『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第9話

クラス対抗の勝負は4セット目まで終了。

間もなく緑谷が出場する5セット目が開始予定であり、候補として目をかけている麗日も参戦している。

 

「儂んとこの焦凍と比べるのはかわいそうじゃが、それでも頭一つ抜けてはおるか。

 ……じゃがあ奴と連携させるのは、やはり難しいの」

 

燃焼も凍結も、どちらも出力を抑えなければ周囲を巻き込む無差別攻撃になってしまう。

熱関連能力使いの宿命みたいなものだ。

ヒノカミのような精密操作能力を持たない限り付きまとう問題。

単独行動か対抗できる能力持ちと組ませないと全力で戦えない。

 

「飯田も悪くはないが……勝己が予想よりだいぶマシじゃったな」

 

「あぁ、私も彼の成長を大きく感じたよ」

 

他者を見下す傾向が強いと聞いてはいたが、彼なりに周囲と連携することを覚えていた。

連携というよりは『利用』という感じではあったが、以前の彼を知る者にとっては大きな変化だったらしい。

 

「残念ながら他の生徒に目ぼしい者はおらんかった。

 後は出久自身と麗日か」

 

「……おっと、会敵したようだね」

 

単独で先行して標的になりB組の居場所を探ろうとしてた緑谷が、B組物間と衝突した。

彼が緑谷を抑えている内に残るメンバーがA組の3人を撃破する予定らしいが。

 

「……む?」

 

挑発してくる物間を攻撃しようとする緑谷の様子がおかしい。

風圧による遠距離攻撃を仕掛けようとしていたようだが、その腕から黒いエネルギーの紐が幾重にもあふれ出した。

腕から伸びた紐が工場を模した演習場の至る箇所にくっつき、逆に緑谷本人を振り回している。

最初は緑谷の新技かと思い込んでいた生徒や教師たちも、異常事態に気付き始めた。

 

「……『黒鞭』じゃと!?」

 

「ヒノカミ!?あれを知っているのかい!?」

 

「儂の先代……5代目の万縄先輩の個性じゃ!

 じゃが何故……ワン・フォー・オール……個性を引き継ぐ……まさか!?」

 

考察でヒノカミの思考が止まり、行動が遅れた。

その間に麗日が緑谷に抱き着いて動きを止め、心操の個性の力を借りることで、沈静化に成功したらしい。

相澤たちはその間に彼らの近くへと移動し待機。もう少し様子を見ることにしたようだ。

可能ならヒノカミも向かいたかったが、今は外部の人間の立場なので踏みとどまった。

 

緑谷が暴走させた黒鞭から避難する内に生徒全員が一か所に集まり、乱戦が始まった。

緑谷は再度暴走する危険を考慮し、一度だけ黒鞭を使用したもののそれ以降は個性を大幅に抑えて戦い心操を撃破した。

その間に麗日が活躍し、最終的にA組の勝利となったが……。

 

「えー、とりあえず緑谷。

 何なんだおまえ」

 

「……」

 

相澤からの質問に、生徒らもざわつき始める。

緑谷は自分の個性を『超パワー』と説明していたし、彼自身もそうだと思い込んでいた。

明らかに性質の異なる個性を使い始めたとなれば追及されるのも必至だろう。

 

「凄く黒いのが顕現していたが」

 

「暴走していたが、技名は?」

 

「『黒鞭』じゃ」

 

「なっ、なんで!?」

 

「ヒノカミ!?」

 

割り込んできたゲストに一同の視線が向く。

特に個性の名前まで言い当てられた緑谷の反応は顕著だ。

 

「体から黒い鞭状のエネルギーを放出して、遠方の対象を掴んで引き寄せたり、捕らえたりする個性じゃ。

 扱い慣れれば複数を同時に操作したり、一本に束ねて武器にしたりと、非常に応用力が高い個性じゃよ」

 

「……ヒノカミさん、アンタなんでそんなこと知ってるんです?

 まさか緑谷とも知り合いだったりするんですか?」

 

「正真正銘、『彼とは』初対面じゃ。

 何故彼がその個性を使えるのか……彼自身はよく理解できておらんかもしれんが、儂はなんとなく予想がついておる。

 ……じゃが詳細は秘密じゃ!何故なら……『その方がカッコイイから』!」

 

ヒノカミにまともに会話をする気がないと判断した相澤は『抹消』で彼女の個性を使えなくして捕縛布で捕らえようとする。

 

「そう急くな。

 伝えたところでどうにもならんという意味でもあるんじゃよ」

 

「「「!?」」」

 

しかし彼女は一瞬で相澤の隣に移動し、彼が伸ばそうとしていた捕縛布を掴んでいた。

これだけ大勢の人間が注視していたのに、彼女の動きに反応できた者はいなかった。

何かが通り過ぎた後の風で、ようやく高速で移動したと気付いたくらいだ。

 

「かかか……まぁ悪いものでないことは保証する。

 それはかつて、ある偉大なヒーローが使っていた個性じゃ。

 これと言ったデメリットもない。彼の力強い味方になるじゃろう」

 

「……」

 

相澤は暫く無言でヒノカミを睨みつけたが、やがて個性を解除し腕を下す。

 

「……校長とオールマイトに免じて、今は信じます。

 ですが緑谷に何らかの不調や問題が生じるようなら……」

 

「わかっておる。

 やはりお主は、良い先生じゃな」

 

ヒノカミも手を放し、背中を向けて立ち去って行った。

オールマイトが慌てて後を追う。

 

「ヒノカミ、なんで口を出したんだい!?」

 

「青山がこの場にいる以上、オール・フォー・ワンの陣営に情報が流出するのは避けられん。

 せめて仲間内の不和が起きぬよう、ヘイトを儂に向けておいた方が良かろう」

 

「っ……そりゃ、そうだけどさ……」

 

「しかし良いものが見れた。歴代継承者の個性が発現するとは。

 確実に勝率は上がるぞ。

 ……出久のパートナー候補も決まったしな」

 

「え?決めたの?誰!?」

 

「『爆豪勝己』……そして『麗日お茶子』じゃ。

 出久と併せたこの3名を、我ら『トップヒーロー連合』に勧誘する」

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