福岡での事件から二日後、雄英にいる根津校長の元にホークスから会談要請が届いた。
ホークス側からの参加者は彼の他にエンデヴァー・ミルコ・そして『ヒノカミ』と名乗る謎の女性。
根津校長側からの参加者にも指定があり、校長・リカバリーガール・オールマイト、そして雄英関係者ではないがグラントリノ。
会談内容は『8代目及びその盟友たちとの質疑応答』。
間違いない、ホークスは『ワン・フォー・オール』のことを知っている。
「一体情報はどこから……」
「それを含めての会談になるのさ!
……だが『他の誰にも伝えず会議室で待っていてくれ』とはどういうことなのか」
ホークス側の参加者はヒノカミとやらを除き全員がトップヒーローだ。
先日の事件で一緒に報道されていたこともあり、彼らが行動を共にすれば大きな話題となるだろう。
しかし事務員にも誰にも伝えずというのは腑に落ちない。
まさか雄英に侵入でもするつもりなのだろうか。
「連中はその先日の事件で情報を共有したってことなんだろうが……ピンポイントでオレらを名指したぁ、相当な事情通がいやがるな。
んでおそらくその『ヒノカミ』ってのが鍵なんだろうぜ」
「……そろそろ時間だよ。
連中が訪ねて来たって報告は来てないのかい?」
「いや、守衛からは何の連絡も……」
「おぉーっ!マジで一瞬じゃん!
そういやアタシも転移系個性を体験すんのは初めてだ!」
「「「!?」」」
指定された時間の直前、会議室の一角に突如この場にいないはずの女性の声が響く。
全員が一斉にそちらを見ると、ミルコとホークスが立っていた。
その後ろには明らかに顔色が悪く大人しいエンデヴァーと、俯いている謎の和装の女性。
「ミルコ!?ホークス!?」
「どうも、お邪魔しますオールマイトさん。
随分大声出しちゃってますけど、大丈夫ですか?」
「あ?あぁ、要望の通りここは完全防音室だから……ってそうじゃなく!」
「……そちらの、ヒノカミという女性の個性ということでいいのかな?」
先日の事件の中継映像は根津も見ていた。
見知らぬ乱入者の女性が使っていたのは、炎だったはず。
完全に宙に浮いていたことも気にはなったが、そちらはまだ個性を何らかの形で応用したと言えば説明がつく範囲だった。
しかし前兆すらなく一瞬で、この強固な密室に同行者を連れて転移するのは明らかに別の個性。
複数の個性持ち……AFOの影がちらつく。
「……このっ」
「!?」
「馬鹿者がぁああ!!」
「ぐはぁっ!?」
「「「オールマイト!?」」」
ヒノカミという女性は周囲から視線が向けられる中で、彼らにも察知できないほど一瞬でオールマイトの前に移動し、その顔面を殴り飛ばした。
壁に背中を打ち付けられた彼の胸倉を掴み、小柄な体からは信じられない力で更に壁に押し当てる。
「ふざけるな!なんじゃその姿は!
何故そんな姿になるまで止まらなかった!?
それで菜奈が喜ぶとでも思うたか!?」
「ゲホッ……キミは……?」
「貴様らも、何故こんな姿になるまでこ奴を放っておいた!?
何故殴ってでも止めんかったんじゃ!?
根津も!治与も!空彦も!未来も!
……未来、も……」
大声でまくし立てていたヒノカミの声が、少しずつ小さくなっていく。
「未来は……本当に死んだのか?」
「!?……あぁ……」
佐々木未来。
それはオールマイトのサイドキックであった『サー・ナイトアイ』の本名。
意見の違いからおよそ6年前に袂を分かったが……先日、ようやく会合を果たした。
凶悪なヴィラン事件にて瀕死の重傷を負った彼を看取るという、望まぬ会合ではあったが。
「……ヒノカミさん」
「……すまん、ホークス」
ホークスに促され、ヒノカミはオールマイトから離れる。
「とっくに開始予定時間も過ぎてますし、お互い多忙な身です。
……始めましょう。いいですか?」
ホークスが音頭を取り、それぞれ4人が向かい合う形で計8人が着席する。
「さてお察しのことと思いますが、オレとエンデヴァー・ミルコの3名は『ワン・フォー・オール』とやらの存在を知りました。
無論、他の人間には一切漏らしていません。公安にもです。
まずは我々の情報に誤りがないかを確認していただきたい。ご清聴ください」
ホークスは語る。
『ワン・フォー・オール』とは『オール・フォー・ワン』の弟が持っていた個性。
AFOが植え付けた『力をストックする個性』と彼自身が持っていた『個性を譲渡する個性』が混ざり合ったもの。
兄の凶行を止めるため、弟はその個性を意志と共に次の世代へと託してきた。
グラントリノは7代目OFA継承者『志村菜奈』の盟友。
オールマイトこと『八木俊典』が8代目であり、根津校長とリカバリーガールはその協力者。
現在雄英生徒である『緑谷出久』が9代目。
無個性の一般人にすぎない彼を9代目継承者に選んだ理由は。
「オールマイトの代で『個性の複数所持が肉体に負担を与えるため無個性でなければワン・フォー・オールの力を発揮できない』と発覚したから、であってます?」
「なんだって!?」
「『ワン・フォー・オールの継承者は無個性でなければならない』……?
すまない、それは僕たちも初耳だ」
「は?え、ご存じない?じゃあ何で無個性の少年を……?」
「この馬鹿の独断だ。まぁ今となっちゃ悪い選択じゃなかったと認めてやるが……。
あぁ、最後の以外は全部あってる。間違いねぇ。
んで、その情報源ってのは……」
「……えぇ。オレたちにワン・フォー・オールに関する情報を明かしてくださったのは、こちらのヒノカミという方です」
ホークスに促され、ヒノカミは立ち上がる。
オールマイトたち4人の視線が彼女に集中する。
「……はじめまして、じゃな。
儂はヒノカミ……いや、六道リンネ。
6代目ワン・フォー・オール継承者の生まれ変わりじゃ」
「生まれ変わり!?」
「アナタが、6代目!?」
かつて7代目である志村菜奈から先代の継承者の話を聞いたことがある。
それが正しいのなら、6代目継承者は『煙』という名の青年だったはずだ。
生まれ変わりというのはよくわからないが、彼女がその青年の記憶を持っているということだろうか?
「いや、主らの想像とはちと違う」
しかし彼女の正体は彼らの想像もつかない、信じがたいものだった。
「儂は『六道リンネ』という小娘が6代目ワン・フォー・オール継承者となった平行世界において、己の個性により転生を果たした『六道リンネ』の生まれ変わりじゃ」