしまった。

人気がないので密会に丁度良かったが、これ以上使い続けるのは無理だろう。

だがこれからは雄英で気軽に顔を合わせられる。

特に不都合はない。

 

「つーか、アンタはともかくオールマイトが教師か……大丈夫か?」

 

「辛辣!なんで私の評価そんなに低くなってるの!?」

 

「教員手続きの書類を締め切りギリギリに提出するような輩じゃ。

 何度も顔を合わせれば、化けの皮も剝がれるというものよ」

 

「……オイ、ワン・フォー・オール継承ん時に『時間無い』っつってたのはそれじゃあねぇよな?

 ……露骨に目ぇ逸らすな!」

 

スパルタではあるが、ヒノカミの教えは優秀だと身をもって体験済み。

時折勉強も見てくれたので、頭がいいこともわかっている。

彼女なら優秀な教師になると二人は疑っていない。

対してオールマイトは何というか……ヒーロー活動以外ではどこか抜けている。

それも愛嬌であり人気の理由の一つではあるのだろうが、実害を受ける立場になると笑い事で済ますわけにもいかなくなる。

 

「ま、何はともあれ合格おめでとう。

 しかもワンツーフィニッシュ!やってくれるぜ!」

 

「ハッ!当然だっつの!」

 

「あ、ありがとうございます!……でも……」

 

緑谷の笑顔が少しずつ崩れていき、やがて俯いてしまう。

 

「最後の最後に、失敗して……やっぱりまだ、僕が継承するのは早かったんじゃないかって……」

 

OFAの制御失敗の代償は、腕と脚の骨折。

ヒーローが助けを求める人より先に倒れるようなことはあってはならないと、ヒノカミから散々言い含められている。

緑谷は、こんな体たらくの自分が本当に合格して良かったのかと揺らいでいた。

 

「……不安になる気持ちはわかるが、ひとまず第一関門は突破できた。

 今は手放しで喜んでおけ」

 

「はい……」

 

落ち込む緑谷を慰めた後は、雄英入学までにどう過ごすかという話になった。

ヒノカミは二人に、過剰な訓練を避けるよう通達。

受験に備え限界まで自分を追い詰めていたが、流石に体に負担が溜まっているだろう。

軽く汗を流す程度にとどめるよう厳命した。

特に緑谷は、絶対に個性を使わないこと。

すでに制御できるようになっているが万が一もあり得る。

リカバリーガールがいない状況で個性を暴発させれば十分な治療が受けられず、最悪死ぬ可能性もある。

 

「アンタらはどうすんだ?」

 

「この馬鹿は教師になるにあたり講習を受けねばならんでの。

 主らの入学まで缶詰めじゃ。

 儂はもう済ませておるんじゃが、私用があってしばらく……あー……あ?」

 

「「?」」

 

会話の途中で言葉を詰まらせたヒノカミ。

暫く二人を見つめたかと思えば、何か思いついたようで表情が変わる。

 

「そうか、同年代に尋ねるのが一番よな。

 すまんが主ら、儂の相談に乗ってくれんか?」

 

未だに決まっていない、甥っ子への合格祝。

事情を説明し、何か良い案はないかと知恵を求める。

 

「ちなみに、主らだったら何が欲しい?」

 

「僕なら、限定のヒーローグッズかな……」

 

「テメェまだグッズ集め続けとったんか。

 俺は趣味の登山用品だな。いいモンは金がかかる。

 ……あー、だがこれから趣味に使える時間もなくなるだろうから飾りになっちまうか」

 

「ヒーローグッズと趣味用品か……どっちも喜ぶとは思えんなぁ……」

 

父がナンバー2ヒーローなのでヒーロー関連の物なら容易に手に入れられるし、そもそもそこまで興味を持っていない。

彼は最初からヒーローを『憧れる』ものでなく『なる』ものと捉えている。

だからヒーロー目指して訓練することに時間を割き、他にこれといった趣味を持たない。

 

「だったら、その二つを併せたものなんてどうかな?」

 

会話に割り込んできたオールマイトに視線が集まる。

 

「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツとコラボした、サバイバルキット。

 以前仕事で一緒になったとき、お礼にと一つ譲り受けてね。

 山岳救助のプロヒーローが監修した、結構ガチな作りの奴。

 限定品だからよほどの彼らのファンじゃなきゃ持っていないと思うよ?

 それを私とヒノカミからということで、どうだい?」

 

「それじゃ!助かったぞオールマイト!」

 

サバイバル訓練はヒーローなら必須の項目。

学校の授業でも道具の貸出はするが、自前の物があるならそれが一番だ。

貰い物をそのまま横流しするような形になってしまうが、気持ちが籠っているなら良しとヒノカミは勝手に納得した。

 

「そうだ、緑谷少年と爆豪少年の分も手配しよう。

 私からの合格祝いだ。

 すぐに用意はできないけど、入学までには届くようにするよ」

 

「ありがとうございます!」

 

「見直したぜ、オールマイト」

 

「HAHAHA!……私の評価、見直されるほど下がってたのね……」

 

心からの感謝と称賛を受けて凹むナンバー1ヒーロー。

解散後、ヒノカミはオールマイトから目当ての物を受け取り、翌日兄の家へと向かった。




オールマイトによるマスキュラー討伐と、プッシーキャッツとの関わり。
これは彼がウォーターホースを救出した際のものです。
彼らは負傷し引退しましたが一命は取り留めました。
良かったね洸汰くん。

年齢以外に弱体化していないオールマイトがAFOの目を引くために大暴れし続けたので、結構な数の悲劇が回避されています。
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