U(ウソの)S(災害や)J(事故ルーム)。
ふざけているのかと言いたくなる略称だが、少なくともその規模は名前負けしていない。
とんでもなく広大なドーム型施設。昨晩そのすべての点検を行ったが、何か仕掛けられた形跡はなかった。
予知によれば、間もなくここに大勢のヴィランが襲撃してくる。
マスコミ襲撃事件の影で行われた潜入の記録映像より、黒い靄のヴィランは転移個性持ちであると発覚している。
ならばヴィランを引き連れて直接この場に転移してくるのだろう。
であれば妨害も対策も非常に難しい。
相澤……イレイザーヘッドが生徒たちを連れてきて、スペースヒーロー13号が生徒たちに救助訓練の大切さを語っているが、その間もオールマイトとヒノカミは彼らに背を向けて周辺の警戒に専念している。
ヒノカミを知る緑谷たち3人は彼らの態度がおかしいと気づいていたが、緊迫した様子から気軽に声をかけることができない。
そして13号が生徒たちへの小言を語り終えた後、ヒーローたちの持っていた通信機が異音を発する。
通信が妨害された。ついに始まったのだ。
「全員!一塊になって動くな!!13号!」
「皆さんはそのまま後退!
扉を背にして周辺の警戒を!」
「……え?」
ヒーローたちが見つめる視線の先、広場の中心に広がった黒い靄から異形の人間が次々と這い出してくる。
「……なんだアリャ?」
「あれは!敵だ!!」
「「「……はぁあ!!?」」」
生徒たちがいるのはUSJ入り口の高台。
彼らを隠すかのようにオールマイトとヒノカミが前に出て、眼下の広場に溢れるヴィランたちを見下ろす。
「……あぁ、いた。オールマイトだ」
「4人、ですか。
ヒーローの数が想定より多いようですね」
「…………」
二人は中央にいる3体に視線を集中する。
手の飾りだらけの男、黒い靄の男、脳をむき出しにした化け物。
ナイトアイによれば彼らがこの集団の主力であり、他はチンピラレベルでしかないとのこと。
直接目にしてその推測は間違っていないと判断した。
二人は一飛びで広場に降り立ち、無言で敵集団と相対する。
「初めまして。我々は敵連合。
この度この場に足を運ばせていただいたのは、平和の象徴オールマイトに、息絶えて頂きたいと思ってのことでして……」
「「……」」
「おいおい、無視かぁ?
いくら強制エンカウントでクソゲーだからって、簡単にギブアップなんざしてくれんなよ?」
「「……」」
オールマイトたちの反応がないことに気を良くしたヴィランたちが、勢いに乗って次々と挑発する。
二人は敵連合とやらを一通り確認し終えた後、ゆっくりと俯く。
「「……くっくっく」」
そして小刻みに震えだす。何をするつもりかとヴィランたちがわずかに身構えるが……。
「HAHAHAHAHAHA!!!」
「かっかっかっか!!」
二人は揃って上を向き、大声で笑い始めた。
「いやー、どうしようヒノカミ。
彼ら、私たちを殺すつもりらしいよ?」
「恐ろしいのー。
何が恐ろしいかって、この程度の戦力で儂らをどうにかできると思い込んどる、その無知が恐ろしいわい」
「仕方ないって。
そんなことも理解できないからヴィランなんてやってるんだろうし」
「じゃよなー。しかし演出だけはなかなかじゃったな。
お化け屋敷にでも転職したらウケるのではないか?」
恐怖するどころか寸劇を交えてコケにされる始末。
言いたいだけ言って再び笑い始めた彼らを、ヴィランたちは溢れんばかりの殺意を込めて睨みつける。
「……お前ら、状況わかってんのか?」
「おや、キミたちまだいたのかい?」
「もうネタが尽きたなら帰って良いぞ?ほれ、シッシッ」
「……殺す」
完全にヴィランの敵意がオールマイトたちに向いた。狙い通りだ。
敵から冷静さを奪い、敵意を自分たち二人に集中させ、子供たちを安心させるための芝居。
オールマイトは天を仰ぎ右手で顔を隠して笑っていたが、突如その手で拳を作り地面へと叩きつける。
「SMASH!!」
広場が崩れると同時に周囲に放たれた風圧で、彼らを囲んでいた弱小ヴィランたちは容易に吹き飛ばされた。
離れていた主犯格の手だらけヴィランはのけぞる程度だったが土埃で一瞬視界が遮られる。
振り払うと目の前にあったのは自分に拳を振り下ろそうとするオールマイトの姿。
「っ脳無!!」
手だらけヴィランの呼びかけに応え、脳がむき出しのヴィラン、脳無とやらが割り込み攻撃を受け止める。
「おやおや、自分から誘っておいて隠れんぼかい?
遊んであげるから出ておいでよ、坊や」
「この……オールマイトぉ!!」
最初の作戦は成功した。
まずはオールマイトが、敵の主戦力を引き付ける。
その隙にヒノカミが手下どもを残さず狩りつくすために動き出す。
「さて、殺すと言うたからには殺される覚悟は済んでおるよな。
済んでいないと言っても今更聞く耳持たんが」
飛び上がってオールマイトの攻撃の余波を躱していたヒノカミが、瓦礫となった広場の中央に降り立つ。
腰から木札型の着火剤を取り外すと、打ち付けて炎を発生させる。
炎はヒノカミの手を焼くことなく、宙へと浮かびヒノカミの周囲を舞い踊る。
「しかし儂もヒーローの端くれ。子供たちの視線もある。
……手足の一つ二つで勘弁してやろう」
右手で刀を抜く。特殊カーボン製の黒い刀身が周囲の炎を反射し、鈍く光を放っていた。
「フレイムヒーロー『ヒノカミ』。推して参る」
・個性『炎舞』
自分の周囲の炎や熱を操る個性。
動かしたり、形を変えたり、圧縮して爆発させたりと応用の幅は広い。
距離が近いほど操る力は大きくなる。
これが主人公、轟舞火の個性です。
他の炎系個性のサポートや制御訓練において絶大な効果を発揮します。
兄の炎司、甥の燈矢は彼女の協力のおかげで自分の個性に習熟することができました。
主人公がエンデヴァーのサイドキックになっていたら、とうの昔にオールマイトを超えナンバー1になっていたでしょう。
実際にはOFAとAFOに対処するため、オールマイトのサイドキックになってしまいましたが。
オールマイトのオールマイトらしからぬ言動挙動は、全部主人公のせいです。