『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

175 / 786
第13話

「さぁて……困ったことになったね」

 

「「「…………」」」

 

泥花市での敵連合と異能解放軍との戦いから暫く彼らを監視していたが、ついに彼らは結託し『超常解放戦線』を結成した。

死柄木弔は、容易にヒーロー社会を崩壊させられる戦力を手に入れてしまった。

それを受けてトップヒーロー連合もまた研究所に集まる。

 

「『この世界の事はこの世界の者が対処すべき』……こりゃ公安の連中を笑えんの。

 勝ち方を考え二の足を踏んだ愚者は儂の方であった。

 ……悠長なことを言う前に、早々に片を付けるべきであった……」

 

「いや、たとえキミが敵連合を倒していたとしても異能解放軍は残っていた。

 キミがまだこの世界にいた内に事態が判明したことを、幸運と思わなければ」

 

「……すまんな、根津」

 

今でもヒノカミなら彼らを止められる。だがその方法が問題だ。

相手は死をも恐れぬ狂信者たち。一人一人捕縛する余裕はない。

そんなことをしている間に多くの市民が殺される。

ヒノカミが犠牲なく彼らを止めるには……皆殺ししかない。

10万人以上いるという超常解放戦線を、一人残らず。

やろうと思えばできるが、それは確実にこの世界に大きな混乱をもたらすだろう。

そして事が終わればヒノカミはこの世界を去るのだ。

好き放題暴れて傷跡だけ残して、この場の皆に後を押し付けて逃げるような真似はできない。

 

「しかし実際問題どうします?

 オレらはまだ、ようやく霊力とやらの取っ掛かりを掴み始めた段階ですよ?」

 

「それでも予定より早いがな。

 ……えぇい、この戦力差では半年では時間が足りぬ。

 お主らだけで解決するなら修行期間が1年はなければ……」

 

「たった1年か……言いすぎ、とは言えんな。

 この短期間でここまで伸びるとは、我ら自身も驚愕するばかりだ」

 

「だが牙を研ぎ続けてきた死を恐れぬ10万の戦士。

 彼らを統率する元敵連合及び元異能解放軍の幹部たち。

 死柄木弔、そして強力な脳無が複数……。

 連中が1年も待ってくれるとは思えない。となれば……」

 

「「「…………」」」

 

戦力が足りない。圧倒的に。

こちらが得た情報は根津を通じて公安にも流しているが、彼らも浮足立っていることだろう。

 

「……俺らの勢力に引き込む人員を増やせねぇか?」

 

「不可能ではないが、精々2~3人じゃな。

 それ以上はどうしても儂のサポートの質が落ちる」

 

特に簡易ヘルメスドライブと治療用核鉄が問題だ。

製作の手間はもちろん、あれらは使おうと思えばだれでも使えてしまう。

安易に配って敵の手に渡れば厄介だ。

安全に管理できる数を超えて作るわけにはいかない。

 

「それじゃあ焼石に水か」

 

「だが今は少しでも人手が欲しい。新たなメンバーを厳選しよう」

 

「じゃな。覚悟と実力が備わったプロヒーローが望ましい。

 これぞという候補が居れば儂に推薦してくれ」

 

「……となりゃ、今は訓練をハードにするしかねぇんじゃねぇか?」

 

「今でも結構ハードなんやけど……ううん!

 そんなこと言うてられへんもんね!頑張る!!」

 

呪霊錠をつけているため日常生活での変化はないが、全員が僅かながら霊力を内包し始めている。

解放すれば瞬間的になら非常に高い身体能力を発揮できるようになっていた。

一番力が弱いお茶子でさえ、一瞬だけならOFA10%くらいのパワーを出せる。

そしていわゆる霊感が備わった。これは呪霊錠をつけていても関係ない。

気配や危険を察知できるというのは、ヒーローにとってこの上ないメリットである。

 

「その件についてなんだが、機会を得た。

 公安委員会から『インターンの要請』が来ているのさ!」

 

「要請?そりゃまさか……」

 

「本格的に学徒動員を考えている、ということだろうね……」

 

「……情けないな。

 一番情けないのは、そうでもせねば解決できぬと理解してしまう、我ら自身の無力だ」

 

OFA継承者だからとすでに緑谷を巻き込んでいる。

彼のサポート候補として爆豪と麗日もだ。

今の自分に公安を非難する資格はないと、ヒーローたち自身が理解している。

 

「だが確かに、インターン期間中なら3人の訓練時間を大幅に増やせる。

 我々ヒーローも生徒の受け入れを理由に時間を作れるはずだ。

 バクゴー、キミは私のところへ」

 

「……チッ」

 

「よっしゃ麗日!オメーはアタシんとこ来い!

 この機会に本腰入れてやり合おうぜ!!」

 

「うひぃ~……でもしゃあないですね。わかりました!」

 

「緑谷くんは?オレんとこ来ます?」

 

「いや、ホークスくんは元々行動が自由だと知られているからね。

 ここはエンデヴァーに頼む形を取ろう」

 

「む……」

 

しかし名指しされたエンデヴァーの反応が鈍い。

 

「どうした?」

 

「インターンでは、焦凍に声をかけるつもりだったのだ。

 ……いや、応えてくれるとも限らんか。

 わかった、緑谷は俺のところへ」

 

「エンデヴァー……」

 

ここにいる面々は、すでに彼の家庭の事情を知っている。

エンデヴァー自身が贖罪のように明かしたのだ。

ヒノカミの記憶を見て、もう一つの世界の自分自身に負けないように必死に家族との絆を取り戻そうと足掻いているが、残念ながらうまくいっていないらしい。

 

「……よし!

 エンデヴァー、焦凍と出久の両名を受け入れよ。

 ……というか根津、無理やりにでも選ばせぃ」

 

「え!?でもそれじゃあ轟くんに隠れて特訓しなきゃいけなくなるんじゃ……」

 

「じゃから儂も同行し、可能な限り付き添う。

 付きっ切りで面倒見てやれば多少の時間不足は解決できるじゃろ」

 

トップヒーロー連合結成直後に根津に依頼していたヒノカミの偽プロフィールも出来上がっている。

一度大々的にエンデヴァーと共闘もしているのだ。違和感はそうないだろう。

 

「ヒノカミ……だが」

 

「わかっておる。焦凍をここに引き込むつもりはない。

 ……これ以上学生を巻き込む真似は、儂もしたくない」

 

「……すまん」

 

もう夜遅い。なので今後の方針が固まったところで解散となったのだが。

 

「……皆の者、待て」

 

「「「?」」」

 

「解放戦線に動きがあった」

 

「「「!?」」」

 

今も解放戦線に潜み情報を集めている赫月と白星からの連絡だ。

会議室の外へ出ようとしていた全員が引き返す。

 

「死柄木弔が組織を離れた。どうやら何らかの『力』を得る強化手術を受けるらしい」

 

「手術……?」

 

「……いよいよ出てきたってことですね、『オール・フォー・ワンの協力者』とやらが」

 

赫月たち越しにだが死柄木の魂の情報は得ている。

時間はかかるが、スピリット・サーチ・システムで居場所を見つけられるだろう。

そしてそこには協力者もいるはずだ。

 

「んで、あのヤローはどうなるってんだ?」

 

「わからんが、碌なことにはなるまい。

 ただ『力』とやらを得るには時間がかかるらしい。

 ……連中の決起は、『4カ月後』じゃ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。