『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第25話 ベストジーニスト:ライジング

ミルコとウラビティの二人を止めようとヴィランたちが次々と現れ行く手を阻むが、二人は最低限の敵だけを倒して道を切り開き、奥へ奥へと進んでいく。

 

「見えた!あれだな!?」

 

地下議事堂へと続く長い長い階段。

地下から地上へと通じる通路は複数あるが、山荘の外の物は作戦に参加したヒーローたちの手でふさがれているはず。

残るは山荘の中の5か所。

その中で最も大きい通路が目の前にあるコレだ。

ミルコは階段を行くよりもこの方が速いと言わんばかりに壁を蹴って跳ね、ウラビティは自分を浮かせた状態で脚部のサポートアイテムから推力を発生させ飛行しながら追従する。

 

「ミルコさん!おっきいのが来ます!!」

 

「わぁってる!どいつだぁ……!?」

 

危機察知能力が高いウラビティと野生の感が鋭いミルコはメンバーの中でも特に索敵能力に優れている。

この奥に強めの生命力があると気付いて身構え、しかし速度を落とすことなく先に進む。

 

「……見えた!ありゃぁ!」

 

「『リ・デストロ』です!!」

 

「ぬぉぉぉおおおお!!!」

 

階段の遥か下に、蓄えてきた『ストレス』を解放した黒い巨人が現れ通路を塞ぐ。

更にその後ろから出てきた雑兵たちが彼の脇を固め、完全に通路を塞いでしまった。

 

「準備いいかぁ、大将!」

 

『合図を頼む!』

 

チーム専用の通信を通じてミルコが仲間に呼びかける。

そして二人は足を止めるどころかさらに加速した。

 

「3,2,1!」

 

「今です!」

 

間もなく激突するというところで、ミルコの後ろに一人の男が現れた。

彼は個性でリ・デストロの脇を塞いでいたヴィランたちを引っ張り、その体をリ・デストロに叩きつけて強引に彼を動かす。

 

「ぐぉあっ!?……ベストジーニスト!?」

 

「馬鹿な!転移だと!?」

 

「流石ぁ!時間キッチリだな!!」

 

「無論だ!行けぇ!!」

 

予想外の方向からの力にリ・デストロは姿勢を崩す。

皆覚悟はあっただろうが、流石の彼でも同胞たちを押しつぶしてまで道を塞ぐ判断を咄嗟にはできなかった。

通路脇にできた隙間を駆け抜けてミルコたちは更に奥へと進む。

 

「超常解放戦線『リ・デストロ』よ、貴様の野望はここまでだ。

 私が来たからには……ほつれ一本見逃さん!!」

 

通信越しに『リ・デストロ』の名が聞こえたベストジーニストは簡易ヘルメスドライブを起動。

待機していた島の研究所のモニター室から登録しているミルコの座標に転移した。

ひたすらに最深部へと進み、仲間たちの転移の道しるべとなるのがミルコたちの役目だ。

 

「お前たちは戻ってミルコを追え!

 ベストジーニストは……私が排除する!!」

 

部下たちに命じ下がらせた後、リ・デストロはさらに力を滾らせる。

リ・デストロの個性は『ストレス』。

日頃のストレスをエネルギーとして蓄え、パワーに変換して解放する個性だ。

数カ月前に彼が異能解放軍のトップとして敵連合と対峙した際に、死柄木との戦いで彼は両足を失った。

今身に着けているのは義足であり、日常生活は車椅子となった。

その不自由な生活は彼に更なるストレスを……パワーを与えた。

動きは一層鈍重になってしまったが、単純な腕力だけならそれこそオールマイトに匹敵するだろう。

 

対してベストジーニストの個性は『ファイバーマスター』。

周囲の繊維を自在に操る個性だ。

彼の前では衣服すら拘束具とされてしまうが、繊維を引きちぎるパワーを持つ相手には無力だ。

ベストジーニストは広範囲の弱小ヴィランを一斉に鎮圧することを得意とするヒーローで、リ・デストロのようなパワーファイターとの近接戦闘は不得手だと知られている。

加えてここは狭い地下通路なのでスピードは勝負の決め手にならない。

この状況ならリ・デストロはベストジーニストを倒すことができただろう。

数カ月前ならば。

 

「フッ……」

 

ベストジーニストは圧縮していたサポートアイテムを解放。

中から銀色の糸が溢れ出した。

 

「させんぞぉ!!」

 

取り出した糸で自分を拘束するつもりかと考えたリ・デストロは剛腕を振りかざす。

だがベストジーニストが取り出した糸はリ・デストロに向かうことなく、逆に彼自身を覆い始めた。

 

「……ぬぅぅっ!?

 なんだ、何を殴った!?」

 

拳は確かにベストジーニストに届いた。

だが帰って来たのはまるで鋼鉄の銅像でも殴りつけたかのような奇妙な感触と、自分の拳の骨が軋んだ音。

たとえ鋼鉄であろうとリ・デストロは粉砕できるが、目の前のヒーローは微動だにすることなくその場で佇んでいる。

ただ彼の様相は先ほどまでと大きく変わっていた。

 

「このような戦い方は私の主義に反するが……それでヴィランを見逃すようなことになれば、それこそ私の心がダメージデニムだ!」

 

白銀のオーバーコートを身に着け帽子を目深に被り、全身を覆い隠したベストジーニストは腰を落とし右腕を引き絞った。

そして裂帛の咆哮と共にリ・デストロの胴体へと拳を突き出す。

 

 

 

「ブラァボォーーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 

 

 

「ぐぉあぁぁあっ!!!?」

 

ベストジーニストの拳がリ・デストロの腹に深々と突き刺さる。

ベストジーニストの戦闘力は個性頼りで、身体能力は人並だったはず。

かつての情報を鵜吞みにしていたリ・デストロは、困惑と共に吹き飛ばされ背中から壁へと叩きつけられた。

 

「立て、リ・デストロ。

 チーム『ワン・モア・タイム』ナンバー3!

 ベストジーニストが仕立て直してやろう!!」




・ベストジーニスト・ブラボースタイル

時間をかけて霊力を浸透させた特殊な鋼糸を個性で編み上げ、全身を覆い隠す白銀のオーバーコートを纏う。
個性を使い自分の動きに合わせてコートを動かすことでパワーやスピードを補助する。
最大の特徴はその防御力で、OFA100%を受け止めても微動だにせず、僅かなほつれすら起こさない。
霊力の作用により物理的な攻撃以外もほとんど無効化するため、込めた霊力が尽きない限り不沈。
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