『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第20話

そして3月。

間もなく、ほぼ全ヒーロー及びヒーロー候補生を動員しての超常解放戦線襲撃作戦が行われる。

 

「ではこれより、当日の作戦の最終確認を行う」

 

ヒノカミが島の会議室に集結した『ワン・モア・タイム』のメンバー全員に呼びかける。

 

「主戦場は蛇腔総合病院と、本拠地であり敵幹部が集まる群訝山荘。

 他にも超常解放戦線の拠点は全国に多数あるが、そちらは他のヒーローたちに任せる」

 

彼らとしては、可能なら群訝山荘に突入するヒーローを減らして他の拠点に戦力を回してほしいくらいだ。

……はっきり言って、強さに差がありすぎる。

足並みを揃えていてはこちらの実力が発揮できないのでこの場のメンバーは独自行動を取るつもりだ。

 

「まずはメンバーの分担。

 病院……死柄木弔と脳無の対処は緑谷と爆豪。

 そしてサポートとして儂が向かう」

 

結局、緑谷のサポート役は爆豪に決まった。

麗日もかなり強くなったが彼女はヒノカミの想定とは別ベクトルに成長していた。

ミルコとの訓練が多かったせいだ。

本人の気質もあり、攻撃力よりも生存能力に特化してしまった。

かく乱要員にはなるかもしれないが決定打に欠ける。

 

「なんかごめんなさい。

 折角色々教えてもろたのに……」

 

「何、解放戦線の大軍相手も中々にハードじゃぞ?

 お主ならば安心してそっちを任せられる」

 

「……はい!」

 

ちなみに、死柄木の所在と情報を得ているとは伝えているがその内容は公安に明かしていない。

ヒノカミを参加させることもあり、『対処は我々に一任してもらう』の一点張りで押し切った。

『本物のAFOの個性』を移植されたらしい死柄木相手では余計な人員は足手まといにしかならない。

加えて奴が『崩壊』を伝播させることができるようになった以上、最低でも空が飛べなければ無駄死にだ。

緑谷は『浮遊』……志村菜奈の個性も使えるようになったし、爆豪も空中戦を重点的に磨いてきた。

 

「お主らが殺されたとしても、遺体の損傷が少なく死亡直後ならば儂の蘇生が間に合う。

 じゃがどちらかが一度やられた時点で『お主らでは解決不可能』と判断し、儂が出る。

 ……そして死柄木を殺す」

 

「「……」」

 

「ヴィランすらも守らねばならぬのがヒーロー……。

 お主らがヒーローだというのなら、守ってみせよ。

 儂から、死柄木をな」

 

「「オス!!」」

 

「……そして残るメンバーは全員山荘じゃ。

 並みのヒーローたちでは荷が重い幹部連中を優先して対処してくれ。

 儂が緑谷たちに付き添う以上、他の者の蘇生は間に合わぬ。

 治療用核鉄の効果も限界がある……死ぬなよ」

 

「「「了解!!!」」」

 

超常解放戦線の構成人数は10万以上だが、それは他のヒーローでも何とかなる。

問題はトップヒーロー並みの戦闘力を持つ幹部連中だ。

一人でも逃がせば組織が再編される危険もある。なので全員の撃破が至上命題。

相性や強さから各々がぶつかる相手を決めていた。

 

ホークスの相手はトゥワイス。

彼の分身を作る速さは脅威だが、強度も腕力も決して高くない。

必要なのはパワーよりスピード。チーム最速を誇るホークスに任せる。

 

ベストジーニストの相手はリ・デストロ。

今までの彼が苦手としていたパワーファイターだが、修行を終え新たな力を手に入れた今の彼なら問題なく対処できるだろう。

 

ミルコの相手はギガントマキア。

死柄木の命令が無ければ動かないということだが、奴は超常解放戦線の最大戦力。

倒すのならば全員で相手をしたいところではあるが、他の連中を放置するわけにはいかない。

仮に奴が動き出した場合はその足止めが彼女の役目だ。

 

麗日もミルコに同行してもらうが、奴が動かない場合の相手はトガヒミコ。

ヒノカミの故郷の彼女とは性格が異なるため何故かはわからないが、彼女は麗日に対して何らかの執着を持っているらしい。

だが積極的に狙ってくれるのなら好都合だ。迎え撃ってもらう。

 

そしてエンデヴァーの相手は、荼毘。

 

「お主が決戦の火蓋を切ることになるが……いいんじゃな?」

 

「あぁ」

 

ヒノカミの確認に、彼はためらうことなく答える。

作戦内容を知る他のメンバーたちも彼の意志が固いと理解し、それ以上は何も言わなかった。

 

「わかった……他の幹部はどうする?」

 

「居合わせた者が対処するしかないだろう。

 他の幹部なら他のヒーローでも対応可能なはずだ。

 氷使いの外典は厄介だが……」

 

外典は戦闘面に特化しており、リ・デストロに対する忠誠心が非常に高い。

一人で逃げ出して再起を図るようなタイプではないので、強敵だが優先度は低めだ。

逆に戦闘力は低いが逃がすわけにはいかないのが元異能解放軍のトランペットとスケプティック。

後は元敵連合のMr.コンプレスとスピナーがいるが、彼らは他の幹部ほどの求心力はなく実力も一歩劣る。

 

「ではイレイザー、マイク、白雲……ラウドクラウドは雑兵共を鎮圧せよ。

 好き放題暴れて良いぞ」

 

「YEAHHHHHH!!サイコーのコンサートを開こうぜェ!!」

 

「新参者らしく、下っ端仕事を頑張るとしますかぁ!

 リハビリにゃ丁度いいぜ!」

 

「はぁ……ま、久しぶりに俺も『バカ』をやるか。非合理的にな」

 

彼ら3人は修行開始が遅かったので、実力は他のメンバーより一歩劣る。

だが単独戦闘特化型ばかりのメンバーの中で唯一『連携することで真価を発揮する』のが彼らだ。

特に数が頼りの雑兵が相手ならば誰よりも戦果を挙げるだろう。

彼らだけではカバーしきれない分の対処を、他のヒーローたちに任せる形になる。

 

「根津は予定の場所で待機。リカバリーガールも共に。

 グラントリノは救助要員じゃ。

 重傷者が出れば回収し、ヘルメスドライブでリカバリーガールの元へ連れていけ。

 戦場を飛び交うことになる。巻き込まれぬようにな」

 

「……敵よりもフレンドリーファイアを気にしろたぁ、酷ぇ話だ」

 

簡易ヘルメスドライブでは自分しか転移できず輸送ができないので、作戦直前にヒノカミがテリトリーで具現化したオリジナルを預ける予定だ。

半日くらいは持つので、この戦いが終わるまでは消滅しないだろう。

 

「塚内は公安や他のヒーローとの中継役、オールマイトはネームバリューを生かしてその後押し。

 必要に応じて我らの情報を開示しても構わん」

 

「情報開示しようが、周囲からの追及が避けられそうにないですけどね……すでに胃が痛いですよ」

 

「塚内くん、ガンバ!」

 

「うむ頑張れ。オールマイトは役に立たんからな」

 

「ゲボァッ!?」

 

戦えなくなったオールマイトは、本当に名前くらいしか使いようがない。

……散々働いてきた彼をこれ以上酷使しようという気もないが。

最後にヒノカミは掌を何度か叩き、メンバー全員の視線を集める。

 

「長かったオール・フォー・ワンとの戦いも、ようやくすべてが終わる。

 歴史上類を見ない大決戦になるじゃろう。

 ……じゃが主らほどの英傑が揃うのもまた史上初であろう」

 

当初は半年の予定だったはずが、実質その半分の3カ月ほどしか時間が取れなかった。

しかしメンバーの誰もが当初の目標に迫る力を手に入れていた。

ここにいるのは、全盛期のオールマイトすら超える最強の戦士たちだ。

 

「今こそお主らの力を世界に示せ。

 そして人々に、儂に、その雄姿を見せてくれ。

 『お主らがいればこの世界は大丈夫だ』と安心させてくれ。

 『守る者』……『ヒーロー』の称号に恥じぬ活躍を期待する!」

 

「「「「「オッス!!!!」」」」」

 

 

 

そして3月下旬。

街からヒーローが消えた。




蛇腔病院、および群訝山荘での戦いが、本作品の最終決戦となります。
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