『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第11話

トーナメント2回戦第1試合。

『THE・蓮』VS『明王』。

 

全員が神クラス……巫力50万以上であるシャーマンで構成されたガンダーラのチームの一つ。

その事実を知る者はこの戦いが一方的な形になると予想していた。

それも無理のないことだろう。だが。

 

「……馬鹿……な……!?」

 

『巫力無効化』。巫力により構成されたオーバーソウルを無効化する能力。

彼らはその力に甘えすぎており、実戦経験がまるで足りていなかった。

葉たちはすでに同種の能力を手に入れており打ち破ることは容易い。

そしてガンダーラを支えていた圧倒的巫力差というアドバンテージが崩れ去った以上、この結果は必然だった。

 

『THE・蓮』の巫力値。

蓮:36万

ホロホロ:37万

チョコラブ:42万

彼らは神クラスのシャーマンを名乗る一歩手前にまで成長していたのだ。一晩で。

 

『……圧勝ーーー!?

 だぁれがこの結果を予測できたか!?

 チーム『THE・蓮』!ガンダーラの武闘派『明王』に圧勝だぁああああーー!!』

 

観戦者たちが勝者を称えるが『THE・蓮』の3人の顔に喜びはない。

というか表情がない。目に光がない。

目の周りには濃い隈があり、頬はこけている。

彼らは文字通り地獄を見てきたのだ。

 

観戦に来ていたハオ一派も、X-LAWSも、ガンダーラも、彼らの成長に驚愕を隠せずにいる。

平然としているのはアンナと紅葉だけだ。

葉たち3人と修行風景を見ていたまん太も静かだが、精神状態は蓮たちと大差がないため除外する。

 

「ふぅん、まぁまぁの結果ね。

 葉たちは明日の試合までにもう一セット組んでおこうかしら」

 

「「「ヒィィィイッ!!?」」」

 

「まぁ待て義姉上。数日は休憩を挟んだ方がよい。

 まずは平静を取り戻させねば」

 

「紅葉ぃ……!」

 

「んでその後もっかい突き落とすんじゃ。

 このデカイ落差こそが精神を成長させる秘訣じゃよ?」

 

「一理あるわね」

 

「「「鬼ぃーーーー!!!」」」

 

ちなみに紅葉はもう鬼の鎧を着ていない。

 

翌日。2回戦第2試合。

 

「ウェッヘッヘッヘ……ウヘ、ウヘヘヘヘ……」

 

「オレはやる、やるぜ、やれるんだろ?なぁオイ?」

 

「フフ……フフフ……あぁエリザ……キミを傍に感じるよぉ……」

 

『ふんばり温泉チーム』の巫力値。

葉:39万

竜:31万

ファウスト:28万

残念ながら一晩では彼らの精神は復活しなかったらしい。

しかし『月組』を破るにはその状態でも充分だった。

 

2回戦第3試合、第4試合はそれぞれハオ一派の『花組』、ガンダーラの『天』が勝利。

試合直後に『花組』が棄権を宣言し、『星組』の二次トーナメント進出が決定した。

そして2回戦最終試合。

『アルケミスト』VS『X-Ⅱ』。

 

『さーあ、ついに2回戦もこれでラスト!

 しかしアルケミストのヒノカミ改め紅葉・ミュンツァー選手……ちっちゃい女の子だぁーー!?

 え、ホントに中身お嬢ちゃんだったの!?別人じゃないの!?ねぇ!?』

 

「本人じゃよー」

 

「リゼルグから聞いちゃいたが……こうして目の当たりにしても信じられねぇぜ……」

 

「だがハオの妹だというなら粛清対象だ。悪く思うな」

 

『いかついおっさんたちが小っさい子供たちに襲い掛かろうとしている!

 事案だぁーー!もしもしおまわりさーーん!?』

 

「おいうるせぇぞ審判!つーかオレが元警官だ!」

 

X-Ⅱは全員舞台に上がっているが、紅葉はゴーレムと弟妹を舞台の外に待機させ一人で舞台に立った。

 

「いぃ判断だ、坊主共はそのまま帰りな。オレらの狙いはハオの妹だけだ」

 

「……」

 

紅葉は無言。ただ目を閉じ、静かに佇んでいる。

 

『だがやるってんなら年齢も性別もシャーマンには関係ねぇぜ!

 そんじゃ2回戦最終試合、レディー……ファイッ!!』

 

X-Ⅱの3人が銃の引き金を引き、3体の天使を呼び出し紅葉へと殺到させた。

もっとも巫力の高いジョンの使役するラファエルの腕に付いた刃が紅葉に振り下ろされるが。

 

「軽いな」

 

攻撃を片手で受け止めていた。腕力だけで。

そのまま天使を振り回し、残る2体の天使に向けて投げ飛ばした。

 

『……ハァーーーー!?今、何したぁ!?

 掴んで、投げたぁ!?どんなオーバーソウルだぁ!?』

 

「儂自身の身体能力じゃよ。

 儂はこの身一つで空を舞い、山を砕き、溶岩を泳ぐ。

 たとえ爆撃の嵐を受けようとこの身には傷一つつかんぞ」

 

『「「「ハァァァアアアーーーーーー!!!!??」」」』

 

審判のラジムの疑問に、紅葉は何でもないことのように答える。

その発言は彼のマイクを通じて会場中に届き、絶叫が響く。

 

「ふ、ふざけんな!そんな馬鹿な話があるか!?

 んなもんもう人間じゃ……!?」

 

相手の言葉を最後まで言わせず、紅葉は聖光気を発した。

彼女の体が宙に浮かび、島全体が鳴動しはじめる。

 

『こ、こりゃあ数日前に起きた地震!?

 犯人お前かぁー!?アレで島中の施設が大損害受けたんだぞぉー!?

 責任取ってくれぇーー!!』

 

「イヤじゃ」

 

常に金欠のパッチ代表としてラジムは泣き叫ぶが、紅葉は取り合わない。

その様子は実に滑稽だったが笑える話ではなかった。

対戦相手であるX-Ⅱもまた同様に。

 

「このまま貴様らを殴り飛ばしてもよいが、シャーマンファイトの趣旨に反する。

 故に儂もオーバーソウルで相手をしてやろう」

 

紅葉は滅却師十字を具現化し宙に投げる。

 

「『白鎖彗星(はくさせいしょう)』」

 

『ジシャアアアアアアアア!!』

 

舞台の四隅に設置されたポールが発するバリアを突き破り、巨大な白蛇が現れた。

巨大すぎて会場に収まらず、ドームの上から頭部だけが会場を覗き込んでいる。

 

「ついでじゃ。出てこい『赫烏封月(かちょうふうげつ)』」

 

『カァァアアアアアアアア!!』

 

さらに斬魄刀を天高く掲げ、具象化体を召喚。

炎を纏う三つ脚の巨大な烏が島の上空を覆い隠した。

 

斬魄刀の本体、霊界獣、どちらも主の分身とも言える存在である。

故にその霊力値も主と等しい。

 

赫烏封月(かちょうふうげつ):70万

白鎖彗星(はくさせいしょう):70万

 

オラクルベルで数値を計測した者は目を剥き、そうと知らぬ者も圧倒的な力を肌で感じとった。

 

「……化け物……!?」

 

「なんじゃ……今更気付いたのか?」

 

『カァァアアアアア!!』

『ジシャアアアアア!!』

 

2体の口から熱線と霊力弾が放たれる。

着弾直後、紅葉はテリトリーで観客席との空間を遮断した。

ゴーレムが審判のラジムを背に庇いバリアを張った。

光が消えた後、会場の中央は半球状に抉れていた。

紅葉とゴーレムとラジム以外、何も残っていなかった。

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