『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第3話

「うぉっ!?……アナタは!?」

 

「……まさかお前がオレの前に現れるとはな」

 

「ふん……アフターケアくらいはしてやるさ」

 

安心院なじみの影武者である不知火半纏が黒神めだかにおおよその事情を説明し終えた頃、突如ヒノカミが彼らの傍に現れた。

 

「えぇと、すまない。

 先ほどは有耶無耶のままだったが……アナタは一体何者だ?」

 

「ヒノカミ。

 かつて獅子目言彦の隣に立ち、共に安心院なじみを打倒せんとした者よ」

 

「!?」

 

「身構えるな……五千年前の話じゃ。

 今のアレを言彦とは、儂自身認めとうない」

 

めだかに近付いたヒノカミは異世界の能力を持って、彼女の怪我を治療した。

 

「……これは!?

 言彦の破壊は不可逆ではなかったのか!?」

 

「それがコイツが不知火の里に捕らえられていた理由だ。

 コイツの操る力はアブノーマルでもマイナスでもない。

 全く別の条理に従う力だからこそ、言彦ですらコイツの力を完全には無効化できないのさ」

 

「!?なら、安心院さんも!」

 

「生憎と儂の力はお主らのスキルとやらほど万能ではないよ。

 死後時間が経ちすぎておる」

 

ヒノカミの蘇生術は魂が残っていることが必須条件だ。

だがこの世界も霊子が薄いので、おそらくもう消滅している。

安心院なじみの遺体の欠片ぐらいなら、里に戻れば残っているかもしれないが。

 

「……仮に可能だったとしても断るがな。

 そこまでは契約に入っておらん」

 

「契約……?」

 

「……なるほど、お前を開放したのはなじみか。

 よく従ったものだな。あれほどなじみを憎んでいたお前が」

 

「……今のアイツの頼みなら、応じてやっても良いと思っただけじゃ。

 何より死にゆく者の願いとあってはな」

 

やることは終えたと背を向けたヒノカミに対し、めだかが叫ぶ。

 

「待ってくれ!私からもアナタに二つ頼みがある!

 一つ、私と同様に言彦に傷つけられてしまった友人たちの治療を頼みたい!

 そしてもう一つ、言彦に通じるというその力の使い方を教えてほしい!」

 

黒神めだかのスキルとは『完成(ジエンド)』。

認識した他者の能力や才能を、更に昇華させた形で習得することができるというコピー能力。

見たり体感したりでももちろん、その気になれば伝聞の情報からすら他者の能力を再現できるというとんでもない能力だ。

 

「一つ目は構わん。一人も二人も同じことよ。

 だが二つ目は……お嬢ちゃんにこれが『わかる』か?」

 

「……!」

 

しかし目の前に突き付けられた炎の剣を見ても、その力をまったく理解することができなかった。

 

「なんだこれは……まるでこの世界に存在するべきではない異物のような……!」

 

「その認識で正解じゃ。文字通りこれは『起源』から異なる力。

 この世界では『生まれなかった』可能性の結晶じゃ。

 今からこれを身に着けようと足掻くくらいなら、言彦の不可逆の破壊をコピーしようとした方がまだ可能性があるじゃろう」

 

「……くっ!」

 

言彦の破壊を模倣できなかっためだかは引き下がる。

ヒノカミは他にも多くの力を持つが、言彦に最も有効的な卍解が習得できないようなら他を見せても意味はないだろう。

 

「さてどうする?黒神めだか。

 そいつの力は頼れない。

 どんなアブノーマルもマイナスも通じない。

 それでどうやって言彦を倒す?」

 

「アブノーマルもマイナスも通じない。

 んじゃ言葉(スタイル)ならどうだい?」

 

めだかたちが気付かぬうちに居合わせていた鶴喰鴎と贄波生煮、二人の言葉使いが声を上げた。

 

「もしもめだ姉がスタイルを身に着ければ、獅子目言彦相手でも勝機はあるんじゃないかな?

 ……さぁ会いに行こうよ。スタイルの創始者『鶴喰梟』に!」

 

それは3年前に殺されたはずの、鶴喰鴎の実父。

そして黒神めだかの叔父であり、彼女がもう一人の父と慕っている人物。

彼がどこにいるのかはわからないが、めだかにはそれを知る人物に心当たりがある。

 

「状況はようわからんが……手立てがあるなら行ってくるがいい。

 その間に儂は友人とやらの治療を済ませておこう」

 

「頼む……だが今更だがいいのか?

 アナタは言彦の仲間だったのだろう?」

 

「言うたであろう。アレを言彦だとは思いたくないと。

 仲間だったからこそ歪んだあ奴を止めてやりたいとも思うが……今の奴とは顔も合わせたくない」

 

何より、勝率が高くない。

言彦だけなら問題ないが、他のスキル使いが参戦すればヒノカミとて危うい。

彼女は元々安心院なじみの敵だ。

その意志を継ぐというめだかたちに対し命を懸けてやるほどの義理は、彼女にはない。

 

「わかった……では行ってくる!

 反転院さんは彼女を善吉たちのところへ案内してくれ!」

 

そしてめだかは鶴喰と贄波を連れて飛び出していった。

その場にはヒノカミと、反転院さんこと不知火半纏の二人が残される。

 

「……とんだ自殺志願者だ。

 そんなところまでなじみを継ぐ必要などないだろうに」

 

それでも半纏はめだかの頼みに従い、ヒノカミを病室へと連れていく。

 

「……お前はどうするんだ?」

 

「立ち去るさ。

 そのための力は、すでになじみから受け取った。

 ……もはやこの世界に留まる理由もない」

 

「……」

 

半纏は『スキルを作るスキル』を持つ。

彼女は妙に義理堅いので、彼女が望むスキルを報酬として用意すればもう一度くらいなら助力してくれるかもしれないと考えていた。

だが交渉そのものが不可能なようだ。

彼女が憎んでいるなじみのバックアップに過ぎないからこそ手を出さないだけで、半纏もまた彼女の敵であることに変わりはないのだから。

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