戦いの後、葉たちはグレートスピリッツから戻って来た。
王の社には一緒にここまでやって来たシャーマンたちだけではなく、シャーマンファイトで命を落とした選手や、シャーマンたちの関係者すらも蘇生されていた。
ハオが殺した者、そうでない者を問わずだ。
どうやら『真っ当な王』は、早速仕事をしてくれたらしい。
多くの者たちが再会を喜び合っていた。
しかしそこに、紅葉・ミュンツァーの姿はなかった。
大精霊はグレートスピリッツの一部。
だから大精霊の先導があれば肉体を抜け出てもグレートスピリッツに移動することはできる。
しかしグレートスピリッツから出た紅葉の魂が肉体に戻ることはできなかった。
その前にOMTが発動してしまったからだ。
こうなる可能性はハオとの戦いに赴く前に全員に明かしており、ルドセブとセイラームは必死に引き留めようとした。
しかしハオを放っておけばどちらにせよ死に別れることになるともわかっていたため、泣く泣く諦めた。
今彼らは物言わぬ亡骸となった姉を前にして、ハオに蘇生された父親に慰められている。
紅葉はスピリット・オブ・ファイアを置いていった。
本来これを持つべきであったリゼルグに渡してくれと葉に託した。
ただスピリット・オブ・ファイア自身が紅葉との別れを非常に嫌がり、最終的には彼が自身の分霊として生み出したベビー・オブ・ファイアを紅葉に託すことで納得してもらった。
確かにスピリット・オブ・ファイアの分霊があれば、その縁がいつかこの世界に戻ってくるときの指標になるだろう。
そう、紅葉はこの世界に戻ってくるつもりだと伝えている。
シャーマンファイトは終わったが、彼女が戻ってくるその時まで、葉たちの旅はまだ終わらない。
「そういやさぁ……こっからどうやって帰りゃいいんだ?」
「「「……さぁ?」」」
ここは海底に沈むムー大陸。
パッチマリンを作り出した十祭司は全員グレートスピリッツに還った。
仮にいたとしても、この大人数を運ぶことはできない。
そして次元刀を使える紅葉もすでにいない。
「えぇと……そうだ!ゴーレムなら潜航モードがあるじゃん!」
「この人数じゃ何往復することになるかわかんないよ!
それにお父さんが生き返ったから、ゴーレムはもう……」
「フッ……後を頼むぞミッキー」
「待つんだ博士!ジャパニーズハラキリなんてどこで覚えたんだい!?」
もう少しで早速『神頼み』を使う羽目になるところだったが、最終的にチョコラブがスピリット・オブ・ウィンドで巨大な空気の膜を作って全員で乗り込み、ホロホロがスピリット・オブ・レインで海流を操作して浮上することで解決した。
いまいち影の薄かったチョコラブは周囲からの称賛を受けて大いに満足し、蘇った両親から「調子に乗るな」と小突かれていた。
そして彼らはそれぞれの日常に帰って行った。
X-LAWSは復讐する相手を失い、されどこうしてきっちり救われてはハオに恨み節を言い続けるわけにもいかず、マルコが改めて立ち上げたスーパーカー専門会社で一緒に働いていくことになった。
ガンダーラは変わらず、全員揃って衆生救済の旅を再開した。
ハオの仲間たちはバラバラに別れたが、時折何の脈絡もなく集まってはハオへの思い出や愚痴を肴に騒いでいた。
リゼルグは蘇った両親の下で探偵を目指し修行を始めた。
英国一の名探偵が誕生するのはそう遠い未来ではないだろう。
チョコラブは今まで犯してきた罪と向き合い、刑に服すことを選んだ。
両親が待ってくれているので寂しくはなかった。
ホロホロは故郷に帰り自分の力でフキ畑を作り始めた。
ハオのいらぬお節介のせいだろうか、蘇りはしなかったが人間霊の姿のままとなったコロロと共に仲睦まじく暮らしている。
蓮は道家の当主となり、道家の家訓や方針を大きく転換。
その権力と財力を使い多くの人を救おうとした。
葉はアンナと共に、世界を巡る旅に出た。
ハオの言う通り、このままでは滅びてしまう世界をなんとかするために。
二人旅はやがて小さな命が加わり、三人旅となった。
――――……
『……やれやれ』
騒がしい連中がいなくなった王の社。
霊体として一時現世に戻ったハオは、自分の亡骸が座る台座を見てため息をつく。
何故ならその台座の横に、背中を預けるように紅葉の亡骸が座らされていたのだから。
『死んでまでコイツに見張られてる気分だ……落ち着かないったらありゃしない』
――フフ……では片付けますか?
『……いや、いいさ。ほっとけばどうせ全部腐って無くなる。それに……』
ハオが寂しくないように。
純粋な善意での行いを無下にするほど、彼は悪には成りきれなかった。
――ハオ様は良い仲間とご家族に恵まれたのですな。
『そんないいものじゃない。
ただ馬鹿で、騒がしくて、お節介で……退屈しない奴らだったよ』
第五章『シャーマンの世界』編。駆け足ですがこれにて完結です。
正午に設定紹介を挟み、夕方から第六章を開始します。
……ただ宣言しますと、第六章は非常に短く、また知名度が低いと思われます。
ご了承ください。