『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第18話

インターンを終え、雄英へと戻って来た生徒たち。

そして冬休みも終わり、今日から三学期。

最初のヒーロー基礎学の授業は実践報告会だ。

1年A組の生徒たちもスーツに着替えてグラウンドへ移動する。

担任である相澤も当然参加するつもりだったが急遽呼び出しを受け、同じく呼び出されたプレゼント・マイク……山田ひざしと共に学外へと飛び出した。

 

「USJで戦った……そんな素振り……微塵も……」

 

「俺ぁ……塚内さん達の勘違いに、賭ける」

 

車で移動した先は、とあるヴィランを収容した施設。

警察官である塚内と、先輩ヒーローであるグラントリノに案内され奥に向かう。

開かれた扉の奥にいたのは、囚人服を着て拘束されている……敵連合の幹部『黒霧』。

 

「あまりに精巧で彼が『脳無』だと気付くまでに時間がかかった。

 そしてそのベースになったのが……かつて雄英高校で君達と苦楽を共にし、若くしてその命を落としたとされている男。

 ……『白雲朧』であることがわかった」

 

もう十年以上前。まだ相澤が雄英の生徒だった頃。

彼は親友である白雲と共にインターンに参加し、その時に白雲がヴィランの襲撃を受けて亡くなった。

『俺たち3人で事務所を建てよう』。山田も交えそう話していた矢先のことだった。

目の前で眠っている黒霧に、親友の面影はない。

だが相澤の目は血走り、全身から汗が噴き出している。

 

「……『A組の3バカ』なんて呼ばれもしたよ……意味が分かんねェよ!!」

 

マイクもまた声を荒げる。

信じられない、信じたくないと、現実を否定するかのように。

 

「プレゼント・マイク。イレイザーヘッド。

 ……黒霧から『白雲朧』を呼び覚ましてほしい」

 

「『絆による奇跡』でも期待してるんですか……?」

 

「……あぁそうだ。

 期待してんのさ、『カミ様のとびっきりの奇跡』ってやつを」

 

「フザけてんのか!?」

 

「……とにかく頼む。

 あと事が終わるまで……『何があっても』動くなよ」

 

ガラス越しに黒霧と向かい合う山田、相澤を残して全員が隣の部屋に移動する。

 

『思い出話でもしろってかァ!?』

 

『ご遺族には?』

 

「君達で駄目なら……」

 

塚内、グラントリノ、看守の一人。

そして部屋の隅に、隠れて見えない人影がもう一つ。

 

『こんな気持ち悪い話を親御さんに伝えてたまるか』

 

イレイザーヘッドが個性を発動し、黒霧を睨みつける。

 

「……起きてます」

 

「始めてくれ」

 

『……おや?雄英襲撃以来ですかね……珍しい客だ』

 

黒いモヤに覆われて顔は見えないが、目を覚ましたらしい黒霧が声を上げる。

白雲は明るくて、元気で、子供っぽい青年だった。

声も、口調も、明らかに別人だ。

 

『やっぱ間違えてんじゃねぇのか!?

 コイツと白雲に共通点なんざ……』

 

『死柄木弔は、元気ですか?

 捕まったりしていませんか?』

 

『知っらねーよ!!』

 

山田は声を荒げるが彼の隣にいる相澤は表情を変えず、抹消の個性を止めることもなく、黒霧を見つめている。

 

『……俺が、拾えないと……やり過ごした子猫を、迷わず拾ってくるような奴だった』

 

『……話が見えませんね。何をされにここへ?』

 

『中途半端で二の足を踏んでばかりだった俺を、いつも引っ張ってくれた』

 

『ここを教会か何かと勘違いなされている』

 

『お前はいつも明るくて、前だけ見てた。

 後先なんて考えず……!

 死んじまったら……全部終わりだってのに……!』

 

黒霧のモヤの輪郭が、わずかに揺らいだ。

 

『俺、山田と先生やってるよ。

 生徒に厳しく当たってきた。

 お前に……お前のような誰かを引っ張っていけるヒーローに……長く生きて、ほしいから』

 

相澤が自分の首元に巻いた捕縛布の中から、彼の愛用するゴーグルを取り出し突き付ける。

それは彼が白雲から譲り受けた形見。

 

『白雲。でもまだお前がそこにいるのなら!

 なろうぜ……ヒーローに!……3人で!!』

 

個性を使い続けて血走った瞳で、相澤は涙を流し続けていた。

 

「!?脳波、波形に異常有り!動揺しています!」

 

黒霧の計測を行っていた看守の報告。

それを受けて、部屋の影に隠れていた人物が一歩踏み出す。

 

『私は黒霧……死柄木弔を守る者……』

 

『お前は雄英高校2年A組!

 俺たちとヒーローを志した……!』

 

『白雲、朧!!』

 

二人の叫びが、届いた。

黒霧のモヤが形を変え、彼らの知る『白雲朧』の輪郭を浮かび上がらせた。

 

「今じゃあ!!!」

 

そこで突如監視室から上がった絶叫に、相澤と山田は思わず動きを止めてしまう。

そして目の前、ガラス越しに向かい合う白雲の隣に何者かが出現したことに気付いた。

 

『ヒノ……!?』

 

転移で移動してきたヒノカミが、黒霧の全身を炎で包み込んだ。

 

『白雲ぉっ!!』

 

『てめェエエエエエ!!』

 

「動くなっつっただろうが!!」

 

グラントリノは二人を静止させた後、塚内を連れて部屋に駆け込む。

 

「「「……え」」」

 

そこでガラスの壁を壊してでも飛びかかろうとした相澤と山田、部屋に戻って来た塚内が呆けた声を上げて動きを止める。

 

大きく手を加えられたとはいえ、本人の遺体が残っている。

脳無として蘇生されたことで、変質はしたが魂が再構成されている。

あとは本人の人格が表に出てきた瞬間を狙えば……。

 

「成功じゃよ。相澤、山田」

 

蘇生術『不可死犠』の発動条件が揃う。

 

「あ……?あぁ……!?」

 

消えた炎の中から現れたのは、生前の姿を取り戻した白雲朧。

ヒノカミは拘束具を引きちぎり彼を抱きかかえて、呆けたままの二人の前に転移する。

 

「……なぁ……」

 

「「白雲!?」」

 

遺体が、しゃべった。

相澤と山田が差し出された白雲を受け取り抱き上げる。

 

「なれるかなぁ……オレ、ヒーローになれるかなぁ……!」

 

「っ……あぁ、なれる!なれるさ!!」

 

「オレらだってなれたんだ!決まってんだろ!?

 今度こそ……3人で……事務所を……っ!」

 

10年以上の時を超えて再会した仲間たちが、涙を止めることなく抱きしめ合う。

一部始終を見ていた塚内は脱力し、部屋の壁に背中を預ける。

 

「くくく、サイコーの奇跡だったぜ、『カミ様』?」

 

「からかうな。今回は都合よく条件が揃っただけじゃ。

 死者の蘇生なぞ、そう簡単にできるものか」

 

「……直接目にしても信じられませんよ、こんなの」

 

塚内はあらかじめグラントリノから計画を聞かされていたが、正直『ついにボケたか』と思っていた。

だが今こうして頬をつねっても痛みがあるし、夢から覚めない。

 

「では手筈どおり黒霧の件、他の者には隠し通してくれ。

 看守の彼にも言い含めてな」

 

「本当のことを叫んでも、誰にも信じてもらえないですよ。

 ……で、説明していただけるんでしょうね?」

 

「黙ってて悪かった。ちゃんと連れてって全部話すさ。……アイツらもな」

 

グラントリノは未だに抱き合う3人を指さしながら約束した。

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