『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第8話 クラス対抗訓練

雄英1年ヒーロー科、A組とB組の初めての合同訓練であり直接対決。

生徒たちは各々冬用に刷新したコスチュームに着替え、廃工場を模した訓練場に集合する。

互いに新しいコスチュームを品評し合ったり、初めての合同訓練に意気込んでいたり、相手クラスへの敵意がやたらと高かったりと色々だ。

 

「今回、ゲストが『2人』います」

 

「しょうもない姿はあまり見せないでくれ」

 

そうして相澤から生徒たちに紹介されたのは、普通科Cクラスの心操。

体育祭にて本戦出場という結果を残した彼は、ついにヒーロー科の生徒たちと一時的にとはいえ肩を並べて戦えるところまで這い上がって来た。

今日の試合は4人1チームの試合形式で行われ、うち2回は心操が5人目として参戦する予定だ。

チームと対戦相手の組み合わせは定番のくじ引き。

 

「そんでもう一人は参加者じゃなく観戦者なんだが……」

 

「わーたーしーがー!来た!!」

 

「「「オールマイト!?」」」

 

「……ってアレ?ゲスト?」

 

いつものノリで現れたオールマイト。

しかし彼は教師なのだから、ゲストとして呼ぶのはおかしくはないか?

生徒たちは訝しむ。

 

「オールマイトさん……紛らわしい登場しないでください。

 生徒たちが混乱する」

 

「ごめんごめん。

 だけど一応、私が彼女の案内役を任されているからね」

 

「彼女……?」

 

そして細身だが長身のオールマイトの背後から出てきたのは……小柄な和装の女性。

 

「やぁやぁ諸君、お邪魔させてもらうぞい」

 

「紹介するよ、『ヒノカミ』さんだ」

 

「……あ!この間の中継の!」

 

「エンデヴァーたちと一緒に戦ってた女の人だ!!」

 

「……あの炎使いか……」

 

「……かっかっか」

 

ヒノカミは覚悟はしていたが、見知った顔から他人のように見られるのは中々に堪えた。

特に、顔に酷いやけどを負った甥が敵意にも似た対抗心を込めて睨みつけてきた時には、胸が苦しくなった。

表情には、出さなかったが。

 

「こちら、根津校長やオールマイトさんの古いお知り合いだったらしい。

 お二人に会うために雄英を訪ねてこられたんだが、折角だから今日の君たちの訓練も見てはどうかと校長が提案されてな」

 

「『元』プロヒーローだそうだが、諸君らも知っての通りその実力は非常に高い。

 外部の人間の前で、無様は晒さんようにな」

 

「かかか。だが肩肘を張る必要はない。

 今の主らがどこまでできるのか、先達の儂にありのままを見せてくれ」

 

「「「はい!」」」

 

生徒たちはヒノカミに質問したかったようだが、試合前であることを言い訳にして追及を逃れた。

そしてヒノカミはオールマイトと共に速やかに集団の輪を離れ、会場の隅に移動する。

 

「はぁ……私、『冗談は言っても嘘はつかない』で通してたんだけどなぁ……」

 

「かかか、嘘は言っておらんではないか。

 儂が『オールマイト』の知人であることは事実であろう?」

 

「それ詐欺師の手口じゃないかい?」

 

ヒノカミは先日結成された『トップヒーロー連合』の切り札だ。

すでに公共の電波に身を晒してしまったとは言え、その存在は可能な限り秘匿したいところ。

特にA組の青山がAFOのスパイだと言うのなら彼に情報を与えるのは避けるべきだ。

ここで彼を追及してもトカゲの尻尾切りにしかならないと放置を決めたとしても。

それを無視してまで彼女がこの場に現れたのは、9代目であるこの世界の緑谷出久の実力を確かめるためだった。

 

「最高出力は瞬間20%、腕を負傷したため蹴り技が主体、で間違いないのよな?」

 

「あぁ。それと爆豪少年は確かにワン・フォー・オールのことを知ったが、それはつい先日だ。

 以前の二人の関係は『最悪』の一言だった。

 今はようやく改善の傾向が見えてきたところさ」

 

「……正直、ツライな」

 

近い内に引き起こされるだろう敵連合との再戦、確実に何らかの形でAFOが参戦してくるはず。

監獄に捕らえているとはいえ油断はできない。

事実、犯した罪を鑑みれば当に処刑されるべきはずの奴は未だ生かされている。

奴のシンパが圧力をかけているのだろう。

奴の影響力が健在だという証拠だ。

 

そしてAFOと戦うならば、個性を奪われる可能性が低いOFA継承者である緑谷が主体となって相手をしなければならない。

AFOがOFAを奪えないことは、ヒノカミもオールマイトも体験済み。

一人で戦わせるわけにもいかないので、彼と連携が取れるパートナーも必要だ。

大勢連れても足手まといになりかねないので、特に実力が高い者を選びたい。

ヒノカミの故郷の緑谷と爆豪なら実力面でも相性面でも何の問題もなかったのだが。

 

「出久は確定じゃが、爆豪を連れていくかは今日の結果次第としよう」

 

仮に彼以上に緑谷とうまく連携できる生徒がいるならそちらにも事情を説明し、協力を仰ぐことを検討している。

ヒーロー候補生……学徒を動員するなど本音では避けたいのだが、こちらでもヒーローオタクであるらしい緑谷のサポーターにプロヒーローを宛がっても彼が全力を発揮できるとは思えない。

彼を知り、彼と連携できるパートナーを同年代から探すしかないのが現状だ。

 

「爆豪以外と言えば……飯田、麗日、焦凍か」

 

「こちらの世界でも、彼と特に仲が良いのは今キミが挙げた面々だと思う」

 

「お手並み拝見じゃな」

 

試合映像はエンデヴァーたちにも見せる予定だが、緑谷とパートナーを指導をするのはヒノカミであり決定権は彼女にある。

この試合の結果が、敵連合との戦いを大きく左右することになるだろう。

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