『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第6話

「何をしにきた……ハオ!?」

 

「ただの散歩さ。だがお前たちの諍いと妙な力を感じたからね、足を運んでみたんだよ」

 

巨大なスピリット・オブ・ファイアの左手に乗ったハオが、葉を見下しながら質問に答える。

その足元には怪我により動けないブロッケンとビルの二人を除いたハオの手下全員が勢ぞろいしている。

その一人ペヨーテが選手の証である『オラクルベル』を起動し巫力を計測する。

 

「ほぅ、子供らの巫力は二人合わせて1万6千。中々大したものだ。

 だがやはり恐るべきはあのゴーレムの内臓巫力か」

 

ゴーレムの中には『巫力のバッテリー』とも言えるものが組み込まれており、膨大な巫力をため込んでいる。

それがゴーレムの圧倒的な力の理由だった。

 

「……およそ『200万』。まさかハオ様をも上回るとは。

 一体どれほどの霊を食わせたというのか」

 

その一言に葉たちが反応する。

 

「200万……!?ハオが125万って話だったろ……!?」

 

「このカラクリがその1.6倍を内包しているだと!?」

 

「いや待て、霊を食わせたってのはまさか……!」

 

「決まっているだろう?機械が自ら巫力を生み出せるはずがない。

 充電するなら他の魂から奪うしかないじゃないか。

 僕のスピリット・オブ・ファイアと同じようにね」

 

「「「!?」」」

 

ハオの言葉が事実だとしたらルドセブとセイラームの父であるミュンツァー博士は、ゴーレムを作り上げるために数えきれないほどの人と霊を殺してきた極悪非道の狂人ということになる。だが。

 

「父ちゃんを悪く言うなぁ!!」

 

「全くじゃ、人聞きの悪い。

 博士は非道になど手を染めておらんわい。

 その巫力は全部儂が提供したもんじゃ」

 

「……ほぅ」

 

ペヨーテは続けてヒノカミの巫力を計測する。

 

「……8万!?」

 

「「「!?」」」

 

「……チッ、道理でアタシらが敵わないわけだ」

 

ヒノカミの巫力を聞いて葉たちは驚愕し、昼間の襲撃を退けられた花組の面々が舌打ちをする。

彼女らも高い巫力の持ち主だがヒノカミには及ばず、そこに内蔵巫力200万のゴーレムが並べば敗北も仕方ないことだろう。

 

「なるほど、8万か。

 確かにキミが長期にわたって巫力を注ぎ続けたのなら、200万を用意することも不可能ではない」

 

「だが宝の持ち腐れだ。巫力だけがハオ様を多少上回っていたところで、勝てるというものではない。

 そのゴーレムと君自身の魂、ハオ様に捧げるがいい」

 

「久しぶりのごちそうだよ。スピリット・オブ・ファイア」

 

大口を開けて食らいつこうとしてくるスピリット・オブ・ファイアを前に、葉たちはゴーレムを守るかのように前に出る。

 

「……僕らが用があるのはゴーレムとそこの連中だけだ。

 そいつらを食わせたらすぐに帰るよ」

 

「駄目だ、コイツらに手出しはさせん!」

 

「貴様が強くなるのをみすみす見逃すつもりはない!」

 

「そこの鬼さんにはチョコラブを蘇生してもらわにゃならねぇからな!!」

 

やり取りの間にゴーレムに乗り込んだルドセブとセイラームも戦闘態勢だ。

一触即発の状況に、パンパンと軽い音が響く。

 

「お主らは下がっとれ。ルドセブ、セイラーム、葉たちの守りは任せる」

 

「「うん!!」」

 

掌を叩いた音で注目を集めたヒノカミが、呑気な足取りでハオたちへと歩いて行った。

 

「馬鹿者!貴様一人で勝てると思っているのか!?」

 

「……我々も舐められたものですな」

 

「舐めとるのは貴様らじゃろ」

 

蓮たちの静止も、ラキストの苛立ちも、まるで気にも留めずヒノカミは前に出る。

 

「先ほど言うたであろう?

 『儂は冗談は言うが下らぬ嘘はつかぬ』と」

 

「それがどうし……っ!?」

 

蓮は思い当たる。

先ほどミッキーがチョコラブを殺そうとする彼らを止めるため説得しようとしたとき、ハオに対してアイツはこう答えなかったか?

『あの程度の木っ端、儂一人で十分じゃ』と。

 

近くまで歩み寄ってきたヒノカミをハオは見下し、ハオの手下たちも彼女を取り囲んでいる。

 

「蛮勇か身の程知らずか……どちらにしても、やはり愚かだ。

 ……ソイツはいらないよ」

 

その言葉と同時に、ハオの足元にいたラキストとオパチョ以外の全員が一斉に襲い掛かる。

8万とは彼らでも容易ではない数値だ。しかし全員でかかれば倒せる相手でもある。

彼らの攻撃が目の前の鬼に届こうとした瞬間。

 

 

「……え?」

 

 

抑え込んでいた彼女の膨大な力が解き放たれた。

ハオの手下たちの攻撃は、彼女の放つ黄金の闘気に触れた瞬間消し飛んだ。

小さな島全体が、まるで地震が起きているかのように揺れ続けている。

 

「なっ、なんだぁ!?」

 

「コレ……アイツの仕業なんか!?」

 

「へっ!どうだ!オレたちの姉ちゃんはスゲェんだ!

 凄すぎて力を抑えてないと……こんな島一瞬で跡形もなくぶっ壊れちまうんだからな!!」

 

「「「!?」」」

 

ルドセブの自慢気な叫びはハオの一派にも聞こえており、しかし見栄や贔屓と笑い飛ばせない圧力が彼らを襲っていた。

 

「姉ちゃんはお前ら普通のシャーマンとは違う!

 生きたまんまで強大な霊力を扱える超人なんだ!

 いわば『自分自身』が持ち霊であり媒介!

 巫力をエネルギー源にして自分の魂の力を引き出すんだ!」

 

霊力とはそのまま、霊が持つ力のこと。

例えばスピリット・オブ・ファイアの霊力値は33万。

この値が大きいほど強力な霊であり、強力なオーバーソウルを作れる。

そして生きている人間も魂を持つ以上、霊力を内包している。

精霊や過去の英傑と比較すればあまりに微々たるものだが。

……しかし、それが神話の英雄や伝承の神々に匹敵する魂を持つ人間だとしたら?

 

「聞いて驚けぇ!姉ちゃんの数値はなぁ……!」

 

霊力値70万。

巫力値800万。

 

オラクルベルに表示された数値を見て、ハオが初めて大きく表情を歪めた。




幽遊白書の霊力値をそのまま流用しています。
仙水が魔界の強力な妖怪たちを『宗教の神や神話の怪物として語り継がれている』と言っていたので、大きな乖離はないと判断しました。

X-LAWSの天使たちがA級相当の霊力値1万前後。チョコラブのアバさんがS級の10万。
ヒノカミは幽助たちと出会った当初は50万程でしたが、魔界統一トーナメントまでの修行とその後の魔界の放浪で更に20万上げています。
ちなみに『闘神』雷禅が弱った状態でも130万。黄泉が150万。煙鬼たちはそれ以上。
数千年生きてる連中なので桁が違いますね。
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