『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第14話

「と、いう訳で儂はシャーマンキングの座を辞退することにした」

 

「突然何を言っているんだお前は」

 

「?心読めるんなら言わんでもわかるじゃろ?」

 

「……僕の力を知って横着に使おうとした奴は初めてだよ……!」

 

ハオ一派が拠点としているエリアに正面からやって来た紅葉は、彼らにお構いなしで堂々と居座った。

しかも彼女一人ではなく。

 

「ほぉら、ミッキー特製バーベキューだよォ」

 

「……いやまぁ、うめぇんだけどさ」

 

「……私たち、お姉ちゃんのせいで舌が肥えちゃったよね」

 

「竜、これもう持ってっていいか?」

 

「へい、ダンナ。その辺のは下ごしらえ済んだやつでさァ」

 

「フフフ、肉を切り分けるのは得意デスヨ」

 

「何故オレがこんなことを……」

 

「そう言うなよ蓮……アンナと一緒に旅館で待つよかマシだろ?」

 

「だな。考えるだけで寒気がしてきたぜ……」

 

『アルケミスト』『ふんばり温泉チーム』『THE・蓮』に加えてミッキーまで勢ぞろいである。

大量の食材と調理器具を持ってきた彼らが、ハオ達に断りもなくバーベキューを始めたのだ。

特にミッキーは父親としての威厳を取り戻そうと必死である。

 

「ほれ、お前らも食おうぜ」

 

「……呑気なものですな、葉様。

 確かにお強くなられたようですが……もはや我らなど恐れるに足りぬと?」

 

「んなこたねぇよ。

 ただ……もっと怖ぇモンがあるって知っちまっただけさ……ウヘ、ウェヘヘヘ……」

 

「「「……」」」

 

突然目から光を失い虚ろに笑う葉の姿に、ハオ一派は尻込みした。

 

サティとの会合の翌日、トーナメント再開が一週間後という連絡が来たところで、突如紅葉が『ハオのところに行く』と言い出した。

目的は何かと聞けば、『結局まだ一緒にメシ喰えてないから二次トーナメント前に済ませたい』とのこと。

以前ラキストに伝えた言葉は本気だったらしい。

で、折角なら全員で行こうと葉たちを誘ったのだが、アンナは断固として拒絶。

ただ敵情視察も兼ねるのなら葉たちが向かうことは止めないと言った。

紅葉とアンナ、鬼コーチ二人のどちらと一緒にいた方がマシかを考え、彼らは前者を取った。

なお、この時点で帰って来た葉に折檻を加えることはアンナの中の確定事項となっている。

 

「まったく……『何を考えているか』は読めるのに、『何故その考えに至ったか』がまるで読めんとは。

 お前の思考回路はどうなっている」

 

「おや?ハオ兄上が読み取れるのは表層意識だけなのか?」

 

「……わざわざ手の内を明かすと思うか?」

 

「ふむ……」

 

読心能力と言ってもその幅は大きい。

今考えていることだけなのか、本人の忘れた記憶まで全て読み取ることができるのか。

ハオの力がどれほどか興味を持った紅葉は、一つ実験してみることにした。

 

彼女は思い浮かべる。OMTによる頭抜けた記憶力を総動員して。

そして一つの光景が彼女の頭の中で像を結んだ。

 

 

プールサイドで悩殺ポーズを取るビキニ姿のリカバリーガールの像を。

 

 

「ぶっふぁっ!?」

 

「「「ハオ様!?」」」

 

「なるほど、強く思い浮かべれば映像も行けるのか」

 

「はぁ、はぁ……貴様ァ!!」

 

「かっかっか、悪かった悪かった」

 

「くそっ……これほどこの力が憎いと思ったのも初めてだ……!」

 

普段のハオならとっくに相手を殺している。

しかし紅葉に挑んでも返り討ちに合うので実力行使には移れない。

無暗に周囲に八つ当たりもできない。紅葉が仲間や無関係な人間を巻き込むことを嫌っていると心を読んで理解している。

だからこそ、本当は駒としか思っていない手下たちを未だに切り捨てることができずにいるのだ。

 

「……一体、ハオは何を見せられたんだ……?」

 

「お、気になるか?」

 

「!?目を閉じろォ!!」

 

紅葉の思考を読んだハオが叫ぶ。

咄嗟に出てきた彼の優しさだったが時すでに遅し。

紅葉がテリトリーを発動し、立体映像を作り出した。

 

 

「「「「「ぶっふぁっ!?」」」」」

 

 

リカバリーガールは彼女を名誉棄損で訴えてもいいレベルだが、別世界ともなれば法が及ぶか怪しいだろう。

 

「何をするか貴様ァ!」

 

「かっかっかっか!」

 

逃走を始める紅葉に『THE・蓮』の3名がオーバーソウルを出して襲い掛かる。

『花組』や『月組』も加勢に回った。

なお、ゴーレムはお留守番なのでルドセブは石を投げつけていた。

 

「……心読めるってのは、大変なんだなぁ、ハオ……」

 

「……否定するのも億劫だ……」

 

今、双子の心は一つになっていた。

『あの妹、曲者すぎる』。

結局紅葉は全員のオーバーソウルを破壊しつくし巫力切れでダウンさせた。

誰一人、怪我の一つもしていないが、精神的ダメージと疲労感は言うまでもない。

 

「すまんすまん、詫びと言ってはなんじゃが……儂の歩んできた道のりの映像でも流そうか。

 なんだかんだ主らも、別世界のことが気になるのではないか?」

 

それは事実であり、葉たちもハオたちも押し黙った。

 

「んなこと言って、またさっきみてぇな酷ぇ映像流す気じゃねぇだろうな……!?」

 

「安心せい。ちゃんとグロいとこは隠す」

 

「グロいんかい!!」

 

紅葉はテリトリーを発動。長時間になりそうなので小さめの結界で自分だけを囲み、外側に映像を流す形を取った。

ちゃんと食事中ということを配慮して血肉が飛び散るシーンでは画面をぼかしている。

その頻度がやたら多かったことが、彼女がどういう人生を歩んできたかを表しているだろう。

 

「……胸糞悪い悪党がいるもんだ。ハオが可愛く見えるぜ」

 

「つーか長生きしてるやつ多すぎだろ。千歳なんざ珍しくもねぇじゃねぇか」

 

「おい!ホムンクルスとかいう連中の食事シーン、料理が全部モザイクかかってんぞ!?」

 

「エンマが不正ねぇ……いや駄目だろ!?」

 

ツッコミが飛び交う騒がしい食事風景となった。

そして同時に納得した。こんな壮絶な人生を送っていたらハオを恐れるはずがない。

結局上映会は深夜まで続けられ、葉たちは帰るのも面倒だからとその場で雑魚寝し夜を明かした。

翌日、朝帰りした葉はアンナの折檻を受けていた。

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