天照:太陽神アマテラス。
輪廻天照:自身が太陽となり浮世をあまねく照らす
太陽の超新星爆発。
それは間違いなく、五大元素全員を消し飛ばす威力だったはず。
しかし光が収まり、ハオの目の前にあったのは。
「……馬鹿な……取り込んだというのか!?太陽を!?」
『くかかか……思い一つでどうとでもなる世界!
儂の頑固さで叶わぬ願いなどないわぁ!!』
オーバーソウルしたグレートスピリッツにも迫る巨体を持つ、炎の巨人が立ちはだかっていた。
炎の体を真紅の装甲が覆い、いたるところにスピリット・オブ・ファイアの意匠が取り込まれている。
胸に顔、背中から角、両肩からは本来の腕とは別にもう一対の巨大な腕。
「すっげぇ爆発だったよなぁ……アレ全部吸ったんか」
「甲縛式オーバーソウル『
「ダメだ……脳が理解を拒む……!
別の意味で心が折れそうだ……!」
自在に熱を取り込み、その熱を力と炎に変えて放ち、放った熱を更に取り込む。
そして内に熱を蓄えるほどにそのサイズを肥大化させていく。
星一つを飲み込んだオーバーソウルは、まさに星そのもの。
「……だがっ!これで終わりではない!!
重力崩壊による大質量星の爆発……行き場を無くした重力は際限なく圧縮され、超高密度の重力場を作り出す!!」
『『ブラックホール』』
「これに吸い込まれたが最後、お前たちの魂は無限に収縮し二度と出られることはない!!」
凄まじい力で葉たち4人が引っ張られそうになるが、輪廻天照の左肩から伸びる巨大な腕が彼らを受け止める。
「紅葉!」
『葉兄上、数秒時間を稼いでくれ』
「……おう!スピリット・オブ・アース!!」
葉が重力を操作しブラックホールの力をわずかに弱める。
その隙に炎の巨人は内側の一対の腕の掌を合わせ、念じる。
『イメージ……なんでもできる……ここグレートスピリッツの中ならば!
借りるぞ、ヴィクターッ!!』
具現化した巨人サイズの大戦斧を、右肩から伸びた巨大な腕が掴み振りかざす。
そしてブラックホールに向けて振り下ろした。
『フェイタルアトラクション!!』
それはかつて世を呪い滅ぼさんとした悲しき戦士が振るった武装錬金。特性は重力操作。
その大きさ相応にまで増幅再現された力はブラックホールすら霧散させた。
「は……ハハ、ハハハハ!!」
ハオですらも引きつった笑いを上げる。
グレートスピリッツはこの世界のすべてを記憶し再現できる。
ありとあらゆる霊、自然現象、兵器ですらも。
だが紅葉の力……『この世界とは異なる世界の力』は記録されておらず再現もできない。
「ハハ!ハハハハハ!」
「……イカレちまったか?いや気持ちはわかるけどよ」
片手で顔を隠して天を仰いで笑い続けるハオを、葉たちは警戒しつつも痛ましい様子で見つめる。
数十秒後、ようやく笑いを止めたハオはゆっくりと姿勢を正し、宣言した。
「……うん。『僕の負け』だ」
『「「「「……はぁあああっ!?」」」」』
同時にハオはオーバーソウルを解除した。
世界がまた真っ白なコミューンに戻る。
ハオはとても穏やかな、作り笑いではない柔らかな微笑みを浮かべていた。
「どうした?お前たちは勝ったんだ。もっと喜んだらどうだい?」
「いや突然過ぎて訳わかんねぇよ!
お前、人間滅ぼすつもりじゃなかったのかよ!?」
「人間を滅ぼした方がいいという考えに変わりはない。
だがそんなことをしても無駄だと気付いただけさ。
……だってそうだろう?
人間はこの世界だけじゃない。無数の世界に、無数に存在しているんだから」
「「「「あ……」」」」
紅葉と出会い、彼女の素性を知り、ハオはとっくに考えを改めていた。
彼はシャーマンキングとなりこの世界のすべてを手に入れた。
だが紅葉が超えてきた他の世界の存在を感知することすらできなかった。
無数に存在する世界。そのたった一つの箱庭の王様。
「ちっちぇえなぁ……シャーマンキングも」
「ハオ……」
「……虚しくなったのさ。
だからせめて散々引っ掻き回してくれたコイツに仕返しの一つでもと思ったのに、こうまで好き放題にしてやられるとな。
無駄に疲れるばかりでちっとも面白くない。
……お前たちもそうは思わないか?」
「「「「わかる」」」」
『なんじゃい貴様らぁ!』
炎の巨人が地団駄を踏む。もうちょっと離れてやってほしいものだ。
「どうせこの世界の人類はすでに尻すぼみだ。
放っておいても勝手に滅びる。
僕はお前たちが醜く足掻く様を見物させてもらうことにするよ」
「っておい!オレらが勝ったら真っ当に王をやってもらうって約束だっただろ!?」
「フフフ……僕は了承した覚えはないぞ?」
「ムキーッ!!」
「おやめなさい」
ホロホロとチョコラブをからかうハオの後ろから、透き通った女性の声が響いた。
「……母さん」
『「「「「母さんんっ!?」」」」』
そこにいたのはどこかアンナと似た雰囲気の女性。
「王たるもの、容易く言葉を翻すような真似をしてはなりません」
「わかっていますよ……王として、道化の相手をしてやっただけのことです」
「「誰が道化だコラァー!?」」
「……ならば良いでしょう」
「「よくねぇよ!?」」
ハオは気軽にやり取りをしているが、葉と紅葉は知っている。
兄がどれほど、彼の母との会合を望んでいたのかを。
「そうかぁ……逢えたんかぁ」
「……あぁ」
紅葉はオーバーソウルを解除していた。
ハオが抱いていた怒り、憎しみ、寂しさは彼に強大な力を与えたが、同時に彼の母の魂を遠ざけていた。
それらを捨て去り真っ白な心を取り戻さない限り、シャーマンキングになろうと再会は叶わなかったはず。
今の光景が、何よりもハオの心を現していた。
騒がしい日々に寂しさは紛れていた。
シャーマンキングになる前には他者の心が読めなくなっていた。
そしてグレートスピリッツに還ると同時に、彼は焦がれていた者たちとの会合を果たした。
彼の本当の願いは、もう叶っていた。
「ウェッヘッヘッヘ。良かったなぁ、兄ちゃん」
「……フン」
ハオは葉たちに背を向けて母と共に歩き出す。
グレートスピリッツの深部へと。
「……紅葉。僕は願いを叶えたぞ。
だから……お前の願いも叶うように、一応祈っておいてやる」
「かっかっか……神のご加護とは心強いの。
……またいつか、遊びに来るさ」
「神の前で不用意に誓いを口にするとはいい度胸だ。
破れば天罰を降すぞ?」
「くくく、それすら跳ね除けるほど強くなって帰ってくるわい」
「貴様が言うと冗談に聞こえんな。
……じゃあ、またな」
最後にハオはもう一度だけ振り返り、また歩き始めた。
彼の向こうにはグレートスピリッツに還った十祭司たちと、小さな鬼と、和服を着た二つ尾の猫の姿が見えた。
「っ!マタム……!」
葉の問いかけに答えることなく、すぐに彼らは消え去った。
「……またな」
・甲縛式OS『
武装錬金を媒介とした、スピリット・オブ・ファイアのオーバーソウル。
術者を核として燃え盛る巨大な炎を覆うように装甲が浮かび、人の形を作っている。
各部にスピリット・オブ・ファイアの意匠を持ち、胸部に顔を、背中に角を、両肩には本来の腕とは別に、スピリット・オブ・ファイアの物に似たもう一対の巨大な腕を備えている。
最小サイズはスピリット・オブ・ファイアと同等だが、熱を吸収するほど際限なく巨大化する。
発動と維持に膨大な熱エネルギーが必要なため、長い準備時間か外部からの供給が必須。
天元突破グレンラガンの両肩にアンチスパイラルのグランゼボーマの腕がついているようなイメージです。
サイズはずっと小さいですが。
ヒノカミは戦士として優秀でもシャーマンとしては未熟なので、まともな甲縛式OSを作れません。
なので『全身に纏う物にオーバーソウルすれば実質甲縛式じゃろ?』という頭おかしい理論で出来上がったのがこのOSです。
次回、第五章完結です。