『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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切りどころを見失いました。いつもより長いです。
それでも他の作品と比べたら短いですけどね。


第19話 チーム

「えっ!?相澤先生!?」

 

「よぅ、緑谷。麗日と爆豪もな」

 

学校の授業を終え、島の研究所に転移してきた緑谷たちはそこにいるはずのない人物を見つけて思わず声を上げる。

 

「オレもいるぜェ!あと白雲もな!!」

 

「……だれだソイツ?」

 

「オレ、白雲朧!よろしくな!」

 

プレゼント・マイクに紹介されたのは、ゴーグルと絆創膏をつけた白い癖毛の青年。

緑谷たちとはあまり年齢差はないように見える。

雄英教師である相澤たちと一緒にいるということから雄英生徒だと思われるが見覚えはなく、少なくとも同学年にはいないはず。

 

「えぇと、雄英の先輩ですか?」

 

「『元』先輩な。ショータ……相澤たちとは同期だったんだ」

 

「えぇ!?でも随分お若いような……」

 

「オレ、さっきまで敵連合の『黒霧』だったらしいから」

 

「「「ハァ!?」」」

 

「オイお前等、とっとと来い。会議始めんぞ」

 

相澤たちを呼びに来たグラントリノの隣には、疲れ切った表情の塚内がいた。

聞きたいことは多々あるが、会議室にはすでに他のヒーローたちも集まっているはずなので彼らを待たせるわけにはいかないと後に続く。

 

「んじゃ始めるか。

 今日は報告が多いから手早くいくぞ」

 

いつものようにヒノカミが音頭を取る。

 

まず組織に新しく勧誘した戦力の紹介。

イレイザーヘッドとプレゼント・マイクにも事情を説明し、参加してもらうことになった。

そこは緑谷たちも二人がこの場にいたことから予想はついていた。

人格も能力も申し分無し。全員がもろ手を挙げて受け入れる。

しかし問題は3人目。

 

「んで『白雲朧』。元雄英2年A組、相澤たちの友人じゃ。

 本日蘇生に成功したんじゃが当然表沙汰にはできんので、この島で匿うことにした。

 リハビリからになるが、可能なら決戦にも参加してもらえればと思うておる」

 

「えー、白雲朧です!よろしくお願いします!」

 

「……オイ、いい加減ソイツについて懇切丁寧に説明しろや」

 

「HAHAHA!それは僕から行うよ!

 ……彼は十数年前、インターン中に殉職したのさ」

 

当時を知る根津校長が割り込む。

まだ相澤と山田が雄英生徒だった頃、彼ら二人と白雲はクラスメイトで親友だった。

しかし2年のインターンにて、相澤と行動していた時にヴィランと遭遇。

建物の崩落に巻き込まれた子供たちを助けるために自分の個性を使い、肝心の自分は瓦礫の下敷きとなって死亡した。

だがAFOがこっそりと彼の死体を回収していたらしく、脳無の材料とされた。

彼をベースに全身をいじくり回され誕生したのが『黒霧』。

グラントリノが黒霧を捕え敵連合の情報を吐かせようと尋問する内に、彼が脳無であると気付く。

そして調査の結果『白雲朧』を素体としていると判明。

それを聞いた塚内は、彼と親しい相澤たちなら何か情報を引き出せるかもと呼び出したのだが……。

 

「オレが念のためコイツに話したら、『蘇生できるかもしれん』だとよ」

 

「まぁ今回は本当に条件が良かったんじゃ。

 元雄英生徒である彼の身体情報はいくらでも残っておったし、相澤たちで当人の魂を呼び覚ませたからの。

 特例中の特例。他の脳無まで蘇生というのは流石にできんと思うてくれ」

 

「しかし肝心の黒霧の人格が消えてしまったため、情報が得られなくなってしまいましたがね……」

 

「あー……なんかスンマセン」

 

「そう言うな塚内、そもそも情報を得る必要なんざなかったんだからよ」

 

「わかっていますよ……ただ徒労を感じてるだけです。

 ホント、警察って無力ですよね……」

 

「……塚内くん、彼女のことは気にしない方がいいよ。疲れるだけだから」

 

しばらく前からグラントリノが黒霧の尋問に真剣でなくなった時点で、気付くべきだったのかもしれない。

他に情報を得る当てがあるということに。

 

「では続けてそちらの情報共有といこう。

 オール・フォー・ワンの協力者は……こ奴じゃ」

 

既にスピリット・サーチ・システムの解析は終了しており、死柄木弔の所在が明らかになっている。

そしてその地にスパイを忍ばせたことでついにAFOの協力者を突き止めた。

 

「場所は蛇腔総合病院。下手人はその創設者にして理事長、『殻木球大』」

 

「コイツが……!」

 

「間違いない。オレに黒霧だった時の記憶はほとんど残ってねぇが、コイツの顔には見覚えがある」 

 

「医者として表で活動しとるのは偽物じゃ。魂がない。

 病院の奥には立ち入り禁止区域があり、そちらに赫月たちを潜入させた。

 今から映像を映すが……気をしっかり持てよ」

 

ヒノカミは掌を叩いて会議室の全員を覆うテリトリーを発動し、内側に赫月たちが見てきた光景を投影する。

 

「脳無が、こんなに……!?」

 

「……悪趣味な部屋っすね」

 

パイプが張り巡らされた薄暗い空間、大量のカプセルに浮かぶ黒い脳無。

 

「今までの傾向から、皮膚の色が黒いほど戦闘力が高いと思われる。

 であればおそらく、これら全員がトップヒーロー並みの戦闘力を持つと思われる」

 

他にもよくわからない器具や機材が大量にあるが、どれも碌なものではないだろう。

 

「そしてこの奥が……」

 

「殻木……!そして……」

 

「死柄木!」

 

台の上に磔にされ、全身にコードが突き刺され、おびただしい血を噴き出しているというのに狂気染みた笑いを上げ続ける死柄木弔。

そしてガラス越しに彼を見て歓声を上げる殻木の姿。

 

『私とオール・フォー・ワンが求めた究極の人!マスターピース!!

 いいぞ死柄木弔!万事順調想定以上じゃ!!』

 

『HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!』

 

「……オェ」

 

耐え切れなくなった麗日が口を手で押さえたところで映像を止め、テリトリーを解除した。

 

「これが強化手術とやららしい。

 可能なら今すぐにでも向かって止めたいが、超常解放戦線に連絡がいけば連中が一斉蜂起するじゃろう。

 我らだけでは、そちらまで対処できぬ」

 

「この手術とやらが終わる前の3月下旬頃に、解放戦線の連中の定例会議があるらしいです。

 公安にも通達済みですが、どうやらこれに合わせて襲撃をかける予定らしい」

 

「その際にオレら学生を戦力にするためのインターンか……クソが」

 

「全くもって同意じゃが、情けないことに彼らとも足並みを揃えねば戦力が足りぬ。

 よって襲撃予定までに各々限界ギリギリまで仕上げてもらう。

 最低限のヒーロー活動や授業以外は全員ここで寝泊まりじゃ。夜間も修行に使うぞ」

 

「「「了解!」」」

 

A組の担任である相澤も引き込めたのは僥倖だ。

緑谷たちの時間を確保しやすくなる。

そして彼ら自身も高い戦闘力を持ち、やる気も振り切っている。

 

「お主らは一歩出遅れておるのでかなりハードになる。

 ……じゃがオール・フォー・ワンが白雲を黒霧にしたおかげで、白雲は蘇ることができたんじゃ。

 その恩、仇で返してやろうではないか」

 

「「「当然!!!」」」

 

「塚内、これからは主にも全ての情報を回す。

 取り扱いは一任する。警察も頼りにさせてもらうぞ?」

 

「了解です。……ハァ、光明と一緒に地獄が見えるよ……」

 

「塚内くん……ドンマイ!」

 

「いやこれを『Don't mind(気にするな)』は無理だろオールマイト……」

 

相澤たち3人にも簡易ヘルメスドライブと治療用核鉄を用意する。

塚内には渡さなかった。

彼に戦闘力はなく、敵に奪われる可能性が高いためだ。

 

 

 

「……で、この集まりの名前だけどよォ……カッコ悪くね?」

 

新参のマイクが早速意見するが、それはみんな内心思っていたことなので非難の声は出なかった。

『トップヒーロー連合』……相手が『敵連合』だからと言って、あまりにも安直すぎる。

 

「連中も『超常解放戦線』に変わったことじゃし……そろそろ正式名称を決めるか?」

 

ヒノカミはあくまで外様、協力者の立場だ。

仮称こそ彼女が決めたが、正式名称案は皆から出してもらいたいと要望し聞く側に回った。

 

「主軸となるのは緑谷少年……『ワン・フォー・オール』継承者だ。

 であればそこから名前を取るのはどうだろう?」

 

「馬鹿野郎、オール・フォー・ワン以外はワン・フォー・オールを知らねぇんだ。

 情報拡散させかねねぇ名称は却下に決まってんだろ」

 

「ほとんどは雄英関係者だし、『雄英連合軍』とか?」

 

「それでは逆に他の雄英関係者たちを除け者にしているように感じるな……」

 

「『爆殺帝国』」

 

((((ダッッッッッサ!!!))))

 

「HAHAHA!ここは僕の案を聞いてもらえないかい?」

 

話し合いに割り込み視線を集めたのは根津校長だった。

 

「……これはオール・フォー・ワンにより破壊された平和を、ヒーローたちへの信頼を、『もう一度』取り戻すための戦いなのさ!

 だから僕たちのチーム名は……」

 

 

 

「『ワン・モア・タイム』でどうかな?」

 

「ぶーーーーーーーーーっ!!!!」

 

部屋の隅にいたヒノカミが思いっきり噴き出し、全員の視線がそちらに移る。

そして数名がにんまりと、実に悪い笑みを浮かべ根津校長に向き直った。

 

「素晴らしい提案だな」

 

「えぇ、もうこれ以上はないですね」

 

「よし、では多数決を取ろう。

 賛成の人挙手ーーーーーー!」

 

「待たんか貴様らぁぁぁぁあああ!!!」

 

ヒノカミの絶叫虚しく、過半数の賛成によりこの組織の正式名称は『ワン・モア・タイム』に決定した。

 

 

「……ヒノカミくん。これが『民主主義』さ!!」

 

「むがぁぁぁぁぁぁあああ!!」

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