『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第23話

『エンデヴァーが頭を下げた瞬間が突入の合図』。

マンダレイのテレパスの後押しもあり、会見に釘付けになっていたヒーローたちは慌てて動き始めた。

 

「開けます!」

 

最前線の先頭にいた雄英教師のヒーロー『セメントス』が山荘の壁を操り、一画を崩して後続のための道を切り開く。

対して超常解放戦線は明らかに浮足立っていた。

エンデヴァーの緊急会見、組織の幹部である荼毘の正体。

動揺冷めやらぬ内にヒーローたちから奇襲を受けたのだ。

構成員が大勢集まる定例会議の日を狙ってきたことから、情報が漏れていたのは間違いない。

 

「くそっ、何故だ!?どこから漏れた!?

 怪しい奴は全員ちゃんと監視していた!

 内通者らしき者には情報を伏せていた!」

 

寸前で襲撃を察知した幹部のスケプティックが慌てて拠点の奥へと逃げ込む。

彼は組織の情報管理担当だった。

なのに自分たちの情報が漏れていたことにも気付かず、この瞬間までヒーローの襲撃計画を掴めていなかった。

この体たらく、明らかに失態だ。

 

「違う!俺のせいじゃない!俺の……!」

 

彼は自己弁護をしながら地下の議事堂へと向かいつつ、周囲の兵士にヒーローの迎撃を命じる。

至る部屋から飛び出し集まった敵集団と、施設内に突入しようとするヒーローたちの先頭集団。

激突まで残り五百メートルというところでヒーローたちの後方から声が響いた。

 

「どっ……けぇぇぇええええ!!!!」

 

「「「!!?」」」

 

それはミルコの叫び。

水平に上げた彼女の片足の上には自分を無重力状態にしたウラビティ。

ミルコが足を振り抜くと同時に超高速で打ち出されたウラビティが先頭のヒーロー集団を追い抜き、一気に敵集団の目前に迫る。

 

「馬鹿が!撃ち落とせぇ!!」

 

遠距離攻撃可能な個性持ちが一斉に弾幕を張るが、彼女は体を捻り、脚部のサポートアイテムから出る推進力で軌道を変え、時に物理攻撃を蹴り飛ばして、かすり傷すら受けることなく敵集団中央に辿り着く。

 

「『無重力(ゼログラビティ)……力場(フィールド)』!!」

 

そして彼女は着地すると同時に両手を地面に叩きつけた。

 

「な……なぁっ!?」

 

「か、体が!?」

 

ウラビティを中心とした半径百メートルほどの範囲にいた敵が一斉に重力から解き放たれた。

地面から足が離れ、皆無様に空中で藻掻いている。

 

「よ~~い……」

 

遠くから聞こえた嫌な声に、気づいた敵がそちらを向く。

そこにはクラウチングスタートの姿勢を取ったミルコの姿が。

 

「ドン!!!」

 

「「「ぎぃやぁぁぁあああああああ!!!」」」

 

音速の壁を破り、衝撃波を纏ったミルコが敵の中央を突っ切った。

通り道にいた一部ヒーローまで吹き飛ばされたほどだ。

当然、無重力状態になった敵はボウリングのピンのように方々に散らばっていく。

 

「!?いけない!!」

 

最前線にいたミッドナイトが叫ぶ。

ウラビティはミルコと共にそのまま敵拠点の奥へと侵入したが、その直前に個性を解除したようだ。

このままでは吹き飛ばされたヴィランたちは衝突死か墜落死だ。

 

「お任せぇ!!」

 

しかし空中に現れた多数の黒い靄が敵を飲み込んだ。

やがて黒い靄と共に敵の姿も消える。

 

「今の個性……まさか、黒霧!?」

 

ミッドナイトは謎の声が聞こえてきた上空を見上げる。

そこから超スピードで落下してくる3つの影。

内二つは見慣れた相手だったのですぐに正体に気付いた。

 

「イヤッホーーーーーーーーウ!!」

 

「マイク!?イレイザー!?」

 

彼らは鍛えているとはいえ、身体能力を強化するような個性をもってはいない。

あの高さからこの速度で落下すれば命に関わる。

だが彼らが未だ混乱状態にある敵集団のど真ん中に落下する瞬間、白い雲が発生して緩衝材となった。

 

『YA----------HA-----------!!!!』

 

「ひぃっ!」

 

「あっ……ぶっ……」

 

そして無事に着地したプレゼント・マイクの絶叫が雲を吹き飛ばした。

だが彼の声は今までのただの大きいだけの声ではない。

 

『WELCOME! TO! HEeeeeeeeeeLL!!!』

 

「なにっ……この声っ!?」

 

「意識が、遠く……!?」

 

ミルコたちが荒らしたせいでヒーローたちはまだ敵集団にぶつかっておらず距離がある。

だと言うのに敵の中心から響くマイクの声を聞いたヒーローたちが精神を揺さぶられ動きを止めた。

当然マイクの近くにいた敵の方がダメージは大きく、ヴィランたちがバタバタと泡を吹いて倒れ始めた。

 

「……うそ」

 

しかしミッドナイトはそれ以上の衝撃を受け、硬直していた。

マンダレイから伝えられたチーム『ワン・モア・タイム』の10人目。

誰も知らないそのヒーローの名を、彼女ははっきりと覚えていた。

だが信じられなかった。聞き間違いだと思っていたのだ。

 

「白雲……くん……?」

 

10年以上前に殉職したはずの後輩が、そこに立っていた。

当時と変わらぬ姿で、大人になった親友たちと共に。




・個性『モノクロクラウド』

白雲朧の生前の個性『雲』と、黒霧の個性『ワープゲート』が一つとなった複合個性。
白い雲と黒い靄を自在に生み出し操る。


・デスボイス

プレゼント・マイクの新必殺技。
自分の声に霊力を乗せ、それを聞いた者の魂にダメージを与える。
精神力が低い者は意識を失う。
『音』の特性上敵味方を区別できない。
彼が首元に装着している特性拡声器には、ヒノカミの手により幻海の修行場にあったカラオケマシーンの霊力波放出機構が追加されている。
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