『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第30話 ホークス:ライジング

「「「うぉぉぉおおおおおおお!!!!」」」

 

「こ……のぉ……!」

 

大量のトゥワイスが全方向からホークスに襲い掛かるが、彼はその場に足を止め自分の羽根の操作に集中することでそれを凌いでいた。

トゥワイスは彼自身だけでなく、他の敵連合の仲間たちを作ることだってできる。

だが攻撃を受けると溶けて消えてしまうことは変わらず、何より自分以外の複製を作るのは時間がかかる。

なのでスピードを重視して自分だけを作り攻め立てているが、それでも攻め落とせないほどホークスの処理速度が速い。

 

「「うぉっ!?」」

 

その最中、外典が作り出した巨大な氷が山荘を揺らし、ホークスとトゥワイスの間にも氷柱が現れた。

大きくなっていく氷から離れた結果、二人の間に距離が出来て仕切り直しとなった。

トゥワイス本体を含む集団がまたも増殖し数十人に増え、ホークスは切り離した羽根を自分の周囲に高速で回転させながら滞空させている。

 

「チクショーマジで強ぇーー!!」

「大した事ねぇな!」

「もうオレ何人死んだよ!?」

 

「だいたい、5万人くらいですかねぇ」

 

「数えてたの!?スゲェ!!」

「そんぐらい俺でもわかってたっての!」

 

「あっはっは、それほどでも。

 て言うか、この短時間でそんだけ数揃えられるアナタの方が凄いと思いますけどね」

 

「よせやい照れるぜ!」

「あったりまえよ!」

 

軽口をたたき合うが、互いにそれほど余裕はない。

たった一人を相手にこれほど粘られた経験がないトゥワイスは精神的に追い込まれているし、ホークスも操作する羽根の数を増やしすぎて脳に負担がかかっている。

 

「でもアナタがどれだけ凄い奴だとしても、負けられないんですよ、オレは」

 

「『平和のため』ってか?

 へーへー。さすがトップヒーロー様はお綺麗なこって」

 

「……実はオレ、ヴィランの子なんですよね」

 

「「「ハァ!?」」」

 

突然のカミングアウトに、大量のトゥワイスが一斉に反応した。

 

「ガキの頃に親父が捕まって、それから公安に拾われて色々仕込まれた、養殖のヒーローなんです。

 命じられるままに薄汚い仕事も散々やりました。

 ……とっくにこの手は汚れています。綺麗なんかじゃない」

 

「……なんでそうまでしてヒーローやってんのよオマエ」

 

「暴君だった親父を捕まえてくれたヒーローってのに、憧れちまったからですかね。

 そんな居心地のいい場所ではなかったんですが……それでも『ヒーローが退屈を持て余す社会にしたい』なんて目標掲げてきました。

 ……でも今は、それだけじゃあない」

 

ホークスはチームメンバーたちに全て暴露したのだ。

己の罪を告白したエンデヴァーに触発されて。それを聞いた彼らの反応は。

 

『『へぇー』』

 

『あれぇ、淡泊!?

 君らヒーロー目指してる子らにとっては結構ショックな内容だったと思うんだけど!?』

 

『……なぁクソトリ。

 不幸な過去自慢してぇんならよ……『アレ』以上を持ってこいや』

 

彼らの視線の先にいたのは……数千年を生き抜いた大英雄。

一つで胃もたれするような過酷で濃密な世界をいくつも渡り歩いてきた武神。

運命に翻弄され『過ぎた』人。

 

『……あっはっはっは!確かに『アレ』以上は無理やね!』

 

アレと比べてしまったら、大半の人の人生は薄っぺらだ。

そしてホークスの過去はあっさりと受け入れられてしまった。

自分の抱えてきた闇は、自分が思うよりずっとちっぽけだったんだと思い知らされた。

 

「こんなオレを『仲間だ』って言ってくれる奴らができました。

 だから仲間の生きてる世界を、オレは守りたい」

 

「……そっか!」

 

それを聞いたトゥワイスたちは、マスク越しでもわかるほどの笑顔を見せていた。

 

「お前いい奴だな、ホークス!」

 

「ヴィランにそんなこと言われたのは初めてですよ」

 

「ヒーローもヴィランもねェよ!

 『仲間の役に立とう』って人間に悪イ奴はいねぇ!!

 だからって負けてやれねェけどな!!」

 

「アナタほどの人に認めてもらえたなら光栄です。

 そんで、負けられないのはお互いさまですね。

 ……んじゃそろそろ、ケリつけますか」

 

そう宣言してホークスは自分の周囲で回転させていた羽根を止めた。

続けて周囲の物陰や瓦礫の隙間から次々と羽根が飛び出してきた。

彼は会話で相手の注意を惹きながら、自身の霊力を込めた羽根を増やしながら周囲に隠し続けていた。

やがて彼の腕の動きに合わせて羽根の津波が舞い踊る。

 

「奥義、『千本羽桜』ってね」

 

「きったねー!やっぱヤな奴だお前!!」

 

「あっはっは、さっき言ったじゃないですか。

 『オレはとっくに汚れてる』って」

 

「なるほど一本取られた!……ってそーじゃねー!」

 

慌ててトゥワイスも軍勢を増やし始める。

しかしホークスは即座に仕掛けることなく、タイミングを見計らっていた。

 

この技は準備に時間がかかり、維持にも負担がかかる。

ならば猶のこと速攻で仕掛けるべきだが、彼は仲間たちの通信を聞きながら機を待っていた。

 

(3,2,1……)

 

ホークスはすっかり元通りの大軍勢になってしまったトゥワイスに向けて駆け出す。

トゥワイスたちが迎撃しようとした瞬間に、山荘の地下を吹き飛ばす大爆発が起きた。

 

「「「うぉぉっ!?」」」

 

トゥワイスたちが一斉に姿勢を崩した瞬間に、ホークスは腕を振るって大量の羽根をぶつける。

会話中に霊圧を探って見つけた本体周辺の複製を一体残らず破壊し、続いて突撃したホークスが本体のトゥワイスの腹に拳をめり込ませる。

 

「がっ……は……」

 

「……本物はアナタだ」

 

そして姿勢を崩したままの残る複製も羽根の津波に飲み込まれ次々と消滅していった。

トゥワイスは反撃するのではなく、震える体でホークスの腕をすがるように掴んだ。

 

「……なぁ……オレは、『本物』か?」

 

「……えぇ。アナタが『本物』ですよ。分倍河原仁」

 

「へへっ、そうかぁ……」

 

崩れ落ちた彼が意識を失う瞬間に呟いた言葉は、確かにホークスの耳に届いた。

 

 

「ありがとな、ホークス」




・千本羽桜

霊力を込めて強度と稼働時間を伸ばした羽根を少しずつ周囲に増やしていき、数が揃ったところで津波のように一斉に操作しぶつける技。
羽根そのものの強度が大幅に向上しているため、硬い相手でも貫通し敵の攻撃を防ぐ壁としても扱える。
技の準備に時間がかかり、一度に大量の羽根を操作するので脳にも負担がかかる。
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