『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第五章も1日2回投稿……やれるかな?


第2話

「いっただっきまーす!」

 

「おう、どんどん食え!

 若いうちはとにかく食って食ってでかくなるんじゃ!」

 

「お昼もあれだけ食べたじゃない……せめて栄養バランスは考えてよねー?」

 

シャーマンファイト1回戦では、姉が相手選手3人を瞬殺したので何もしていない。

試合前にハオの手下を名乗る3人の女性から襲撃を受けるという事態もあったがこれも同様。

そして試合後に昼食を取ってから今に至るまではこれと言ったイベントは何も起きていない。

念のため再度の襲撃に備え、3人で固まって動かず周囲を警戒していた。

つまり運動量はほぼ皆無。なのによく続けてこれだけ食べられるものだと、セイラームは兄に呆れていた。

 

満天の星の下、姉と兄と自分の3人で囲む食卓はまるでキャンプのよう。

ただし姉はこの場にそぐわぬ鎧姿で、料理もテーブルもすべて姉がテリトリーという能力で作り出したものだが。

自分の巫力で作った料理を食べても当然巫力は回復しないので、作れば作るだけ消耗する。

一応補給手段はあるが、どうせ浪費するならレストランでも開いてもらいたいものだ。

味はプロ級、準備は一瞬、材料費ゼロ、数日すれば消滅するので廃棄の手間すら必要ない。

大儲け間違いナシである。

 

「どうした、セイラーム?

 好きなものを好きなだけ食べてええんじゃぞ?

 リクエストがあればなんでも言え!」

 

「あ!オレ、チョコレートフォンデュっての食べてみたい!」

 

「任せろ!ゴーレムよりデカいフォンデュタワーをこしらえてくれるわー!」

 

「巫力の無駄遣いもいい加減にしてー」

 

母がいれば止めてくれただろうが、シャーマンではない母をこの地に連れてくるのは危険だからと故郷に待たせている。

なのでストッパーがおらず、シャーマンファイトが始まってから姉の暴走が日に日に過激になっているのだ。

自分も恩恵を受けている身だが、この姉はとにかく子供に甘い。

聞けば今日の昼の試合の後で急に立ち去ったのも、自分たちと同様にハオの手下から襲撃を受けた他の参加者を助けるためで、相手も自分たちより年上だが未成年だったとか。

亡き父の友人であるミッキーの頼みだから、断りづらいということもあるだろうが。

 

「ウメェー!!」

 

「ここにいるのは儂らだけじゃからな。

 試そうではないか……禁断の『二度漬け』を……!」

 

「ニドヅケ!?」

 

「あーもう!駄目って言ったじゃない!」

 

これは自分も早々に食べ終えねば姉は止まりそうにない。

セイラームも食事に手を伸ばすが、背後から聞こえた電子音に振り向く。

 

「……ゴーレム?」

 

ゴーレムは3年前に殺された彼らの父、カメル・ミュンツァーが遺したものだ。

シャーマンファイトに参加しているが、セイラームたちはまともなシャーマンではない。

ゴーレムに蓄積された多数の知識と姉の指導により辛うじてシャーマンと呼べる存在になり、ゴーレムの圧倒的な力で敵を蹴散らしてきただけ。

霊が見えることとゴーレムを操縦できること以外は、普通の子供と大差がない。

そのゴーレムが、また何か新たな情報を開示してきた。

 

「セイラーム?」

 

セイラームは兄の声を無視してゴーレムによじ登り、胸部ハッチを開けて操縦席に座る。

異常事態だと察したルドセブとヒノカミもゴーレムに近付きハッチから中を覗く。

 

「……これって……!?」

 

スピリットサーチシステム。

目的とする魂を探し当てる機能。

ゴーレムが見つけ出したのは彼らの父、カメルを殺した者。

 

「コイツが、父ちゃんを……!」

 

仇の名は『チョコラブ・マクダネル』。

つい先ほど顔を合わせた『THE・蓮』のチームメイトだったシャーマンだ。

 

「……ミッキー……!」

 

ミッキーはカメルの友人だった。そしてシャーマンでもある。

霊能力があれば友人を殺した犯人などすぐに見つけ出すことができたはずだ。

 

(知っていて、隠しておったな……!)

 

彼はハオを倒すために息子である葉と同じく『THE・蓮』の面々も鍛え上げようとしている。

当然、チョコラブも。

彼はヒノカミに助けを求めていながら、仇の存在を黙っていたのだ。

 

「許せねぇ……ぶっ殺してやる!!」

 

「待てルドセブ」

 

「なんで止めるんだよ、姉ちゃん!!」

 

「チョコラブは仇じゃが、蓮たちは儂らとは無関係。

 彼らをも巻き込み殺せば、次は我らが殺人鬼じゃ」

 

「……でも!!」

 

「じゃから殺すのはチョコラブだけじゃ」

 

「「!?」」

 

ミッキーはヒノカミの思考を読み誤った。

今がどうだか知らないが、カメルを殺した当時のチョコラブは極悪な強盗殺人犯。

因果応報。自業自得。ヒノカミは復讐を否定しない。

やったのだから、やり返す。

 

「奴が他の者たちから離れ、一人になった隙を突く。

 タイミングは儂が見計らう。お主らはゴーレムの起動準備をしておれ」

 

「……おう!」「……!」




ヒノカミ:元錬金戦団亜細亜支部技術局長

バスターバロンの知識すら持っているヒノカミが色々手を加えた結果、見た目は同じですがゴーレムの中身がとんでもなく進化しています。
原作では一人乗りなコクピットに強引に二人で座ってましたが、今作では二人に合わせて複座式。
そして母親が存命ということはゴーレムの中には……。

武装錬金の鎧と、錬金術の技術を組み込んだゴーレムのコンビ。
故にチーム名は『カバラーズ』ではなく『錬金術師(アルケミスト)』です。
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