『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第10話

ハオたちとの戦いの夜が明けその翌日。

『haiti 800』と『如来』の試合が行われ、シャーマンファイト1回戦は全て終了した。

 

葉たちはテーブルの上にトーナメント表を広げる。

二次トーナメントに進むのは4つのブロックの勝者である4チーム12人。

各試合の結果とゴーレムのスピリットサーチシステム、紅葉の強者を見抜く勘から勝者を予想する。

 

「儂らのブロックは、儂ら『アルケミスト』で確定じゃ。

 X-LAWSの『X-Ⅱ』は最初から眼中にない。

 ガンダーラの『如来』はなかなかできるようじゃが、儂らを倒せるほどではないの」

 

「今日の試合あんなにすごかったのに言い切っちゃうんだ……。

 ボクは昨日その場にいなかったから、紅葉ちゃんが強いって実感がわかないや」

 

「『星組』はもう勝ち抜けが決まってんな。

 次の相手はおそらく『花組』。

 今更あいつらがハオに弓引くとは思えん」

 

「もう一個のブロックは『X-Ⅰ』か『天』……。

 リゼルグやメイデンちゃんも応援したいが、サティさんとこにも借りがあるんだよなぁ……迷うぜ!」

 

「おだまり、竜」

 

「それで、オレたちのブロックは……『THE・蓮』だな」

 

「自信過剰も大概にしとけや!いや負ける気はねーけど!」

 

「群雄割拠じゃの。

 『ふんばり温泉チーム』『THE・蓮』『月組』『明王』。

 いずれにも可能性がある。

 最悪は『月組』が勝ち残ってしまうことか。

 ……ハオ兄上がやたらと仲間を増やしているのは、こういう事情だったとは」

 

『星組』と『月組』の2組が残ってしまえば、ハオの進撃はいよいよ止まらない。

パッチの妨害の悉くをなぎ倒し、無防備な紅葉を殺害するだろう。

十祭司の中には露骨にハオに肩入れしている者までいるためなおのこと信用ならない。

 

「となるとやっぱX-LAWSとガンダーラと話つけといた方がいいんだが……そんなにいやか?」

 

「あぁ。儂は連中とは分かり合えん」

 

ガンダーラはまだ理解できる。

相手の出方次第では不戦条約くらいは結べるだろう。

だがX-LAWSは絶対に受け入れられない。

ハオに復讐するのはいい。

お互いに同意してシャーマンファイトに参加しているのだから、試合で相手を殺すことも認める。

 

だが連中が『正義』を騙ることだけは許せない。

 

「唯一絶対の『正義』などあるものかよ。

 正義とは一人一人が自らの内に掲げる信念の旗。

 色も形も模様も全て異なる。ましてや振りかざすものでも押し付けるものでもない。

 自らの正義こそが至上と妄信し、他者の正義を否定する連中こそ『悪』に他ならぬ。

 ……そうは思わぬか?ラキスト」

 

「えぇ、全くもってその通りです」

 

「「「!?」」」

 

いつの間にか庭に立っていたハオの手下、ラキストに紅葉が問いかける。

 

「実際のところそれを痛感したことが、私がX-LAWSを離れハオ様に付いた理由なのですから」

 

「お前が、元X-LAWS!?」

 

「なーんか持ち霊の波長が似とると思ったが、そういうことか。

 で、用件はなんじゃ?」

 

「我らから仕掛けておきながら配下の者たちを蘇生してくださった紅葉様にお礼をと思いまして。

 午前中にも一度伺ったのですがご不在のようでしたから」

 

「あぁ、儂らみんなで『如来』の試合を見に行っておったからな。

 それはすまんことをした」

 

「いえいえ。そしてハオ様からの伝言です。

 『我らはシャーマンファイトに専念する』と」

 

「そうか。今度一緒にメシでも食おうと伝えてくれ」

 

「……アナタは本当にハオ様の力を恐れないのですね。

 かしこまりました。その日が来ることを楽しみにしております」

 

ラキストは帽子を脱いで頭を下げ、そのまま帰って行った。

 

「ハァ……悪を自認するハオ兄上一派の方がよほど道理をわきまえておるわ」

 

「いやいや……気付いてたんなら言えよ!?」

 

「持ち霊の波長が似てるってどういうことだ!?

 アイツも天使を従えてんのか!?」

 

「敵意がないことにも気付いていたからな。

 んで、あ奴の持ち霊じゃがX-LAWSの同類じゃろうな。

 しかしそもそもX-LAWSが従えているのは天使ではなく、天使の紛い物じゃよ」

 

「そうなんか?じゃあ天使の正体ってのはなんなんだ?」

 

「付喪神じゃ。多分、車じゃな」

 

「「「車ァ!?」」」

 

「……アンタね、そういう情報は最初に出しておきなさいよ」

 

「秘密は女の魅力を増す秘訣じゃぞ?

 何より『その方がカッコイイから』な!」

 

「……頭痛くなってきたわ」

 

暴君で知られるオカミのアンナだが、それ以上の実力を持ちしかも義理の妹になる相手には強気に出られなかった。

下手にこじらせて今の関係が崩れたら、本当に麻倉が終わる。

 

「んでは、話し合いも終わったことじゃし……始めるかぁ」

 

「「「!?」」」

 

ガタリと音を立てて立ち上がった紅葉に、『ふんばり温泉チーム』と『THE・蓮』の6人がビクリと肩を震わせる。

 

「念のためハオの襲撃に備えて巫力の半分は残しておきなさい」

 

「了解。それでも一人当たり5回は余裕じゃあ。

 万が一成仏してしもうた時は頼むぞ、義姉上」

 

「任せなさい。何度でも引きずり出してあげるわ。

 ……絶対に逃がさないから」

 

「「「は、はは、はははは……」」」

 

そしてアンナが紅葉に好意的な理由がもう一つ。

スパルタという点で、彼女たちは非常に気が合った。

 

『月組』や『明王』に勝ち進んでほしくない紅葉は、葉たち6名の訓練に協力を名乗り出た。

膨大な巫力を持つ『蘇生術』の使い手と、あの世からでも魂を呼び戻す『降霊術』の使い手。

最凶の鬼コーチ2名がタッグを組んだ。

 

巫力は死から蘇る度に増大する。

ならば何度も殺し合いをさせて、その度に蘇らせればよいのだ。

実戦経験も得られて一石二鳥。

なお道徳と倫理は無視するものとする。

 

「足りなくなったらゴーレムに蓄積している分を拝借しよう。

 それでさらにもう2回は逝ける」

 

「いいわ。それじゃあアンタたち……さっさと逝くわよ」

 

 

「「「「「「イヤァァァァアアアアーーーーーーー!!!!」」」」」」

 

 

少年たちの断末魔の叫びが、絶える事なく木霊する。

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