『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第29話 ウラビティ:ライジング

ホークスが切り開いたルートを追いかけていたウラビティもまた、地上の山荘へと戻ってきた。

 

(トゥワイスは……一か所に集まっとる!あそこがホークスさん!)

 

トゥワイスがスピナーからの救援要請を受け軍勢を出現させた直後、ホークスが発生源……トゥワイスの本体に向けて突撃したことで、周囲に散らばっていたトゥワイス軍団は一斉に引き返して彼の迎撃に当たっていた。

できればトゥワイスが軍勢を出す前に見つけたかったが、襲撃のタイミングで彼が拠点のどこにいるかまではわかるはずがない。

よって最も危険なギガントマキアが確実にいるとわかっている地下議事堂への突入を優先したのだが、結果的には裏目に出てしまったようだ。

 

(ヒーローのみんなは……浮足立っとる……!)

 

ウラビティたちの後に続いて大勢のヒーローが山荘に突入した。

イレイザーたち3人の活躍で当初は優勢だったが、彼らがこの場を離れて地下議事堂に転移し、直後にトゥワイス軍団が現れたことで一気に劣勢に立たされていた。

複製された個体は脆いとは言え、圧倒的な数の暴力の前に多くのヒーローが負傷している。

ホークスの参戦により今はトゥワイスがそちらに集中しているが、体勢を立て直すのはまだ時間がかかりそうだ。

 

「「「うわぁぁぁああ!!」」」

 

「!?」

 

そこで突如山荘から巨大な氷が現れ、ヒーローたちを吹き飛ばした。

 

「これ以上リ・デストロの邪魔をするな!」

 

「「「外典様!!」」」

 

「包囲網を押し広げた!

 一点に集中し穴を空けろ!!」

 

超常解放戦線の幹部、氷使いの外典が参戦した。

ヴィランたちが勢いづき、ヒーローたちはさらに追い込まれていく。

 

(アカン!このままやったら戦線が崩壊する……逃げられてまう!!)

 

ウラビティの担当する幹部はトガヒミコだが、この状況で彼女を探して彼を放置するわけにもいかない。

意を決して飛び出し叫ぶ。

 

「ヒーローの皆さん!

 外典はチーム『ワン・モア・タイム』ナンバー7、ウラビティが対処します!

 皆さんは包囲網の維持と他のヴィランの捕縛をお願いします!!」

 

「ウラビティ!?」

 

戦線に参加していたリューキュウが、かつてインターンで面倒を見た少女の宣言に思わず声を上げる。

ウラビティは彼女の制止を無視して、氷に乗って浮かぶ外典へと突撃する。

 

「お前が俺を止めるだと!?舐めるな小娘!」

 

下から向かってくるウラビティに向けて外典が巨大な氷の塊を投げつける。

回避はできなくはないが、これが落下すればヒーローたちはさらに損害を受ける。

だから迎撃を選択した。

今の彼女なら、その選択を取ることが出来る。

 

「アンタだって大してトシ違わんやん!!」

 

彼女は臆することなく突き進み、激突の寸前に右手の拳を引く。

 

「デトロイトぉ……スマーーーッシュ!!!」

 

最大瞬間出力、OFA60%相当の霊力を込めたウラビティの拳が巨大な氷を粉砕した。

外典だけでなく、ヒーローやヴィランさえも予想外の光景に思わず動きが止まる。

 

「っ!?だがぁっ!!」

 

すぐに自分を取り戻した外典は無数に砕け散った氷を操作し、全方位からウラビティに殺到させた。

 

「危ない!」

 

ドラゴンの姿のリューキュウが彼女を助けようと飛翔するが間に合わない。

 

「……ふー」

 

誰が見ても回避不可能な攻撃を前に、ウラビティは敢えて目を閉じ力を抜いた。

手足を広げ、自然に任せるようにその場に浮かぶ。

外典は『早々に観念したか』と考え口角を吊り上げ、リューキュウは悲鳴を上げる。

 

 

 

「「……え?」」

 

 

 

当たらない。

氷の雨が一つも当たらない。

全方位360度から数えきれないほどの数が押し寄せているというのに、まるで強風にあおられた落ち葉のようにひらりひらりと舞い続けるウラビティにはかすりもしない。

 

「なぁっ!?」

 

やがて彼女はいくつかの氷の攻撃を踏み台にして加速し、外典の方へと向かってくる。

いつの間にか彼女の眼は開き、穏やかな顔で柔らかい微笑みを浮かべていた。

 

「くっ……おぉぉぉおおおおおお!!」

 

外典はさらに攻撃の数を増やしたが、彼女は空を泳ぐように大吹雪を通り抜けながら上昇し、外典の頭上から急降下してくる。

先ほど巨大な氷を砕いた彼女の一撃を警戒し、外典は咄嗟に彼女との間に巨大で強固な氷の壁を作る。

 

「ふっ」

 

しかしウラビティは氷にそっと両手を添えるだけで攻撃しない。

訝しんだ外典はすぐに異常に気付く。

氷の壁が、自分の操作を受け付けない。

 

 

「……どっっっせぇーーーーーーーい!!!」

 

 

ウラビティは個性で浮かせると同時に霊力を流し込んだ氷の壁に勢いよく踵落としを喰らわせ、壁の向こう側にいる外典ごと真下に蹴り飛ばした。

彼は自分の作った氷の壁と共に山荘の中へと押し戻され地面に叩きつけられる。

激突と同時に氷の壁が砕け散り、しかしウラビティの個性により無重力状態のままの氷の破片が周囲に漂い光を反射している。

 

「「「…………」」」

 

ヒーローもヴィランも絶句する中で、ウラビティがふわりと氷の中央に着地した。

彼女の足元には、意識を失った外典が横たわっていた。

 

 

「「「うぉぉぉおおおおおおお!!!!」」」

 

 

ヒーローたちの大歓声が上がる。

ヴィランたちが信じられずに外典の名前を叫ぶ。

そんな中、柱の影から氷の中に佇むウラビティの姿を見ていた一人の女の子が思わずつぶやいた。

 

「……カァイイ……」

 

ウラビティの活躍で勢いづいたヒーローたちは攻勢に出ようと再び山荘に突撃する。

 

「来ちゃダメです!!」

 

しかしそれを止めたのはウラビティだった。

 

「ここから離れてください!包囲を崩さないように!

 ……来ます!地下から!!」

 

「は?……はぁあ!?」

 

間もなく山荘の大地が揺れ始め、直後地下から一人の人間……ミルコが猛スピードで飛び出す。

彼女のすぐ後ろから巨大な腕が伸び、続いて山荘全てを吹き飛ばしてギガントマキアが現れた。




・巫門遁甲・麗

ミルコの猛攻を凌ぐ内に身に着けた麗日の体術の極致。
霊感を総動員して敵意や危険を察知し、無重力状態の自分にかかる空気の流れすらも利用してあらゆる攻撃を回避する。
自然体でなければ維持できないため、いかなる状況でも動じない強固な精神力が必要。
攻撃に転じようとすると解除される。
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