『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

135 / 789
第7話

「70万と、800万……!?」

 

「霊力がスピリット・オブ・ファイアの倍……巫力に至ってはハオ様の6倍以上だと!?」

 

「そんなの……勝てるわけない……!」

 

「馬鹿な!そんな人間がいてたまるものか!!」

 

「まぁ信じる信じないは主らの勝手じゃがの。

 ただ……折角のシャーマンファイトじゃ。

 やり方は主らに合わせるか」

 

『シャァァァアアッ!』

 

そう呟いてヒノカミが左腕を水平に構えると、その腕に巻き付くように白い大蛇の霊が現れた。

左手の手首からぶら下がっているのは、奇妙な形をした十字架。

 

「オーバーソウル。白星・イン・滅却師十字」

 

直後、ヒノカミを覆うようにとてつもなく巨大な大蛇が具現化された。

 

「『白鎖彗星(はくさせいしょう)』」

 

『ジィシャアアアアアアアア!!!』

 

「っ!デケェ!?」

 

とぐろを巻いて鎌首を持ち上げているが、その頭部だけでスピリット・オブ・ファイアの胴体に迫るほどの大きさがあった。

その気になれば、丸呑みしてしまえそうなほどに。

 

「ヤベェ!兄さんたち、ゴーレムの後ろに!」

 

「バリアフィールド展開!!」

 

ゴーレムが葉たちを庇うように一歩前に出て、アームを胸の前でクロスする。

そして前面に巫力による強固なシールドを作り上げた。

 

「消し飛ばせ」

 

『シャアアアアアアアア!!!』

 

「っ!全員逃げろぉ!!」

 

大蛇の胴体の各所から伸びた突起の先端から、エネルギー弾が発射された。

全方位無差別攻撃。

土煙が晴れた後にあったのは、爆撃により抉り取られた大地と、散乱するハオの手下たちだった肉片(もの)

唯一逃れたのはスピリット・オブ・ファイアを盾にしたハオと、寸前で気づいて逃げに徹したラキスト、そして彼が抱えたオパチョだけだった。

 

「危なかったぁ……姉ちゃん!やるならやるって言ってからにしてくれよ!」

 

「かかか、『守りは任せる』と言うたじゃろうが」

 

「バリア解除。巫力消耗約25万、ゴーレムの損傷無し……皆さん、大丈夫でしたか!?」

 

「おぉ~……助かったぞ」

 

「……スゲェ……!」

 

一瞬。

一瞬でハオの手下たちはほぼ全滅してしまった。

そしてあれだけの攻撃を仕出かしたヒノカミは全く消耗した様子がない。

 

「……これ以上余計な真似をしようと思うなよ?

 儂は貴様らの魂を消滅させることも容易いぞ?」

 

『『『……っ!』』』

 

ヒノカミは成仏できずに漂っているハオの手下たちの霊を威圧する。

彼らは自分たちの残骸を前にして、無言で佇んでいた。

 

「ふざ……けるな……!」

 

ハオが怒りを抑えきれずに叫ぶ。

 

「ふざけるな!何故お前のような魂がここにある!?

 何故お前のような存在が許されている!?」

 

「……ん-?」

 

ハオの発言と様子に妙な違和感を感じたヒノカミは少し頭を捻って考えを巡らせ始める。

 

「っ!転生……貴様も……!?馬鹿な!」

 

「……あぁ、なるほど。貴様は読心術者か」

 

「「「!?」」」

 

ハオの能力の正体に思い至ったヒノカミは、何でもないことのようにつぶやく。

それを聞いた周囲の者たちの反応とは裏腹に酷く冷静に。

 

「もしや、制御できておらんのか?

 ……そりゃあ、苦労したんじゃろうなぁ……」

 

「憐れむな!僕を、憐れむなぁ!!」

 

ハオの怒りに呼応してスピリット・オブ・ファイアの腕がヒノカミを貫こうと迫るが。

 

「心が読めるなら、これが悪手と分かるじゃろう。

 癇癪でミスをするとは、やはりお主もまだまだ子供じゃな」

 

「くっ……!」

 

ヒノカミは巨大な腕を容易に受け止め、熱を吸収し始めた。

ハオは咄嗟に先端を自切させ離れるが、切り離した分のスピリット・オブ・ファイアの力が奪われ、霊力の差が更に広がってしまった。

 

「くそ、何故だ!何故麻倉はコイツを手放したんだ!?」

 

「……手放した?」「……」

 

葉が自分の家の名前に反応し、仮面で顔を隠しているミッキーがばつが悪そうに無言で俯いた。

 

「そりゃあ、お主という前例があったからじゃよ」

 

「何!?……っ!」

 

ヒノカミの思考を読んだハオが、彼女の過去を知った。

驚愕の表情の中にあったのは、わずかな罪悪感。

 

「そうか……僕の……っ!」

 

「ハァ……気が削がれた。お主はもう帰れ。

 決着をつけるなら、シャーマンファイトで良かろう?」

 

「……いくぞ、ラキスト」

 

『『『ハオ様!?』』』

 

生き残った二人だけを連れて引き返すハオに、彼の配下たちが追いすがろうとするが。

 

「貴様らは残れ。

 この状態からの蘇生はあ奴ではできぬ。

 儂でも少々手間がかかるからの」

 

「っ!?生き返らせるつもりなのか!?コイツらを!?」

 

「気の迷いじゃ。

 チョコラブ共々、まとめて済ませるぞ」

 

「うぐっ……」

 

ヒノカミの意図はわからないが、チョコラブのことを出されると強く出づらい。

彼らにとってはチョコラブもハオの手下も、等しく敵なのだから。

 

「主らの宿泊施設がすぐ近くじゃな。

 そこを借りるぞ。白星、頼む」

 

『シャー』

 

巨大化したままの白星が体をうねらせ、口や突起を器用に使ってハオの手下たちの残骸を集めていく。

葉たちは状況が飲み込めず置いてけぼりになっているが、ヒノカミはそれを無視してテキパキと動く。

 

「……っと、もうハオにバレたようじゃからな。

 これ以上隠し続ける必要もあるまい」

 

そしてヒノカミは武装錬金の維持に注いでいた力を止める。

間もなく鬼の鎧は消滅していき、中からそれを操っていた本人が現れる。

シャーマンファイト開始から初めて、彼女はその姿を耳目に晒した。

 

「「「……はぁ!?」」」

「メラァッ!?」

 

正体を知っていたルドセブとセイラーム、そしてミッキーを除く全員が驚愕で声を上げる。

何故なら出てきた彼女は……とても小さかったから。

 

「名乗ろうか。

 ヒノカミ改め、紅葉(もみじ)・ミュンツァー。

 旧姓は麻倉、麻倉 紅葉(もみじ)

 御年12歳じゃ。

 ……よろしくの、葉兄上」

 

「「「「……はぁぁぁぁあああああ!!!??」」」」

「メラァァァアアアア!!」

 

霊体となったハオ一派の声も混ざった大絶叫が、夜の森に木霊した。




・霊界獣『白星』/OS『白鎖彗星(はくさせいしょう)

霊体となって転生に付き従う霊界獣の白星を、『刻思夢想』で具現化した滅却師十字にオーバーソウル。
鎖のような胴体を持ち、頭上に円環を浮かべた巨大な白蛇を具現化する。
胴体各所の突起と蛇の口は砲塔であり、突起からは光線弾(霊子の矢)、口からは砲弾(霊丸)または拡散弾(霊光弾)を発射する。
全身に走る青い光の筋は滅却師の静血装を再現したもので、頑丈な胴体そのものが強固な武器であり、主を守る盾でもある。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。