遂にやって来た雄英入学式。
ヒノカミが気にかけている緑谷・爆豪・轟の3名は全員ヒーロー科A組に所属することになっている。
ナイトアイの予知から3人が同じクラスになるらしいということはわかっていた。
根津校長の指示かと思ったが、一切関わっていないとのこと。
良くも悪くも、未来が予知に沿うように流れていくと実感する。
新任教師として壇上に立ち、自己紹介するオールマイト。
歓声を上げる生徒たちだが、彼は笑顔を張り付けたまま内心では慌てふためいている。
会場の一角、本来A組の生徒たちが座っているはずのそこに、誰もいないからだ。
式の直前にA組の担任である相澤より、A組は式を欠席させるとの通達があった。
彼は極端な合理主義者として有名で、見込みがないと判断すれば容赦なく切り捨てる。
昨年は入学したばかりのヒーロー科生徒、1クラス全員を除籍処分にしたほどだ。
前々からOFA後継者を受け入れるために体制を整えてきたというのに、ここで緑谷を除籍されれば無駄になってしまう。
予知では大丈夫だった。
オールマイトは、今回は外れないでくれと願っていた。
「大丈夫じゃろ。
出久に見込みがないなら、大半のプロヒーローは資格を返上せねばなるまい」
「でもでも、万が一ってことがあるじゃない!?」
式が終わると同時にA組を探して飛び出したオールマイトと、それを追うヒノカミ。
途中生徒たちに何度も囲まれながら、当たり障りのないよう振り切って先へと進む。
確かに、相澤は最後の最後で個性の制御に失敗した緑谷に厳しい評価を下していた。
しかし同時にその圧倒的なパワーも目にしているはずだ。
完全に振り回されているならともかく、すでにある程度制御できているのだから将来性は十分にある。
少なくともあのパワーを惜しいとは思うだろう。
仮に緑谷を見込み無しと判断するのなら、ヒノカミは相澤に眼科を勧めるだろう。
個性の関係で酷使してドライアイらしいし。
爆豪と轟?暴発という欠点すらない彼らを心配するだけ時間の無駄だ。
「「「はーーーーーーー!!!!??」」」
グラウンドから響いてきた大声には、緑谷の声も混ざっていた。
生徒たちがいる前に堂々と現れると騒ぎになるので、オールマイトを引っ張って物陰に隠れる。
体力測定のようなことをしているらしいとは聞いていたが、すでに終わった後のようだ。
相澤が彼らに背を向けこちらに近づいてくる。
残された生徒たちは呆然としていたり安堵の息を吐いていたり。
悲壮感はないので、いきなり除籍された生徒はいないのだろう。
「よう、お疲れ」
「ヒノカミさん……オールマイトさんも。見てたんですね」
相澤が偶然にも、隠れているヒノカミたちの前を通り過ぎようとしたので声をかける。
「いや、今来たばかりで何も見てはおらんのじゃよ。
こ奴は可愛い教え子が除籍されたらどうしようと急いておったが、生徒たちを振り切るのに手間取ってのぅ」
「えぇと、大丈夫だったってことで、いいんだよね?」
「可愛い?……あぁ、貴方の甥と、弟子だという生徒のことですか。
その様子だとオールマイトさんも面識あるんですね」
OFA後継者である緑谷とは『面識がある』程度の浅い関係ではないのだが、当然秘密なので言及しない。
「そんなところじゃ。してどうじゃった?」
「……緑谷がまた暴発するようなら、どれほど優秀な成績であっても除籍するつもりでした。
ですがあいつはテストの結果より、怪我をしないよう力をセーブすることを優先した。
その上での総合上位。見込み無しとは言えませんよ」
相澤の回答を聞いたオールマイトが脱力し長い息を吐く。
「あぁ良かった……心臓バクバクだったんだよ……」
「随分と肩入れしてるんですね……教師としてどうなんですか?」
「ギクッ」
「かっかっか!緑谷はオールマイトの大ファンでな。
加えて個性も似通った増強系。
師である儂が嫉妬するほど仲良しなんじゃよ。
なぁに、師を名乗るからこそ授業で贔屓するような真似はせんし、こ奴にもさせぬよ」
「……そうですか」
ヒノカミのフォローで納得はしたらしい。
多少の不信感は残っただろうが。
立ち去っていく相澤の背中を見つめてオールマイトが呟く。
「……やっぱ、合わないんだよなー」
「貴様と合うような奴ばっかりの方が問題じゃろうが。
それより話が終わったならさっさと逃げるぞ。
もたもたしていると……」
「おい!オールマイトいる!」
「うおー!」
「……言わんこっちゃない!」
このままではまた生徒たちに囲まれてしまうと、ヒノカミが逃走。オールマイトはその後を追う。
ちなみにヒノカミだけなら安全なのになぜオールマイトを見捨てないかというと、この学校での役割は彼のサポート役なので仕方なく面倒を見ているだけである。
混乱に巻き込まれて授業その他に支障が出れば、生徒たちの不利益となる。
そこにオールマイトへの思いやりは一切ない。
だから行動をいさめるためなら彼に対して何をしても良いというのが、根津校長たちと交わした密約である。
二人目のサイドキックの存在、ナイトアイとのコンビが長期、一時期エンデヴァーが自分の不在を支えてくれたなどの経験により、オールマイトは周囲を頼ることを覚えています。
なので情けないところも多めです。
周囲が『支えたい』と思えるのもヒーローの才能ということで、ひとつご容赦を。