『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第6話 五千年越しの喧嘩

「お前たち!」

 

「めだかちゃん!?」

 

「すまん、待たせた!

 状況はどうなっている?あの化け物は、博士はどうした!?」

 

「奴なら儂がアレに食わせた」

 

「っ、ヒノカミ……」

 

杠を倒してきためだかに対し、ヒノカミは事も無げに答える。

めだかが博士を慕っていたと知る者たちは弁明しようとするが、彼らを押しとどめヒノカミは一歩前に出る。

 

「生かす価値もない外道だったのでな。

 いや、元から死んでおったか。

 だがそれでもお主にとっては大恩ある義父らしいな。

 許せぬというなら2,3発殴られてやっても構わんが?」

 

「……いや、良い。

 博士がどういう人間だったかは、私が一番わかっていた」

 

「……強いな、お主は。

 あい分かった。ならば働きで返そう。

 言彦の打倒、儂も全力で尽くす」

 

「っ!?良いのか!?

 アナタはもう奴とは顔も合わせたくないと……」

 

「そんなちっぽけな感傷よりも守るべき信念がある。

 ……儂ゃ地頭にゃ勝てても泣く子にゃ勝てん」

 

「あぁ、全部見てたってこたぁ不知火の……」

 

「!?わー!わー!わーーー!!

 忘れろぉぉぉおおおお!!!」

 

「すまんが儂ゃ聞き覚えは良いが聞き分けは悪くてなー」

 

「ほぅ……泣いたのか、不知火」

 

不知火が必死にヒノカミを殴りつけているが、ヒノカミ以上に小柄で見た目相応の力しか持たない不知火ではわずかに動かすこともできず、まさに小動物がじゃれついているようにしか見えない。

ヒノカミは暴れる彼女を持ち上げて善吉に押し付け、病院の外へと向かいながらめだかに問いかける。

 

「……して、首尾はどうじゃ?」

 

「取っ掛かりは掴んだと思うが……言彦に通じるかと言われれば、どうだろうな」

 

元々物事の習得速度が尋常ではないめだかが、寿・杠と二人のスタイル使いと連戦したのだ。

スタイルの『基本』くらいは習得できたようだ。

彼女は悔しがっているが、常人から見れば恐ろしい速さである。

 

「特にこだわりがないなら儂が出る。

 駄目元でぶつかってみたいというなら尊重するが?」

 

「……正直に言って、迷っている。

 挑んでみたいと言う気持ちはあるが、目的は不知火の開放だからな」

 

「では、あ奴の出方次第とするか」

 

ちなみに二人とも『一緒に戦おう』とは言わなかった。

圧倒的すぎるからこそ仲間の存在が枷になってしまうめだかと、全力戦闘しようとすると無差別攻撃になってしまうヒノカミだ。

特にめだかの方はバトルジャンキーの傾向があるため『共闘』の考えすら思い至らない。

 

「うっし!じゃあ行くか!

 不知火の里に、言彦をぶっ倒しによ!」

 

「……その必要はなさそうじゃな!」

 

病院の外に出た直後、ヒノカミは具現化したままのスピリット・オブ・ファイアに指示し、遥か彼方からの飛翔体を受け止めさせた。

人間大のサイズしかないソレの反動で、山のような大きさのスピリット・オブ・ファイアが後退る。

 

「げげ!げげげげげ!!!!

 射た!居た!いたぞ、よくぞ、よくぞ、よくぞ!

 よくぞいた!よくぞまだいてくれた!」

 

「言彦……!」

 

不知火が善吉の背中に隠れ、彼もまた彼女を庇うかのように前に出る。

 

「さぁ今度こそ新しく始めようではないかヒノカミ!

 儂とお前の、新しい戦いを!!」

 

だが彼は不知火に一切興味を示さず、ヒノカミに宣戦布告した。

 

「……貴様、まさか!?」

 

守るべき世界もなく、ただ『生き続ける』ことに執着した男。

だからこそ彼が最も執着するのは次の自分の器となる不知火半袖のはずだ。

だが彼は不知火よりもヒノカミを優先している。それ即ち。

 

「儂か!貴様は儂と戦いたいがためだけに、今日まで生きてきたというのか!?」

 

「げげげげげ!!何を今更!!

 この儂の五千年は、今この時のためにあったのだ!!」

 

「「「!!?」」」

 

かつてヒノカミは安心院なじみに攫われた。

実際には生きていたのだが、言彦はヒノカミが殺されたものと考えていた。

だが彼はヒノカミの生まれ変わりを知っていた。

だから信じた。あの義理堅い友人ならばいつか必ずこの世界に戻ってきてくれると。

だから誓った。その日が来るまでどんな手を使ってでも生き続けると。

五千年。彼はたった一人を待っていた。

 

「……すまんな。

 お主らに無駄な苦労をさせていたようじゃ。

 どうやら最初からこれは……儂が背負うべき宿業であったらしい……」

 

ヒノカミは右手で刀を抜き、左手に滅却師十字を構える。

 

「『赫烏封月』!『白鎖彗星』!

 スピリット・オブ・ファイア!

 この者らを守れ!傷一つつけるな!」

 

具現化された大蛇がめだかたちを覆い、上空に八咫烏が浮かび、その背後に炎の巨人が立つ。

何事かを叫ぶ彼らを無視して、ヒノカミは言彦と向き合う。

 

「武器は使わんのか?」

「貴様こそ」

 

向き合ってこなかった。

思い出を汚されるようで変貌した彼から目を背けてきた。

彼は自分との思い出を胸に、ずっと待っていてくれたというのに。

 

「必要なかろう……」

「喧嘩はやはり……」

 

「「素手が一番よぉ!!」」

 

二人の拳がぶつかり合い、その衝撃波で周囲一帯のすべてが消し飛んだ。

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