『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第14話 インターン

「よぅ」

 

「アンタは……たしか、ヒノカミ」

 

緑谷と共にエンデヴァーの元にインターンに来た焦凍は、待ち合わせ場所で彼の隣にいた見覚えのある人間に声をかけられる。

福岡での事件以降、エンデヴァーが彼女と行動する姿は何度か目撃されている。

事務所にゲストが来ていると言われ、なるほどと思った。

 

「エンデヴァー、今日からよろしくお願いします!」

 

「……あぁ」

 

「丁度良かった。アンタには聞きたいことがあったんだ」

 

「構わんぞ。では道すがら話そうか」

 

エンデヴァー、ヒノカミ、そのすぐ後ろに緑谷と焦凍が続き、エンデヴァー事務所へと歩いていく。

 

「……なぁ、あん時福岡で何があったんだ?」

 

「何が、とは?」

 

「あの後から、親父の様子がおかしくなった。

 妙にオドオドビクビクしやがる。

 ……今だってそうだ。

 以前の親父なら、こんな事言われたら絶対食いついて否定してた」

 

「……」

 

焦凍は敢えてエンデヴァーにも聞こえるようにヒノカミに尋ねた。

 

「かかか……悪いが、詳しくは語れぬ。

 じゃが彼の価値観を激変させることが起きたのは確かじゃ。

 彼は今、自分の過去の行いと、お主ら家族と向き合おうとしている。

 ……お主らに異様と嗤われてでもな」

 

「……オレが言えた事じゃねぇけど、空回りしっぱなしなんだ。

 姉さんはまだ好意的に受け止めてるけど、夏兄なんか気味悪がってる」

 

「……かかか……」

 

この会話もまた聞こえているエンデヴァーは反論するでもなく、無言で前を歩く。

ただ、その背中は明らかに小さくなっていた。

 

(こりゃあ……予想より遥かに深刻じゃなぁ……)

 

この世界での轟炎司の行いは、彼自身から説明を受けている。

己惚れではないが、自分の有無でここまで変わるとは思いもしなかった。

 

(あの仲良しヒーロー一家がなぁ……)

 

ヒノカミの故郷のエンデヴァーは一部では『理想の父親』とまで言われていた。

暴走気味だが、子供たちにもしっかりと愛情は伝わっていたはずだ。

……仲の良い彼らを知るからこそ、この世界の轟一家を見る度に胸が苦しくなる。

 

「「「……」」」

 

「?どうした?」

 

3人が突然立ち止まり、訝しんだ焦凍が声をかける。

そして彼らは一斉に飛び出した。

 

「っ!?おい!?」

 

3人の奇行に驚くが、直後彼らの向かう方向から衝撃音が聞こえて状況を察する。

 

(ヴィラン!?なんで気付いた、緑谷まで!?)

 

焦凍もコスチュームが入ったトランクを掴んで追いかけるが、距離が離されていく。

エンデヴァーは両足から圧縮した炎を発して。

ヒノカミは足の裏で火種を爆発させ反動を推進力に。

緑谷は『黒鞭』とかいう最近使えるようになった個性で建物を掴んで自分を引き寄せるを繰り返して。

 

(くそっ、なんで、オレだけ!?)

 

「しゃーないの」

 

「!?」

 

ヒノカミが一度足を止め、焦凍に並ぶ。

そして隣に来た彼をひょいと肩に担ぎ上げる。

 

「口閉じとけ。舌嚙むぞ」

 

「なんっ……!?」

 

ヒノカミは今まで以上の爆発を踏み台にして、その反動で一気にエンデヴァーたちとの距離を詰める。

 

(加減、してたのか!?)

 

「……答えんでいいから、聞くだけ聞け。

 確かにお主の父は、父親としては駄目人間かもしれんが……」

 

ヒーローとしては、最高峰。

 

エンデヴァーは老人のヴィランが操る巨大なガラスを破壊し即座に鎮圧。

控えていたらしいヴィランの協力者と思われる浮浪者たちが彼に襲い掛かるが、そちらは緑谷が黒鞭で拘束した。

 

「……」

 

「かかか。出久も随分仕上がってきたが、まだまだエンデヴァーには及ばぬな」

 

焦凍はヒノカミに抱えられ、上空から一部始終を見ているだけだった。

 

「いいところは参考に。駄目なところは反面教師に。

 色々あったのは知っとるが許す許さないは置いといて、ちゃんと見ておけ。

 それがお主のヒーローへの道に繋がる」

 

「……チッ」

 

その後警察と付近のヒーローにヴィランたちを任せ、4人はようやくエンデヴァー事務所に辿り着く。

しかし流石はナンバーワンヒーロー。

事務所と言うにはあまりに巨大で、正直なところ高層ビルだった。

サイドキックは30人以上、彼らの宿泊施設を兼ねているとはいえあまりにも大きすぎる。

 

「ようこそ!エンデヴァー事務所へ!!」

 

緑谷と焦凍をサイドキックたちに一旦預け、エンデヴァーとヒノカミは奥のエンデヴァー専用執務室に入る。

 

「儂の世界の事務所はもう少し小さかったんじゃが……見栄かの?」

 

「ぐっ……そう、なのか?」

 

「……ハァ。しっかりせんかい。

 焦凍が根津に言われるまでもなく、自分で志願したと聞いたぞ?

 肝心のお主がその様でどうする?」

 

エンデヴァーは間違いなくトップヒーロー。

先ほどもあれだけ腑抜けておきながら、緑谷よりも先にヴィランに気付き、瞬く間に鎮圧してみせた。

世界は違えど、やはり彼はヒーローとしてはこの上なく優秀。

ならばそのように振舞わせたほうがまだマシだろう。

 

「……『父親らしく』とかは一旦諦めぃ。

 お主はそっち方面に関しては経験が不足しすぎておる。

 正しい親子のコミュニケーションなぞ、いきなりできるはずもなかろう」

 

「ぐぅ……では、どうすれば……」

 

「『先輩ヒーロー』として、『後輩ヒーロー』の面倒を見る形で行け。

 そっちの方なら百戦錬磨じゃろ?」

 

こちらの世界のエンデヴァーをよく知るわけではないが、ここのサイドキックたちからは非常に慕われている様子。

リーダーとしての彼は故郷の世界の彼と遜色ないはずだ。

 

「過剰な期待もかけるな。

 ただの『見込みがある新人』として接してみぃ。

 多分、それが一番うまくいく」

 

「……わかった」

 

「この一週間、日中は焦凍と出久に付き合ってやれ。

 その他諸々のことは儂が引き受けよう。

 何を隠そう、儂は『事務処理』の達人じゃぞ?」

 

「……一応は部外者なお前にそこまでは任せられん」

 

「かかか、言い返せる内はまだ大丈夫じゃな。

 ……頑張れよ」

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