『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第8話 麻倉 紅葉

「えぇ~と、つまり……お前はオイラとハオの妹なんか?」

 

「血縁上はな。

 生まれてすぐにミュンツァー博士の養子になったんで、戸籍上は異なるが」

 

「……何故我々もこの場に残されているんだ」

 

「何度も説明するの面倒じゃし、聞いとけ。

 敵の情報なのだから持って帰ればハオの役に立つじゃろうが」

 

「……」

 

民宿の大広間には、ヒノカミ改め紅葉と、ルドセブとセイラーム。

ふんばり温泉チーム3名とTHE・蓮の3名。

オカミのアンナとまん太、ミッキー。

X-LAWSから出張中のリゼルグ。

蘇生されたハオ一派6名。

人間だけでも19名いるのに、さらに各々の持ち霊も引き連れているのでとんでもない密度である。

ちなみにアイスメンの3人は、流石に場違いだろうと退散した。

そしてゴーレムは外の駐車場に置いている。

 

「……どういうこと、幹久」

 

「いやぁ、これは何というか……」

 

「説明は儂がしよう、義姉上。

 ミッキーからは言いづらかろうからな」

 

「……義姉上……わかったわ」

 

ひとまず、全員が話を聞くことに同意し静かになった。

 

「ゴホン……儂は麻倉家第三子、ハオ兄上と葉兄上の妹として生まれた。

 しかし麻倉家に受け入れられることはなかった。

 それは儂がハオ兄上の同類であったからじゃ」

 

「同類……?」

 

「……その膨大な巫力、転生体ということね?」

 

「いかにも。生まれ変わった回数は片手の指では足りんな」

 

「「「いぃっ!?」」」

 

巫力125万のハオですら転生は2度。

もちろんただ回数を重ねればいいという訳ではないが、だとすれば膨大な巫力を所有していることにはひとまず納得がいく。

 

「だが儂の転生はハオ兄上のように術式によるものではない。

 生まれ持った特殊能力の一種……自分でも制御できぬ。

 麻倉の家に生まれたのも儂自身の意志ではない。

 そもそも儂は前世まではシャーマンですらなかった。

 だがハオ兄上という前例があったため、葉明殿に拒絶されたのじゃ。

 すぐに殺すべきであるとな」

 

「「「!?」」」

 

「実際、ハオと葉に対してもそうしようとしていたらしいわね」

 

「葉くんも!?なんで!?」

 

「兄上らは双子。どちらが麻倉葉王の転生体かがわからなかったからじゃ。

 ……話を戻すと、儂は抵抗し懇願した。『放逐で許してほしい』とな。

 儂自身もハオ兄上と同様に転生直後から戦う力があったため、争えばただでは済まぬと葉明殿は渋々飲んだ。

 当初はどこぞの孤児院にでも放り込まれる予定だったのじゃが、ミッキーが親友であるミュンツァー博士に掛け合ってくれての。

 彼の養子となったのじゃ。

 これが儂の麻倉家と、ミッキーに対する大恩じゃよ」

 

「……追放されたのに、恩なのかよ……」

 

「儂のような化け物に生きる機会を与えてくれた。それだけで感謝に絶えぬ」

 

「……ごめんね、紅葉」

 

湿っぽくなった空気を払うように紅葉は何度か手を叩き、再び意識を集める。

 

「さて、これが儂の巫力と麻倉を離れた理由じゃ。

 次は儂の霊力について話そうか」

 

「……あっ、そうだよ!なんだ霊力70万って!

 アバさんだって10万なんだぞ!?」

 

チョコラブが叫ぶ。

彼は一度成仏して地獄……グレートスピリッツのコミューンを巡り、10万を超える膨大な巫力と古代インディオの力を手に入れて蘇った。

新たな持ち霊『パスカル・アバフ』。

神霊へと進化を果たした千年前の英雄の魂だ。

 

「……そもそもおかしいとは思わなかったか?

 儂は『シャーマンではなかった』と言った。

 何故戦う力を持っておる?

 そして何度も転生しているというのなら、何故儂の存在の記録がこの世界に残されていない?

 千年前の麻倉葉王の記録すら残されているというのに」

 

「「「あ!」」」

 

「……『この世界』!?アンタ、まさか……!」

 

「察しがよいな、義姉上。これがその答えじゃ」

 

紅葉は勢いよく掌を叩き、部屋全体を覆うテリトリーを発動。

そしてその壁面に無数のスクリーンを投影した。

 

近未来的な日本の街並みに溢れる異形の人々とアメコミ染みたヒーロー。

仮面を着けた亡霊と、特殊な刀でそれを狩る死神。

人食いの機械の化け物と、機械の武器を持つ錬金の戦士の戦い。

死者の魂を管理する霊界と、妖怪や魔族が闊歩する瘴気に覆われた広大な魔界。

 

どれもこの世界のどこにも、グレートスピリッツの中にすら存在しない光景。

そして時折映像の中に映る、紅葉の面影を持つ女性の姿。

 

「儂の転生は世界の壁を越えて行われる。

 この『シャーマンの世界』とは違う歴史を歩み、違う進化を遂げた数多の平行世界。

 儂はそれらを巡り、戦い続けてきた。

 ……かかか、それこそ今の儂でも敵わぬ強者とすらな」

 

「なんだぁこりゃ……!」

 

「平行世界……馬鹿な……!」

 

「儂が操る力はシャーマンの力だけではない。

 個性、死神、滅却師、錬金術、霊気、聖光気……ありとあらゆる力と技術が今の儂を形作っておる。

 儂はこれらを持ってシャーマンキングとなり、自由に世界の壁を超える手段を手に入れる。

 ……これが儂の強さと、シャーマンファイトに参加した理由じゃ」

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