「……っ、貴様ぁ!一体どこでそんな技術を身に着けた!?」
「かっかっか、護身術は淑女のたしなみじゃよ?」
「ふざけるな!新人とは言えプロヒーローの俺を投げ飛ばす技のどこが護身術だ!!」
「やれやれ、じゃがまだ小学生の妹に一本取られたなぞ知られれば折角の雄英首席卒業の名に傷がつくか。
安心せい。黙っといてやるからのぅ」
「ぐぅっ!?覚えていろよ舞火ぁ!!」
「いや忘れた方がええじゃろ!?」
――――……
「ぐはっ……いきなり何をする!?」
「貴様ぁ……金で嫁を買うとはそこまで堕ちたか!
そこに直れ!!叩き斬ってくれる!!」
「人聞きの悪いことを言うな!!
出資者からの紹介を受けただけだ!!」
「舞火さん、私も自分の意思でこの人を選びましたから……」
「冷殿……出資金は迷惑料と受け取って下さればよい。
望むのなら、今すぐ家にお帰り頂いても構いませぬ。
対外的にもそちらに一切の不都合がないよう、可能な限り対処させていただきますので」
「……伝統に拘りしがみつくだけの、不自由で古臭い家です。
こうして連れ出していただいたことを感謝こそすれど、恨みに思うことなどありません」
「……なんぞやらかしたら、真っ先に儂に知らせてくだされ。
締め上げますので」
「ふふ……そうさせていただきますね?」
「お前たちは俺をなんだと思っている!?」
――――……
「おい舞火!どういうつもりだ!
俺のところに来ないだけならまだしも、よりによってオールマイトのところに行く……な、ど……?」
「あぁすまぬ兄上、ちと待ってくだされ。今取り込み中でな」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」
「暴れるだけ暴れて事務処理丸投げとはどういう了見じゃ貴様ぁ……ナンバーワンなぞ煽てられて天狗になっとるんか?あ~ん?」
「くっくっく、六ど……轟よ、もっと言ってやってくれや。
この馬鹿はどうにもそのあたり、何度言っても聞きゃしねぇんだ」
「お、そうじゃ兄上。
兄上んとこの事務所は新人ヒーローの事務研修あったじゃろ。
コレも受けさせてやってくれ。
コイツ馬鹿じゃ。イロハから叩き込まんとマズイ」
「えぇっ!?いや私も一応雄英出身だからね!?
基礎くらいはちゃんと学んできたからね!?」
「学科はほぼ赤点だったろ」
「その基礎は今も覚えておるんか?」
「……」
「……では行こうか。
兄上のとこの儂の同期らと一緒に学びなおせ。2カ月ほど」
「Noooooooo!!
HELP!!HELP Meeeeeeeeee!!!」
「……おい、勝手に決めるな」
――――……
「燈矢をヒーローにするだと!?
何を考えている!?
アイツは自分の個性に肉体が耐えられんのだぞ!?」
「だからこそじゃ。
個性は身体能力の一つ。
たとえヒーローでなくとも生涯使わずに済むことなどあるものかよ。
自分の個性で傷つかぬよう扱い方を学ばせたいなら、ヒーロー候補生という立場が一番都合が良かろう」
「だがっ!」
「それにな……親が子供の夢を否定してどうする?」
「っ!?……」
「アナタ……」
「……サポート会社に連絡を取ってくる。
昔作らせたものがまだ使えるかもしれん。
……貴様が言い出したことだ!
貴様の個性と時間、燈矢のために捧げてもらうぞ!」
「かっかっか、言われるまでもない。
みっちりしごいてやるわい」
――――……
「燈矢……合格おめでとう。よく似合ってるわよ」
「違うぜお母さん!
今日からオレはフレイムヒーロー『ブレイザー』さ!!」
「フン!まだまだケツの青い新人が、随分と威勢のいいことだ」
「そのにやけヅラと炎抑えてから言えよ……ホント、めんどくさいツンデレ親父なんだから……」
「……燈矢兄」
「焦凍……オレは一歩先に行く!
お前も追いかけてこいよ!?
抜かせねーけどな!!」
「うん」
「ほらほら、みんなも運ぶの手伝って!
折角のパーティなのに、お料理が冷めちゃうじゃない!」
「かっかっか、安心せい。儂が絶妙な火加減で温めなおしてやるわい」
「堂々と個性の不正使用宣言すんなよ舞姉……」
「……いいか燈矢。
技術はともかく、コイツのこういうところだけは見習うなよ?」
「うん」
「折角じゃ、記念撮影といこうか。
ほれ燈矢は真ん中、兄上たちはその両隣じゃ。
焦凍は……そっか、燈矢の前が良いか。
儂?儂は後でよい。一旦お主らだけで撮ろう。
よし、では行くぞ。
1たす1は~?」
「「「「にぃーーーーっ!!!」」」」
「……ぐぉぉぉぉおおおおおおおおっ!!」
ヒノカミのテリトリーにより再現された彼女の記憶の立体映像。
エンデヴァーの……轟炎司の夢見た光景がそこにあった。
思わず駆け寄り触れようとして、でも幻に触れることはできなくて。
手がすり抜けた瞬間に、もうこれは自分では絶対に手に入れられないものだと思い知らされ、彼は周囲の目も憚らずその場にうずくまり泣き叫んだ。
「うぉぉぉおおおおお……おぁぁぁああああっ、あ、ああぁぁぁ……っ!!」
笑顔で家族たちと肩を組む自分自身が、どうしようもなく眩しかった。
顔を上げることもできず、溢れる涙が会議室の冷たい床を濡らし続けた。