『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第4話

チョコラブが倒れ、彼の死を確信したと同時にヒノカミはテリトリーを解除する。

 

「貴様ァ!!」

 

蓮とホロホロはチョコラブを打ち抜いたまま硬直しているゴーレムに飛びかかるが、ヒノカミが立ちはだかる。

 

「仲間を殺された主らには、我らに復讐する権利がある。

 殺されてやることはできんが、受け止めよう。

 来るがいい。これが主らの最後のシャーマンファイトじゃ」

 

「上等だテメェ!!」

 

氷使いのホロホロが氷の剣を作って鬼の鎧へと斬りかかるが。

 

「『赫月』」

 

斬魄刀により氷の刀身が一瞬で蒸発した。

 

「炎の剣!?コイツ、炎を使うのか!?」

 

「だけではないがな」

 

更に武装錬金の効果を発動。

周囲一帯から熱を奪い凍結させていく。

 

「氷も!?」

 

「正確には、凍結じゃ。

 熱を奪い熱を操る。それが儂の戦闘スタイルよ」

 

「ならばっ!」

 

続けて蓮が放つ技『刀幻境』。

ヒノカミの凍らせた台地を砕いて現れた無数の刀剣がヒノカミに殺到する。

 

「脆いな」

 

「何だと!?」

 

ヒノカミの鎧に傷一つつけることもできず全て砕け散った。

 

「くっ!ゼルエル!!」

 

リゼルグが俊足の天使をヒノカミへと向かわせようとするが。

 

「貴様は引っ込んでおれ!」

 

「「!!?」」

 

「っ!そんな!?」

 

一瞬で天使の目の前に移動したヒノカミが拳を振り抜く。

その一撃で天使は粉砕され、衝撃波が背後の森と大地を抉り取った。

 

「儂が受け止めるのはチョコラブの仲間たちだけじゃ。

 貴様には我らを否定する権利はないぞ!正義を騙る復讐者風情が!」

 

「っ!ボクのことを……!」

 

「受け止め……テメェ手ェ抜いてやがるのか!?」

 

今の速さで移動できるのなら、ホロホロの攻撃も蓮の攻撃も避けることは容易だったはず。

そしてヒノカミは二人を迎撃するだけで反撃していない。

 

「如何にも。儂は冗談は言うが下らぬ嘘はつかぬ。

 我らの仇はチョコラブのみ。

 たとえ奴の仲間であろうと主らを手にかけるつもりはない。

 そして奴の仲間である主らの怒りを全て受け止める義務が、儂にはある」

 

「そいつは、オイラも攻撃していいってことか?」

 

声に反応して振り返る。

ハオの手下を食い止めるために残った竜を連れて、葉が戻ってきていた。

竜はチョコラブの遺体の傍にいるミッキーとファウストに駆け寄る。

 

「……無論じゃ。存分にぶつけてこい」

 

「そうかぁ、やっぱオメェ悪い奴じゃねぇな。……残念だ」

 

「儂もじゃよ」

 

オーバーソウル『スピリット・オブ・ソード』。

『フツノミタマノツルギ』と刀剣『春雨』を媒介とし、侍の霊である阿弥陀丸が変化した巨大な刀が、ヒノカミへと振り下ろされる。

対するヒノカミは敢えて始解を解除。

斬魄刀をただの真紅の刀に戻した上でこれを受け流した。

 

「っ!?うおおぉぉぉおお!!」

 

ヒノカミはその場から一歩も動かず、剣戟を全て捌き続ける。

 

『くっ……葉殿!この者の剣技!』

 

「あぁ、とんでもねぇ技量だ。

 オーバーソウルの力じゃねぇ、技だけでいなされちまってる……!」

 

ただでさえ扱いづらい巨大すぎる刀ではヒノカミの剣の結界を超えることはできない。

ならば技ではなく力で。

葉は距離を取り、刀を頭上に構える。

ヒノカミの言うことを信じ、避けるとは考えない。

全身全霊を一撃に込める。

 

「阿弥陀流『真空仏陀斬り』!!」

 

巨大な真空波がヒノカミに向かうが、こちらも刀を頭上に構える。

 

「『月牙天衝』」

 

同じく放たれた巨大な斬撃が葉の斬撃をかき消し、彼の横を通って遠方にあった山を両断した。

 

『馬鹿な……っ!』

 

「参ったなぁ……ホントに強ぇや」

 

葉の巫力値は約1万。

大会参加者の中でも上から数えた方が早いほどの数値だ。

一度蘇生された蓮もそれに匹敵するだろう。

しかしその二人が挑んでもヒノカミには手傷すらつけられない。

 

「なぁ……なんでオマエみたいな強い奴が、麻倉に下手に出たりするんだ?」

 

「一つは言った通り、儂個人が麻倉に恩があるということ。

 そしてもう一つは、ミッキーがカメルの親友だったからじゃ。

 カメルがチョコラブに殺された後、大黒柱を失ったミュンツァー一家のために色々と手を尽くしてくれた恩もある。

 じゃがな……儂らは彼のように『必要だから』と割り切ることはできん」

 

「そっか。……オイラはミッキーからなんもしてもらってねぇんだけどな」

 

「……おい、そこの駄目親父」

 

「うぇぇっ!?流れ弾かい!?」

 

仲間を殺されたと言うのに、葉は仲間を殺したヒノカミとヘラヘラと笑い合う。

だが仕方がない。

葉は元々怒りや憎しみという感情を持たずに楽に生きることを信条としている。

ヒノカミは復讐者ではあるが道理をわきまえているし、覚悟も持っている。

チョコラブにも殺されるだけの理由があり、彼自身もそれを受け入れていた。

そして葉が感じた違和感。

 

「……オマエさ、あんましチョコラブの事恨んでないんだろ?」

 

「あぁ。儂はただあの子らの恨みを晴らしてやりたかっただけじゃ」

 

「「「!?」」」

 

「じゃあチョコラブの蘇生もできるのか?」

 

「可能じゃ。すでに成仏してしまった霊体まではどうにもならんが、お主らの中にはイタコがいるのであろう?」

 

「「「!!?」」」

 

「やっぱな……オマエ最初から、チョコラブ生き返らせるつもりだったんだろ?」

 

「『生き返らせることもできるようにしていた』だけじゃ。

 決定権は父を殺されたあの子らにある」

 

「そっか……んじゃ、みんなでアイツらに頭下げようぜ」

 

葉はオーバーソウルを解除した。

ヒノカミが道を開け、未だ動かないゴーレムへと歩み寄る。

彼の仲間たちは困惑しているが、『冗談は言うが嘘は言わない』ヒノカミの発言を素直に受け止めるなら、ルドセブとセイラームという二人の子供を説得できたならチョコラブの蘇生が叶うということになる。

無条件で葉を信じている竜とファウストが彼に続き、訝しみつつ蓮とホロホロ、ミッキーたちもヒノカミの隣を通り過ぎる。

 

「おぉい、ルドセブ、セイラーム。

 気が済まんとは思うが、頼む。

 どうかチョコラブを生き返らせちゃくれねぇか?」

 

本当に頼む気があるのか怪しい気さくさで葉が語り掛けるが、それでもゴーレムは動かない。

 

「……どうした?お主ら」

 

ヒノカミもおかしいと思い近づく。

すると胸部ハッチが開き、二人の姿が露わになる。

 

「……姉ちゃん……!」

 

後部座席のルドセブは苦しそうな表情で胸を押さえ、前部座席のセイラームは目を閉じ涙を流していた。




ヒノカミが超・占事略決を見たのはミッキー経由なので、蘇生術を手に入れたのはつい最近。
3年たった今では彼の遺体がないのでカメル・ミュンツァー博士の蘇生はできません。
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